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おそまきながら、
ドラマ「silent」最終回の感想。 …と、 その前に「ボクらの時代」も見た。 脚本家&演出家&プロデューサーの鼎談。 ![]() 三人とも第5話がベストの回だと言ってました。 わたしは第6話の終盤まで脱落寸前でしたが!(笑) そして、 プロデューサーは「最終回が不安」とも口にした。 実際、 近年にしてはめずらしく11話まであったわけですが、 正直いって、 終盤の第10~11話は、蛇足の感が拭えませんでした。 ◇ 最終回では、 なぜか物語の結論を「言葉」に収斂させたのですね。 付箋に書いた「言葉」をテーブルの上に並べたり、 わざわざ高校まで行って、 教室の黒板に「言葉」を書きつけて会話したり、 体育館で「言葉」についての昔の作文を読んだり、 最後は、 かすみ草に「花言葉」を託して次々と受け渡してました。 「カスミソウ」が「サクラソウ」の洒落なのかどうか知らないけど、 「感謝」という音のない花言葉を、手話と同じように「おすそわけ」していたらしい。 ![]() ![]() ![]() たしかに、奈々は、 手話が「目に見える言葉」であることを讃えていたし、 スピッツも「魔法のコトバ」を歌っていたし、 ヒゲダンのテーマ曲も「言葉」について歌っていた。 言葉はまるで雪の結晶 君にプレゼントしたとして 時間が経ってしまえば 大抵 記憶から溢れ落ちて溶けていって消えてしまう でも 絶えず僕らのストーリーに添えられた字幕のように 思い返した時 不意に目をやる時に 君の胸を震わすもの探し続けたい きっと、 音がなくても「言葉」があればいい、ってことなのだろうし、 手話が伝える「言葉」の価値を肯定的に描きたかったのだろうし、 そして新進の脚本家としても、 最後の最後に「言葉の力」を訴えて終わりたかったのでしょう。 しかし、 それまでの物語の流れから考えると、 この物語の結論は、やや唐突な印象を拭えなかった。 そんなことがテーマでしたっけ? とってつけたような感じ。いまいちピンとこなかった。 ◇ なぜなら、 かならずしも言葉は人と人とを正確につなぐわけではないし、 むしろ言葉のすれ違いが人と人を切り離すこともあるのだし、 実際、この物語のなかでは、 いくら言葉を尽くしても分かり合えないことのほうが多かった。 それに、 もし2人が言葉でしか繋がり合えないのなら、 想と紬はずっと手を繋ぐこともできず、 可愛いバッグを持ち歩くこともできず、 ひたすら手話をし続けなきゃいけなくなる。 むしろ、 「言葉を超えた繋がりこそ重要」という結論のほうが、 視聴者としては、よほど納得感があったはずです。 …というより、 わたしに言わせれば、 ≫ 他人の気持ちを思いやるよりも ≫ 自分の気持ちに正直になることのほうが大事 という第8話の内容こそが結論にふさわしかったのです。 ◇ じつをいえば、 第9話も素晴らしかったのですよね。 ドラマの最終盤になって、 想が聴力を失った過去へ遡る、という内容。 この構成の仕方はすごいと思いました。 序盤でそれを見せるのと、 奈々の物語の後でそれを見せるのとでは、 視聴者の受け止め方が大きく違ってくるからです。 時系列で物語を語っていくのでもなく、 かといって順繰りに遡っていくのでもなく、 表層から深層へ分け入ってくような、 あるいは細部へ分け入っていくような、 通常の脚本ではありえない叙述を確信犯的にやっていた。 ◇ しかし、残念なことに、 第10話ではまた振り出しに戻った感じで…(笑)。 つまり、 「紬の声を聞けないのが悲しいから別れる」 みたいな話に戻ってしまった。 高校卒業後に紬と別れた理由を、 最終盤にきて、あらためてぶり返した形です。 それって、基本的には、 湊斗が紬と別れたときの、 「紬のすべての気持ちを手に入れられないのが悲しいから別れる」 ってのと似たような理由。 要するに、どちらの男子も、 完全に100%じゃなきゃ気が済まないのです。 20%の欠落が悲しいから、 残りの80%も捨ててしまおう、みたいな話。 まあねえ、 若いから、気持ちは分からないでもない。 ◇ でも、 100%を共有し合える恋愛なんてありえないのです。 たとえ健常者どうしであってさえ、 同じものを見て、同じものを聞いてるとは限らないのだし。 むしろ、2割ぐらいが共有できれば御の字(笑)。 想であれ、湊斗であれ、 そのことに折り合いをつけられるかどうかが問題だった。 すくなくとも、想にかんしていえば、 たとえ紬の声を聞くことができないとしても、 「声以外の部分を愛せばいい」という結論になるのは自明だった。 しかも、それを「言葉」だけに収斂させる必要はなかったのです。 声以外のすべてを愛せばいいのだから。 サブスクではなくCDを手に取ることの意味もそこにあったはず。 音以外のすべてを感じ取ればいい、ってこと。 ![]() ![]() ![]() ◇ 余談ですが、 最後まで「お姉ちゃん大好き」だった弟くんは、 結局ずっとフィクサー的な役回りのままでしたね。 弟くんと妹ちゃんが、 なぜ繋がってるのかも分からなかったし、 なぜその関係を姉や兄に隠してるのかも分からなかった。 それから、 これも余計なことだけど、 篠原涼子は、 これまでずっと主役を張ってき女優なだけに、 脇役の演技があまり上手くはありませんでした。 脇役になっても、まだ主役の演技をしてる感じ。 よくもわるくも「スターの輝き」が抜けないのです。 年末の紅白でも、 堂々たるパフォーマンスを見せていましたが、 やはり主役向きの人だなと思いました。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]()
最終更新日
2023.01.13 20:01:50
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