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テーマ:ミステリはお好き?(1496)
カテゴリ:ミステリ
先日、『罪灯』(佐々木丸美)というミステリを紹介しました。今回は、同じ作者の『崖の館』という作品を紹介したいと思います。
「館」というと、いわくありげな人物たちが館に閉じ込められて、連続殺人が発生する、などを思い浮かべるかもしれません。館と聞いただけで、ぞくぞくするかもしれません。 本作では、かつて館で起こった出来事(女性(千波)の「事件」or「事故」死)への疑惑からストーリーが始まります。その館にすむおばのいとこたちが集まり、「事故」ということに疑惑がもたれます。 千波(亡くなった女性)は日記帳を残していた?それはどこにあるのか?探そう。そんなところへ、飾ってあった絵の消失、さらには人間の消失といった事件が起こり始め・・・。という館にふさわしいストーリーが展開していきます。 前にも書きましたが、ミステリの仕掛けだけでなく、情景や信条の描写もこの作者の魅力です。 始まりはこのような文からです。「目もくらむ断崖。切りたつ岩にうちよせる波。散ってくだけてまたうちよせてくる。冬の波濤は非情に人を拒み隔離された世界を構築してゆく。沖の海は銀盤にゆらめき流れる潮の花を浮かべていた」(7ページ)。いきなり物語の世界に心を飛ばせそうです。 また、所々で出てくるミケランジェロ、リルケ、パステルナークなど詩人や画家に関する語りもあり、情景と相まって作品のロマンを形成しています。 確かにストーリー的には王道的な館の事件ですが、様々な描写が館を恐ろしいものとしてよりどこか美しく見せている、そのような雰囲気もまた魅力でした。 崖の館 (創元推理文庫) [ 佐々木丸美 ] 崖の館佐々木丸美コレクション16【電子書籍】[ 佐々木丸美 ] お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2021.01.17 18:09:46
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