カテゴリ:ドラマレビュー!
近年は「年上女の恋」を描いたドラマが多い。
古くは、 大森美香の初期作「きみはペット」とか?! あのときは、 小雪が28才で、松潤が20才という設定でした。 最近では、 さらに女子の高齢化と男子の若年化が進んでいて、 「逃げ恥」の石田ゆり子や、 「恋する母たち」の吉田羊や、 「あな番」の原田知世などは、 アラサーもアラフォーも超えて…、もはやアラフィフ! 日本もだいぶフランス化してきましたね。 一方、 「はじこい」の深キョンや「中学聖日記」の有村架純は、 ピチピチの男子高校生をお相手にしています! それからフジテレビの「推しの王子様」は、 比嘉愛未が36才で、渡邊圭祐が23才という設定です。 そういえば、 テレ東の「ラブコメの掟」も年上女と年下男子の恋でしたね。 これはタイトルのとおり、 ラブコメのお約束設定をパロディにして、 ウブな年上女がイケメンの年下君に翻弄されるお話。 栗山千明の "膝乗せハグ" がちょっとツボだった。 おそらく制作サイドは、 女子目線の視聴者層をターゲットにしてるだろうけど、 なかには綺麗な年上女に憧れて、 男子目線で見てる視聴者だっていることでしょう。 ◇ 今回の「プロミス・シンデレラ」は、 二階堂ふみが27才、眞栄田郷敦が17才という設定。 同じくTBSの「中学聖日記」のときは、 岡田健史がまだデビューしたばかりだったし、 実際に10代の俳優だったので、 しかも、役柄上も真面目でウブな高校生だったので、 やたらと「禁断の恋」みたいな背徳感が際立ちました。 それにくらべて、今回の眞栄田郷敦は、 実年齢がすでに21才だし、 役柄上も、やんちゃなマセガキでありながら、 なんだかんだ「花男」的な良家のおぼっちゃんなので、 さほどの背徳感もなく、気楽に見ることができた。 ◇ とはいえ、 最終回は、かなり攻めた内容になっていました。 アラサー女子と高校生の恋にとどまらず、 最後には"結婚"まで匂わせたりして、 これは従来のドラマの良識を破ってる気もする。 ちなみに、 わたしは原作をまったく読んでいませんが、 今回のドラマは、いろいろ腑に落ちないところもあります。 たとえば、 早梅(二階堂ふみ)と壱成(眞栄田郷敦)が結ばれ、 菊乃(松井玲奈)と正弘(井之脇海)も結ばれ、 まひろ(松村沙友理)と洸也(金子ノブアキ)も、 いずれは結ばれるっぽい感じなのですが、 他方で、 成吾(岩田剛典)や、 アルバイトのさくら(畑芽育)は報われないのです。 このあたりの納得感が乏しい…。 そもそも早梅は、 なぜ成吾でも正弘でもなく、高校生の壱成を選ぶのですか? まあ、 「人を好きになるのに理由なんてない」のですけど、 どうも物語としての納得感に欠けるのですね。 ◇ 貧しい虐待家庭に育った早梅と、 容姿が醜かった明(=のちの菊乃)は、 それぞれに恵まれない境遇を背負っていました。 前者が「家なき子」の安達祐実だとすれば、 後者は「野ブタ。」の堀北真希って感じ。 ある意味では、どちらも似たもの同志なのです。 そんな2人が敵対した原因は、 成吾との潜在的な三角関係でした。 菊乃が早梅に向けた憎悪は、いわば「隣の芝生」みたいな逆恨み。 菊乃は、整形して美人になったんだし、 成吾とも愛人になれたんだからいいじゃん! と思うけど、 どうやら「愛人」という自らの立場を恨んだらしく、 成吾の想い人である早梅を、 いちど成吾と結びつけてから無理やり破綻させ、 早梅にも自分と同じ「愛人」の哀しみを味わわせてやろうと、 なかなか面倒くさい攻撃を仕掛けていたのでした。 成吾と早梅をくっつけようという意味でなら、 それは大女将(三田佳子)の企みにも近いのだけど、 そもそも早梅は、成吾に恋愛感情を抱いていませんでした。 ◇ 成吾も、正弘も、 父に虐げられていた貧しい早梅のことを救い、 さらに醜かった明(のちの菊乃)のことも救った男性です。 どちらも煮え切らない優柔不断な男ではあるし、 菊乃と愛人関係になったのもマズかったけれど、 基本的には優しい男性のように思える。 正弘のほうは、 いちどは早梅と結婚できたわけだし、 最後は菊乃と結ばれて終わるようなので、 それなりに報われた感じですが、 成吾のほうは、 いっとき菊乃と愛人関係になったのみで、 早梅とはいちども触れ合うことすらなく、 最後はひとり取り残されて終わります。 ◇ 菊乃は、 せっかくなら最愛の成吾と結ばれりゃいいのに、 なぜ最後に正弘のほうへなびくように終わるのでしょうか? そして、 なぜ早梅だけが、 成吾も捨てて、正弘も捨てて、 拾いものみたいな金持ち高校生と結ばれて終わるのでしょうか? 結果的に見ると、 2人の女子がそれぞれに別の男性と結ばれ、 なぜだか成吾だけが一人取り残されるという不思議な結末。 タイトルの「プロミス」って、なんの約束だったの? 兄の約束を、弟が代わりに果たすってこと? 兄をないがしろにして? ◇ たしかに早梅は、 真っ直ぐで正義感の強い女性ですけど、 彼女だけが独り勝ちするようなオチにはなかなか共感しにくい。 なんらの「プロミス」も果たされた実感はない。 たまたま金持ち高校生を拾ってラッキー!ってだけ…。 見方を変えれば、 幼少期に母親に捨てられた淋しい壱成くんを、 年上の早梅が優しく受け止めた感じでもあるのだけど、 それって、 成吾や正弘が、早梅や菊乃を受け止めた慈悲心にも近いし、 そもそも貧しい家庭に育って、 ろくに家事も出来ないし教養もないバツイチ女が、 2人の男性を捨てたり、 老舗旅館の御曹司を選んだりできる分際なのか?ってのもある。 ◇ 原作はまだ完結していないらしいけど、 わたしが思うに、 原作のアウトラインだけを脚本家が借用した結果、 いろんなところで整合性が崩れてしまったか、 もしくは、細部の説明不足のために、 かなり納得感の乏しい展開になった気がしてなりません。 原作者としては、 「とりあえずドラマ化してもらっただけでありがたい」 ってな弱い立場かもしれませんが、 本心のところでは、 このような脚色に納得しきれていないのでは? ◇ …それはそうと、 眞栄田郷敦は、 最近の若手には珍しいインパクトの強い顔立ちでした。 このタイミングで亡くなった千葉真一どころか、 かつての三船敏郎みたいな目力の強さ。 渡辺謙とか、阿部寛とか、 そのあたりに連なる"大型俳優"の雰囲気があります。 いっぽうの二階堂ふみは、 ほぼ実年齢と変わらない役どころだったけど、 こんな可愛くてキレイな既婚女なら、 きっと男子高校生でも恋しちゃうでしょうね。 … 今回のドラマは、 和モダンな旅館を舞台に、 蛇女みたいな松井玲奈が人間関係を掻き回すという、 いわばサスペンスタッチのラブコメだったので、 日テレの「わたどう」とか「高嶺の花」にも通じるところがあった。 上記2作よりは、 まだしもマシな脚本だったかもしれませんが、 なかなか大満足とまではいかないのが正直なところです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.09.18 10:50:04
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