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まいかのあーだこーだ

2021.05.08
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NHKアニメ「龍の歯医者」前後編を見ました。

舞城王太郎の原作。
庵野秀明の制作統括、鶴巻和哉の演出。
スタジオカラーの作品。

日本アニメの想像力を結集したような世界でした。



竜に遭遇して船が沈むのは、
まるで「ゲド戦記」みたいなオープニング。
人間と竜の契約とか、
生きることと死ぬことの意味を問う内容も、
どことなく「ゲド戦記」に似ています。

天狗虫になって空を飛ぶ柴名姐さんは、
「山賊のむすめローニャ」に出てくる鳥女みたい。

丸っこくて巨大な竜のイメージは、
ほとんど空飛ぶ猫バス?(笑)
あるいは宮崎アニメに出てくる飛行マシンのような、
あるいは空飛ぶ要塞というか天空の城みたいな雰囲気もある。

住み込みで働く少女は「千と千尋」っぽいし、
異形の虫歯菌たちも、なんだか油屋の化け物っぽく見えます。

竜の巨大な歯はモノリスみたいですよね。

ちなみに、
下の歯しか治療してないように見えたけど、
上の歯はどうやって治療してるんでしょうか?(笑)



後編は、完全に庵野秀明の世界。
前編に比べて、かなりエヴァっぽくて既視感強めなのが欠点かな。

アスカを想うシンジくんの一人語りみたいに物語が進みます。

虫歯菌との戦いは、使途との戦いに見えてくるし、
竜も、ATフィールドみたいな結界で防御されてる。
破滅をもたらす巨大な竜は、完全にシンゴジラそのもの。

オザケンの歌に、
まったく違う意味合いが付与されていくところも、
いかにも庵野らしい手法だなあと思います。

一方、
方言が飛び交うの戦場の描写は
なにやら「この世界の片隅に」っぽくもあるし、
失われたものへの執着と悔恨に生きる柴名姐さんの姿は、
どこか「ハウルの動く城」を思わせる部分もある。

死者の魂が竜の体内に戻るという世界観や、
竜の歯と一緒に空から落ちていくシーンは、
もしかしたら「天気の子」に引用されたのかなと思えるし、
ピストルの意味合いにも「天気の子」との共通性を感じる。

竜の親知らずを祭ってる出雲っぽい神殿を見ていたら、
「天気の子」に出てくる屋上の祠と鳥居とか、
口噛み酒の伝統を受け継ぐ「君の名は」のシーンも思い出しました。



最後のベルのモノローグによれば、
竜の虫歯は、人々の思いの残りカス。

運命(=死)を受け入れられない人々の、
断ち切れない恨みや未練や後悔が虫歯菌になる。

誰かが心を動かすたびに、
それはいつしか竜の虫歯菌に姿を変えてしまう。

ベルは、最後にこんな回想をします。

12才のとき、
池の真ん中で馬に振り落とされた。
尻尾で虫を払うように自分を殺しかけた馬は、
眩しい午後の光粒のなかで美しく体をふるわせていて、
死にかけの僕は、その気高い姿に胸打たれていた。

僕の心から何かの虫が生まれたとしても、
あの歯医者たちに任せておけばいい。
君とあの馬の姿が重なるよ。
君を想うと、血液とは違う何かが僕の胸を満たしていく。


竜の歯医者になれるのは、
みずからの運命を受け入れられる者だけ。
歯医者たちは、
馬のような気高さと真っ直ぐに生きる力強さで、
竜の歯に蓄積される負の感情に立ち向かう。

ベルは、
竜の歯のなかから蘇り、
ふたたび竜の歯に戻っていく生命の循環のなかで、
馬のように気高く生きる歯医者たちに出会い、
その力強さで胸を満たしたのです。



一方、
天狗虫と化した柴名姐さんの負の思念は、
人々の殺意を養分としながら巨大化し、
ついには殺意ある者たちを全滅させます。

これはシンゴジラに通じる世界観かもしれない。

運命にしたがう者は気高い。
けれど、運命にさからう者は勇敢である。
そして、どちらも美しい。


これが、この物語の矛盾をはらんだ価値観です。



引用に次ぐ引用、
寄せ集め的といえば寄せ集め的だけれど、
日本アニメの伝統が蓄積されてこそ出来上がった想像力の粋であり、
スペクタクルとしても素晴らしいし、
ちょっとテレビアニメにしておくのはもったいない作品でした。

いまのところ続編の気配はありませんが、
もし続編があるとすれば、
ベルではなく、柴名姐さんの物語だろうと思います。





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最終更新日  2021.05.08 10:57:39


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