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テーマ:マジック・手品について(477)
カテゴリ:マジックその他
ご無沙汰していました。大学のレポートの調査をしている過程で、ブログのネタになりそうなものを発見してしまいました。そのため、ついつい横道にそれてそちらのほうを調べてしまいました。(レポートも出しましたよ)。今日は、そのときのメモをもとに書いてみようと思います。
今日紹介されるのは「ヒンズーロープ」または「インディアン・ロープ・トリック」というトリックです。聞いたことがあるでしょうか?名前からするとヒモのマジックのようです。結び目?切手も切れないヒモ?違います。もっともっと大掛かりなマジックなのです。 どのようなものかって?私が語るよりは、目撃者に語ってもらったほうがいいでしょう。 初期の目撃者として、皇甫という人物がいます。この人は、今から1000年以上も前の人物だそうです。その人の「嘉興縄技」という文章で紹介されています。(岩波文庫の『唐宋伝奇集(下)』の132ページを参照のこと)。ここでは、囚人が縄を空中に投げると、縄が固定されてしまうという風に、簡潔に描かれています。囚人は其の縄を登ります。落ちもついていますが、それほど面白いと思わなかったので割愛します。 次にこれを見たのは、モロッコ出身のイブン・バットゥータです。『三大陸周遊記』の著者として有名です。彼が見たものは、皇甫が見たものより幾分過激です。ここから先読むのであれば、心して読んでください。(東洋文庫の『大旅行記7』の47ページを参照)。時代は、中国元王朝のころです。元のハーンが術者を呼んで、バットゥータに見せるのです。縄を登るところまでは一緒ですが、その後が違います。なんと、縄を登っていった人は、続いて登っていった人によってばらばらに切り裂かれてしまうのです。(その人はどうやってか知らないが、刀を持って登っていくのです)。 これは衝撃的過ぎます。事実、バットゥータは気を失ってしまいます。(誰が彼を責められようか)。ちなみにその人は生き返りました。 続いては、ずっと前に紹介した『聊斎志異』がこのトリックを紹介しています。(岩波文庫『聊斎志異(上)』 45ページから48ページを参照のこと)。これは別の意味で衝撃的です。トリックの内容は、演出を除けばほぼ同じなので省きます。何が衝撃的かって、見ていた蒲松齢は全く気を失わなかったことです。 どうしてでしょうか?あまり文化人類学的な話には入りたくないので、バットゥータはきっとこのトリックになれていなかったのだろうと解釈しておきます。(この解釈は実は怪しい。インドでもマジックを見ているはずなので)。 もっと気になるのはどうやって演じたのかでしょう。残念なことに3人とも周りの状況を細かく描写していないので、どの仮説も推測の域を出ないでしょう。集団催眠にかかっていたのだとか、上からロープを吊り上げていたのだとかいろいろな説があります。たとえば、高木重朗氏の『大魔術の歴史』などに載っています。ステュアート・ジェームスの『ロープマジック百科事典』はかなり意欲的にこの謎に取り組んでいますが、演じられた状況がはっきりしないので、どうなんだろうなといいたくなります。 ともかく、はるか昔から空に昇るロープの手品が演じられ、いろいろな推測を呼んできたのです、とまとめておきます。たまたまマジックについて書いてある本に出会うとうれしいものです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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