act.17『イチゴとおっぱい』『イチゴとおっぱい』おいらはカーペットの上で、お腹を上にして大の字になっている。 のん気に居眠りしてるのかって?違うよ。 ママがおいらをくるんとひっくり返して、 おまたを広げさせて、上からのしかかってるんだ。 お相撲するのかな? ママはおいらを体で押さえつけると、おいらのまぶたをくいっとあける。 おいらはあわてて身をよじった。 ママは、おいらの抵抗を体で封じ込めると、おいらの眼にポチャッと目薬を差した。 うに~~~っ!! おいらは体を跳ね起こしたかった。 前足で眼をこすりたかった。 そのまま、ママの手の届かない高いところまで逃げ出したかった。 でも、ママの下でおいらはもごもご出来ただけ。 ママ~重いよ~。 ママはかまわず、おいらの反対の眼にも目薬を差した。 うににににぃ! おいらは両目をぎゅっと閉じた。 前足のにくきゅうがうごうごした。 ママは無言で、おいらの顔に手をかけると、おいらの口の両脇に、親指と人差し指を差し込むようにする。 おいらの口は、思わずかぱっと開いた。 すかさず、おいらの口にスポイトが押し込まれた。 おいらがあわてて口を閉じたときは、スポイトからチュッと苦い液体が、おいらの口に飛び込んだあとだった。 ママは、最後においらの頭をくるんとなでて、ようやくおいらからのいてくれた。 『よしよし。がんばったねこにゃん。』 ママはニコニコやさしく言ったけど、おいらは怒っているんだぞ。 飲み薬と目薬は熊からもらったものだ。 おいらはそのたび、吐き出したり、顔をブルブル振ったりして逃げてきた。 時にはママの手を引っかいて、そのまま猛スピードで逃げ回った。 だっておいら、お薬なんてだいっ嫌いなんだ。 ママから逃げ出すのは最初は簡単だった。 ママの手に抱かれて、お薬を袋から出すがさがさを聞いたとたん、おいらは、ぶるぶるにょろにょろりとママの手を逃れ、ママの頭の上をジャンプして、フローリングの床の上をスライディングしながら逃げ出した。 でも、だんだんママは手ごわくなっていった。 おいらを下敷きにするなんて卑怯だぞ! 『こにゃんが元気になるように。』ってママは言うけど、おいらもう元気だよ。 『こにゃん。これね。桃のお薬ゼリーだよ。あげるね。』 桃が何かをスプーンで、そうっとそうっと、こぼさないようにしながら運んできた。 『これは人間用だからね。猫には美味しくないと思うよ。』ママが言った。 おいらの前に出されたのは、スプーンに乗った、何かプルプルとしたものだった。 ふんふんにおいを嗅ぐと甘い香りがした。 あんまり美味しそうじゃないなと思ったけど、桃があんまりじっと見つめているので、おいらはちょびっと舐めてみた。 『あっ。食べた。』 甘くてすっぱくて、なんだかワクワクする味がした。 でも、やっぱりおいらの好みじゃなかったから、それきり口はつけなかった。 でも、桃は食べた、食べたと喜んでいた。 『こにゃん。これイチゴ味だよ。イチゴって赤くってピカピカしてて美味しいんだよ。桃が食べると、吸血鬼になるの。』 桃が食べると吸血鬼?じゃあ。おいらが食べると何になるのかな。 おいらは、いつかママよりおっきくなるんだ。 それでもって、ママにお薬飲ませちゃうぞ! でも、おいらは優しいから、ちゃんとイチゴのプルプルもあげるよ。 ママは人間だから、きっと美味しいんだと思う。 でもママは何に変身するのかな。 おいらと同じしましまの猫になったらいいな。 おいらと一緒にしっぽを立てて、お日様の下でお散歩するんだ。 野原には、赤くてピカピカ光ったイチゴがたくさん。 その中で桃が、口の周りを真っ赤にして笑ってる。 おいら桃が吸血鬼でも怖くないよ。 一緒にちょうちょをおっかけっこしようよ。 それでね。 おいらと桃は、猫になったママのおっぱいを、ちゅくちゅく吸いながらねんねするんだよ。 act.18『おいらの冒険』 に続く |