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小説 こにゃん日記

小説 こにゃん日記

act.8『ママVSパパ』

     『ママVSパパ』

おいらが、こたつの隅でお魚の夢を見ていると、夢の中でピンポーンという音がした。
もう少しでお魚を捕まえられるところだったのに、その音で逃げられてしまってがっかりだ。
 『桃は?』
 『もう寝たわ。今日は興奮して、ずいぶん遅くまで起きていたけど。』
うとうとしてると、誰かがこたつをさっとめくった。
 『あれ?どこだ?いないぞ。』
男の人が、こたつに頭を突っ込んできょろきょろ覗いていた。
おいらはびっくりして、思わず『に~』と鳴いた。
 『ああ・・・いたいた。ちっこいな~。さっき話していた拾い猫ってこいつか。』
大きな手が、こたつの脚に隠れるようにして寝ていた、おいらをつかみあげた。
おいらはにーにー鳴きながら、どうにかその手にしがみついた。
 『やっと声が出たのね。』
ママがニコニコしていった。

男の人は桃のパパだった。
パパはおいらを見ると、眉を寄せ難しい顔をした。
でも、ほっぺたがふるふると、わずかに上がったり下がったりしていた。
その顔を見てるうち、おいらは怖くなくなった。
パパは怖い顔を無理やりしてる・・・今思えばそうだったんだけど、そんなことわからなくても、おいらには、なんとなく危険じゃないってわかったんだ。
猫の直感という奴だ。
ママにもそれは解ったみたいだ。
後で、奥さんにはわかるのよといっていた。
 
 『で、こいつの飼い主が見つからなかったら、どうするんだ?』
パパは威張ってママに聞いた。
ママも負けじと威張って答えた。
 『あなたが、飼ってはいけないというなら、他に飼い主を探します。』
パパとママはバチバチにらみ合った。
最初に眼ををそらしたのはパパだった。
猫の世界では、眼と眼を合わせるのは『喧嘩するぞ!』という宣戦布告だ。
そして、先に眼をそらしたほうが負けることが多いんだ。
 『ちゃんと、お前が責任もって面倒みれるんなら・・・。』
パパが言うと、ママはなぜかもっと威張っていった。
 『いいえ、この子の面倒は家族みんなでするの。責任もみんなで負うの。だってこの子は家族の一員になるんですもの。』

そんなわけで、おいらがこのうちの猫になってからは、おいらの世話のほとんどはママがしているけど、パパだってたまにはおいらに餌をくれたりするし、桃だって毎日お手伝いするようになった。


                    
act.9『やっちゃった。』 に続く






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