カテゴリ:スカーレット!
たぶん、このドラマの最大の特徴は、
自立した女性の物語を、容赦なく描き切ったことですね。 でも、それは逆にいうと、 「夫の存在を蔑ろにすること」だったともいえる。 事実、八郎はほとんど役立たずでした。 ◇ これと対照的だったのは「あさが来た」です。 あの作品も「スカーレット」と同じ部類で、 女だてらに出世した偉人の物語だったのだけれど、 彼女の場合、けっして夫のことを蔑ろにはしなかった。 たとえ夫が呑気な遊び人だったとしても、 陰ながら妻を支える理解ある夫として美化されたし、 主人公も彼のことを「旦那様」と呼んで慕い続けたのですね。 最終回でも、主人公は夫のもとへ駆け戻っていきます。 ※これを「保守的」だと批判したのが、大御所プロデューサーの小林由紀子でした。 「スカーレット」は、まるで逆です。 まずは八郎との離婚にいたる過程をじっくり描きました。 そして、その後は、 たとえば「半分青い」のように、 別れた夫をろくに登場させない選択もあったのでしょうが、 そうではなくて、あえて八郎を再登場させて、 形のうえでは「父」としての役割を与えつづけたのですね。 しかしながら、 八郎は、まったくもって役立たずでした。 ほとんど「いてもいなくても同じ」って感じ。 夫としても役立たず。父としても役立たず。 ここまで男性の役割をコケにした朝ドラも過去に例がない。 主人公は、息子のことにしか関心がない。 まるで八郎の存在を蔑ろにすることが、 このドラマの「主眼」だったと思えてしまうほどです。 ◇ もはや「スカーレット」の主人公は、 1ミリたりとも夫には頼っていませんでした。 精神的にも、肉体的にも、経済的にも。 夫の意見にもいっさい左右されることがなかった。 その代わり、主人公自身が、 どんどんオッサンみたいになっていくわけですが(笑)。 喜美子だけではない、 照子も、ちや子も、みんなオッサンみたいになっていく。 ここに、今作の新しさがあったといえます。 自立した女性のオッサンみたいな生きざまを、 ここまで徹底的に描いた朝ドラは過去にありませんでした。 それは、しかしながら、 けっして生易しい成功譚にはならないのですよね。 たえず厳しい現実に向き合わざるをえなくなってしまう。 実際には陶芸家として大成功しているにもかかわらず、 その成功っぷりは、ごく控えめにしか描かれない。 ひたすらシビアで難渋な出来事がつづき、 そうそう簡単にはハッピーエンドにならない、 そんな自立した女性の姿を描ききったのが今作なのでした。 ◇ それにしても、 実際のモデルがいたとはいえ、 これだけ密度の濃い物語を紡ぎ続けたのだから、 水橋文美江の筆力はかなりのものだったと感じます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020.09.19 19:01:33
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