2022/12/26(月)17:34
本田圭佑のサッカー解説:陣形が「ハマる」ということ。
ABEMAの本田圭佑のサッカー解説。
いちばん印象に残ったのは、
守備や攻撃が「ハマってる」という言い方です。
この「ハマる」ということが、
日本のサッカーの戦術を考えていくうえで、
とても重要な概念になる気がします。
◇
森保をふくめて、
従来の日本サッカーの戦術は、
簡単にいえば、
前半は守備的な陣形でカウンター狙い。
運よく前半で先制できたら、そのまま守備的な陣形を維持。
前半で先制されてしまったら、後半は攻撃的な陣形に変更。
…というものです。
そこで問題になるのは、
後半まで引き分けの状態が続いたとき。
たとえば後半まで引き分けのまま、
残り時間わずかのところで先制されたりすると、
もう「後のお祭り」ってことになります。
コスタリカ戦は、まさにそのパターンでした。
◇
しかし、
本田圭佑の考え方は違っていました。
重要なのは、
陣形が「守備的か攻撃的か」ではなく、
それが「ハマってるのかどうか」ってこと。
たとえ守備的な陣形をとっていても、
ハマってなければ守備に徹する意味がないし、
逆に、攻撃的な陣形であっても、
ハマっていれば失点のリスクはほとんどない。
実際、
本田が「ハマっている」というときは失点がなかったし、
本田が「ハマっていない」というときは、
守備的な陣形にもかかわらず失点していました。
◇
たとえばクロアチアなども、
かなり前線を押し上げて、
ゴールキーパーの目の前までボールを奪いに来ていたけれど、
それでいて別にリスクを負っている風ではなく、
むしろ守備は非常に堅かったのですよね。
つまり、きちんと守備がハマっていれば、
リスクを負わずに前線を押し上げることも可能であり、
前半から攻めていくことも出来るってこと。
日本も、
とくにコスタリカ戦では、そうすべきだったと思う。
◇
ところで、
守備が「ハマる」とは、どういうことなのでしょうか?
第1に、
どのような陣形をとるかということ。
第2に、
選手の個性に合わせて、
誰が誰をマークするかということ。
第3に、
前線をどこに設定するかということ。
センターラインより前で守るのか、後ろで守るのか。
第4に、
どのようにボールにアプローチするか、ってこと。
パスを待ってカットするのか、
こちらから積極的に奪いに行くのか、
あるいは体ごと当たっていくのか、
それによっても「ハマりかた」がぜんぜん違ってくる。
たんに数的に優位なら安全というわけではないし、
逆に、数的に不利なら危険というわけでもない。
重要なのは「ハマりかた」なのだと思います。
◇
もちろん、
これは守備だけでなく、攻撃についてもいえます。
守備において「ハマる」というのは、
ポジションごとの対応のパターンができているということ。
それがきちんとハマっていれば、
やみくもに走らされたり、無駄に疲労することも少ない。
一方、
攻撃において「ハマる」というのは、
相手の隙や弱点を突く連携パターンができているということ。
それがいったんハマってしまえば、
相手が陣形を変えたり選手交代をしないかぎり、
いつまででも、何度でもチャンスが続くことになります。
◇
日本のサッカーは、
この「ハマる」ということのロジックを、
チーム全体で、
あるいは日本のサッカー文化全体で、
もっと突き詰めて共有していくべきですね。
それによって、日本のサッカーは、
もう一段階レベルアップできるんじゃないでしょうか。
…
日本ごときが、
「サッカーのフィロソフィー」なんてものを考えるのは、
まだ100年早いかもしれませんが、
かといって、
「守備的陣形か/攻撃的陣形か」
という二択だけでサッカーをする時代は終わったと思います。
そうでなければ「個」の力を生かすことは出来ません。
同時に、テレビの解説者も、
新しい時代のサッカーを言葉に出来る人でなければなりません。