act.11『焼きたてのパンみたい』『焼きたてのパンみたい』ママが、どこかにお電話している間。 おいらはすっかりくつろいで、今までになく、おっきなごろごろを言っていた。 おいらは、ふわふわの焼きたてのパンみたい。 いい匂いのするきれいな色のパンみたい。 おいらはご機嫌で、くるりんとお腹を見せたり、うんと伸びをして後ろ脚を突っ張ったり、そのままズリズリと逆さまに這いずったり、コロコロ転がったりしていた。 ママはそんなおいらを抱き上げると、桃のフリースのセーターにおいらを突っ込んだ。 おいらがもごもごとしているうちに、セーターの裾を縛り上げ、袖と袖を結び上げた。 おいらが、たった一つの出口のセーターの首から、頭をちょこんと出すと、その頭をくるんとなでてまた中に押し込んだ。 おいらは、そのままママに抱かれてもう一度外に出た。 おいらはやっぱり怖くて、思わずに~に~泣き喚いちゃったけど、そのたびママの胸の辺りから、小さな太鼓のような音が聞こえてきて、その音がガンバレガンバレって聞こえて、おいらはがんばってママにしがみついていたんだ。 ママは、そのままテクテクとおいらを抱いて歩いていった。 どのくらい歩いたかな? おいらとママが着いたのは、プンと刺激のある匂い。 いろんな猫や犬や動物の匂いのする場所だった。 act.12『犬と熊』 に続く |