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ひみつの裏庭

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Jun 4, 2005
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ハワイアンセンターで療養しているりずむ。

回復の速度も速まり、精神状態も一時に比べて安定しています。
水晶玉の傷も、まだ大きな傷は残っていますが、欠けた部分は大分修復されてきました。
緑色の光ももう漏れていません。
青い光がほんの微かに漏れている程度です。


ある日の午後、マジョリカを自室に招いて、何げない会話を楽しむ二人。

「…で、からだの具合はどうじゃ?」

「はい、だいぶよくなりました」
りずむは水晶玉をマジョリカに見せました。
「はやく元気になって、ハナ女王様をお助けしなければ」

「ん、そうじゃの。わしはもう少しここでさぼ…ゲフン…療養するがの」


りずむは以前のような笑顔で言いました。
「マジョリカ様ったら…ハナ様が心配なさりますよ」

「いいんじゃ、ハナにはおまえがおるし、ゆき様もおる」

「いえ、ハナ様はマジョリカ様を信頼なさっておいでですよ」

マジョリカは下から睨みあげるようにりずむを見ました。
もちろん、冗談っぽく。
「りずむや…、まだこの年寄りをこき使うつもりか?」

「いいえ…ふふっ」

「…まあよいわ…で、りぼんの方はどうじゃ?」

「まだこれといって…」りずむは俯きました。

「そうか…りぼんはハナの後を受け継いで、魔女界を背負わねばならぬ
もし帰ってこなければ…」

その言葉を聞いたりずむは少し興奮した様子で、声を荒げました。
「りぼんちゃんは、必ず帰ってきます!」

マジョリカはそんなりずむを平然と見すえました。
「そうじゃの…それにしても」
マジョリカは続けます。

「…ハナがあそこまで毎日毎日机にむかっておるのは今までになかったことじゃ」


「そうですね…ハナ様は何でも思い付きでなさるお方でしたから」
にが笑いで応じるりずむ。

「それだけりぼんのことが心配なんじゃろうな…」

「はい…」
コーヒーを一口こくん、と音を立てて飲みくだしました。

「何かしておらんと落ちつかん…といったような感じじゃ」

「ええ…」
りずむは音を立てて飲んでしまったことを恥ずかしく思うかのように、
そのカップの縁を指でなぞりながら肯きました。

「ハナは猫っかわいがりしておったからのう、りぼんを」


その時、りずむの脳裏に、ハナとりぼんが見つめあうだけで全てを理解したように微笑んだ、
あの出来事を思い出しました。その時感じた嫉妬と呼ぶにはまだ未成熟な感情とともに。

(あのときのイヤな感じ…もしかして…こないだのあれは…)


「どうした?」マジョリカはりずむの表情がほんの少し暗くなったのを見て、尋ねました。

「いいえ、何でも…」


「ふむ、それではわしはエス…ゴホン…治療にいってくる、またな」

「はい、それではまた」りずむは笑顔で言いました。
精一杯の演技で。


マジョリカが部屋から出ていくと、りずむはそのままベッドに横たわり、
目を閉じました。久しぶりの動揺。



(あの二人は親子…母と娘。だから女王様が溺愛するのも…しかたないこと。
…だから私が嫉妬する必要なんて…おかしい…)


りずむは自嘲するように笑いましたが、その笑顔はすぐに凍りつきました。

(え?)

りずむは自分が「嫉妬」していることを、初めてはっきりと覚りました。


「…なんで私嫉妬しているの?」
思わず声に出してしまうりずむ。


(嫉妬って…親子の愛に対してまで嫉妬するって…)


「少し、疲れたのかもね…」
りずむはそのまま眠りに落ちました。





****
夢の中。
りずむは浅い眠りの中、1000年前の夜、ハナとのやりとりを思い出しています。


「大好きです」

「え?なんて言ったの?もっかい言って~!」

「ないしょです」




(うふふ、そう、ハナちゃんのこと大好き)
(あの夜の涙は、ハナちゃんと私の二人だけのないしょだから)

(あのときの温もり、忘れない)


(今も…あの…温もり…)


(髪の香り…)



(「ハナを頼みますよ…」)
(そう…前の女王様から…ハナのママとして…)


(そう…わたしは…ママ…ハナちゃんの…)



(「だから、お願いですから、まだ、生きていてください」)

(ハナちゃんに言った…はじめてのわがまま…)





(ハナちゃん…愛しています)

(だから……)

え?



****



静かに目をあけるりずむ。
あれからまだ15分ほどしか経っていません。

まだ朦朧とした意識の中でりずむは確認しました。
夢の中で一番印象に残っている一つの言葉を。



「私、ハナ…ちゃんのことを…『愛している』…?」



薄々心の奥底で感じていた、ハナへの愛情。

(どういうこと…?)

でもそれは臣下として、親友として、また母親としての愛情だと、
信じこんできました。
しかし…


「違う…これ…こんなの…」

りずむは頭を振って拒絶します。
現実とは異なる、夢の中で現出したはっきりとした感情。

「そうよ、ハナちゃんは娘…主君………お友だち…………」

(「愛してる」って…そんなの夢の中の…幻よ…)


でも意識すればするほど、否定すればするほど強くなるハナへの気持ち。

「ハナちゃん…」


目を閉じれば浮かぶ、

ハナの泣き顔

ふくれっ面


そして


あの夜
一緒に泣いた後の
虹のような
とびっきりの笑顔


今のりずむにとって、もはやハナは主君のハナ女王でも、親友のハナちゃんでも、娘のハナでもありませんでした。



疼くこころ。りずむは部屋着の上から胸をぎゅっと掴みます。
(ハナちゃん…)


不意に、衰えた自分を蔑むような、りぼんの姿が現れました。

「りぼん…ちゃん…」



りぼんに対する嫉妬はますます増幅しています。
螺旋を描いて、真っ直ぐに墜ちていくりずむの心。


水晶玉が、また少し軋むような音をたてました。



部屋に飾ってあるシクラメンの花に目をやりました。
ただ涙があふれ続けるだけの、生気が失われた目を。

(どうしてこんなことに…)


りずむはいきなりその花を力任せに掴みました。
手を開くとその手の中で壊れていく花。

力なくベッドに倒れこむりずむ。

同時に、りずむの心、その一番奥の柔らかな部分を取り巻いていた水晶の壁が
音を立てて割れました。そしてその破片さえがりずむの心に突き刺さりました。

そのあまりの痛みに、衝撃に、
枕に顔をうずめ泣き叫びました。
「いやああぁぁっ!!」


水晶玉の裂け目がまた広がり始め、中から濁ったオレンジ色の光が漏れ出てきました。



猛烈な感情が、りずむの頭の中を、心の奥底を、身体中を駆け巡ります。

止まらない動悸と涙、それに吐き気。

繰り返し襲いくる、どうすればよいのか分からない感情の波。





…何日経ったのでしょうか。
いえ、まだ数時間かもしれません。




りずむはベッドの上で一人つぶやきます。

「そういえば…どうしてわたしりぼんちゃんを助けようとしているんだろう…」


りぼんの顔が一瞬浮かびます。屈託のない笑顔。どれみちゃんとよく似ている。
しかしそれは蔑むような顔へと変わっていきます。


「りぼんちゃん、帰ってこないで…そうすれば、ハナちゃんは…
私だけを見ていてくれる…から」




りずむは水晶玉の裂け目に人指し指を這わせ、滲み出る赤紫色の光を指に絡めるように弄びながら、もう一度呟きました。



「りぼんちゃん、帰ってこないで」








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Last updated  Apr 17, 2006 03:42:16 PM
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