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小説 こにゃん日記

小説 こにゃん日記

act.32『おいらのママ猫知りませんか?』

   『おいらのママ猫知りませんか?』

『おいらのママ猫知りませんか?』
おいらは丁寧に聞いてみた。
そうしたら灰色猫があきれたように、
『そんなもん探してどうするんだ。』って言うんだ。
だってママなんだよ。
『こいつ捨て猫だったんだ。』
忍者猫が言い訳するみたいにみんなに言った。
『今は飼い猫なんだろう?
だったら親なんか必要ないじゃないか。』
灰色猫はふふんと鼻で笑った。
『ちょっと待てよ!』
黒猫が途方にくれたようにおいらを見た。
『お前の用事って、母親探しだけか?』
『ううん。』
おいらはプルプルと首を振った。
『おいら兄弟猫も探してるんだよ。』
いきなり綿菓子猫がくすくす笑い出した。
『だから、まだ子供だって言ったじゃない。』
黒猫はあ~とかう~とか、なんだかもごもご言っていた。
『おいらね。猫集会にきたらママに会えると思ったんだ。』
おいら一生懸命説明した。
『くだらないな~。』
灰色猫はぺっと地面につばを吐いた。
『毎日腹いっぱい飯が食えて、寝床もあって、狩られる心配もない。
どうして親が必要なんだ?』
灰色猫が言った言葉に、ぴくりとトラ猫がした気がする。
『黙りなさい。』
トラ猫は灰色猫をキラキラ光る緑の目で見た。
灰色猫はあわてたように身をすくめた。
だからどうしておいらの後ろに隠れるの?
『幼いころに離れ離れになった親子が、もう一度会うのは難しいのよ。』
トラ猫は静かな声でおいらに言った。
『そんなの探してみなきゃわからないよ!』
だっておいらのママなんだよ。
どうしてもう会えないの?
おいらはトラ猫をキッとにらんだ。
目に力を入れてたら、なんだかウルウルしてきちゃった。

忍者猫が後ろ足でがりがりと耳の後ろを掻いた。
『あ~まあそうだよな。やってみて悪いってことはないよな。』
灰色猫がおいらの後ろからぼそぼそと言った。
『正気かよ・・・。』
トラ猫はおいらを困ったような眼で見ていたけど、
『そうね。やって悪い事はないわね。』と言ってくれた。
黒猫は、
『よし。協力してやるぞちび!』と胸を張った。
なんだか急に優しくなったみたい。
どうしてかな?
綿菓子猫はあぁふう~っとあくびをして、黒猫をちらりと見ると、
『私帰らなきゃ。』と立ち上がった。
おいらがじっと見つめていると、
『じゃあね。ぼうや。』とふさふさのしっぽを一振りした。
黒猫はなんだか焦ったように飛び上がった。
綿菓子猫とおいらを交互に見て、いらいらと爪を噛んだ。
『いいのよ。行きなさい。』
トラ猫が言った。
忍者猫は知らん振りをしている。
『糞ッ!男がいったん言ったことだからな!ちゃんと協力するよ!』
黒猫が優しくなったのは気のせいだったのかな?
だっておいらのことをまた睨んでる。

黒猫はタタタッと公園の真ん中にある土管の上に飛び乗った。
土管の上で長くのびていた黄色い猫が、
 うぎゃっ!て飛びのいた。
・・・しっぽ踏まれちゃったのかな?
『おい!お前らッ!聞きたいことがあるッ!』
黒猫はいばって大声を出した。
『猫探しに協力してくれ!』


act.33『長い長いおいらたち』 に続く






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