久々に、モア・マジック
久々にプロフェッサー・ホフマンの『モア・マジック』を読んでいて驚いたことがひとつ。それは、クリック・パスと呼ばれるコインマジックの技法が解説されていたことです。私はクリック・パスを、もっとモダンな技法だと思っていたのです。洗練された感じがしますので。 ちなみに、クリック・パスとは以下のような技法です。テーブルに2枚のコインが置いてあるとします。マジシャンは、一枚を右手で拾い、左手におきます。次に2枚目も拾い、左手におきます。このときに、チャリンという音がします。ですが、マジシャンが左手を開くと、2枚ともコインが消え、右手から現れるのです。 ここで気になったのは、発明者が誰かという問題です。ためしに『モダン・コイン・マジック』や『コインマジック事典』あたりを調べてみました。『モダン・コイン・マジック』では、コインが左手に1枚だけ残るバリエーションの創案者はチェスター・ウーディンという人だと述べていますが、2枚とも右手に移動するものはわからないと書いています。 では、ホフマンはどう述べているのでしょう。以下のように言っています。「この巧妙なるちょっとした技法は、プロフェッサー・フィールドの発明だと、私は信じる(I believe)」(”More magic" professor hoffman,p147,kessinger版)。"believe"というのは非常に悩ましい単語ですが、ここではホフマンの言ったことを「信じて」おきましょう。 ところで、プロフェッサー・フィールドとは誰でしょう?実はまったく分かりません。分からないどころか、聞いたこともありません。本名かどうかも。(ちなみに、プロフェッサー・ホフマンというのは本名ではないそうです。本名は、アンジェロ・ルイス) 年代ぐらいは判りそうな気がしないでもありませんが・・・・。『モア・マジック』の建前は、『モダン・マジック』よりも後で生まれた「進化した」マジックを紹介することです。したがって、両者の間、つまり、1878年から1889の間に活躍した人物だろうと推理することは可能ではあります。しかし、この建前は怪しいのです。第一、いくら『モダンマジック』でも、当時のすべてを記すことは不可能です。ゆえに、1878年よりも前にあったが、収録し切れなかったマジックが、『モア・マジック』に入れられた可能性があるわけです。実際に、1868年の、あのロベール・ウーダンの『手品と魔術の秘密』からの収録作品が、『モア・マジック』に載っているのですから。 したがって、別にプロフェッサー・フィールドが1878年より前の人物であっても不思議はないわけです。事典かなんかがあればいいのですが、現在は追加調査が不可能です。とりあえずここでは、プロフェッサー・フィールドが生み出したものでしょうか?位にとどめておきます。 ともあれ、『モア・マジック』の古き時代から存在していたことは、私にとって驚きでした。