2024/05/06(月)07:30
プレバト俳句。お題「連休の混雑」に異議あり?!逗子の海風は青嵐?
渋滞の柩車に妣と春深し 静寂の官公庁や落椿 二時間を惜しむくちびる桜色 パレードかファンキャップ飛ばす春疾風 青嵐海の上での人違い 色も無き渋滞にふと桜雨 黄金週間の原宿四つ折りの紙幣 潮干狩父の背中が見当たらぬ
5月3日のプレバト俳句。
お題は「連休の混雑」。
◇
関水渚。
青嵐 海の上での人違い
連休の水着とりどり 人違い(添削後)
彼女のWikipediaによれば、
>「渚」という名前は
> 父がウインドサーフィンをしていた逗子の海にちなむ
とのこと。
芸名みたいな本名!苗字もふくめて。
そんな地元民らしいユニークな句材ですが、
字面からは状況がまったく見えない。
船上の人違いの話かと誤読されてしまいます。
ちなみに、
季語「青嵐」を選んだ理由がすごく謎だけど…
そういえば石原良純が、
「逗子の風は山から海へ吹き下ろす」
みたいに言ってたような気がするし、
それを地元で「青嵐」と呼ぶのかしら??
もしかして裕次郎は、
その意味で「嵐を呼ぶ男」だったとか??
※慎太郎は自民党で「青嵐会」を結成してるよね…。
知らんけど。
…まあ、それはともかくとして、
先生の添削は例によってまったくいただけません。
海上じゃなく浜辺の場面に見えるので、
かえって凡庸な内容の改作になっており、
句材のオリジナリティが消失しています。
さらに、
中七で切って下五をオチする形式は、
俳句というよりも、ほとんど川柳に近い。
作者の意図に沿うならば、
人混みの海 サーフィンの父いずこ
ヨットひしめく海に父を探せり
みたいになるのかなと思います。
◇
キスマイ宮田。
パレードか ファンキャップ飛ばす春疾風はるはやて
パレードみたい 春風飛ばすファンキャップ(添削後)
作者いわく、
> ディズニーランドのファンキャップが
> いっせいに飛ばされたらパレードみたいだろう…
とのことですが、
その発想自体が分かりにくく、
たくさんの帽子とも明示されてないので、
字面だけじゃ何も見えてきません。
そもそも比喩で幻想を書くところに無理がある。
実景を比喩で書くにとどめれば、
ファンキャップのパレード春風に舞う
のように書けるし、
比喩そのものを諦めるなら、
春風に舞うファンキャップの絢爛
のように写生できます。
◇
呂布カルマ。
二時間を惜しむくちびる桜色
二時間を惜しむくちびる桜時(添削後a)
二時間を待ってむくれる子と桜(添削後b)
無季の句。
これも字面だけじゃ状況が見えない。
桜色の唇に《春》を見出したのなら、
作者にとってはそれが季語なのでしょうが、
桜色をしてるのは我が子の唇だそうで、
女性の口紅ではないらしい。
なので、
作者の意図に近いのは(添削後b)ですが、
語順や季語については、
花の雨 二時間待ちを愚痴たる子
のようなやり方もありえます。
なお「愚痴たる」は日本語として間違いかもしれないので、
その場合は「不平の子」か「不満の子」に置き換えます…。
◇
とろサーモン村田。
渋滞の柩車きゅうしゃに妣ははと 春深し
渋滞や 柩ひつぎの母とゐる深春(添削後)
これが今週の1位。
原句は中七で意味が切れるけど、
助詞で繋がるように見えるのは難点だし、
季語に映像がともなわないのも難点です。
添削句は、
「棺」でなく「柩」と書くことで、
渋滞の情報に重ねれば霊柩車を想像できる、
…ということなのでしょう。
◇
長野智子。
静寂の官公庁や 落椿
祝日の官公庁や 落椿(添削後)
シンプルな佳作でしたが、
上五の「静寂」は説明くさいわりに情報量が足りない。
そこは「祝日」「連休」のように書くのが正解だと思います。
◇
清水アナ。
潮干狩 父の背中が見当たらぬ
これもシンプルな出来。
小学生みたいな可愛い内容ですが、
とくに形式上の瑕疵はないと思います。
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◇
立川志らく。
色も無き渋滞にふと桜雨
桜雨走れり 色の無き渋滞(添削後)
原句が動画的なのに対して、
添削句のほうは対比的な取り合わせ。
そこは好みの問題ともいえますが、
個人的には添削句のほうがいいかなと思う。
とはいえ、
色のなき渋滞にふと桜雨
色のなき渋滞に桜雨舞う
のように直しても悪くはありません。
助詞「も」を使ったのは安易だけれど、
副詞「ふと」を使った効果はちゃんとあって、
渋滞に苦しんだ時間経過を感じさせます。
なので、
つねに「ふと」を否定するのが正しいとは言えない。
◇
フルポン村上。
黄金週間の原宿 四つ折りの紙幣
黄金週間来く 四つ折りの紙幣(添削後a)
春休はるやすみの原宿 四つ折りの紙幣(添削後b)
句材は面白いのだけど、
さすがに字余りが過ぎるかな。
わたしは地名の「原宿」が不可欠だと思うし、
上五を「連休の」にすれば17音なのですが、
いかんせん季語が「黄金週間」だから替えられない。
落としどころは(添削後b)でしょうが、
春休を「しゅんきゅう」とは読めないので、
これで字余りが解消されるわけではなく、
そもそも「黄金週間」を「春休み」にしたら改作ですね。
…ってことで、
いまいち解決策は見当たりません。
なお、個人的な印象ですが、
ゴールデンウイークの直訳とはいえ、
「黄金週間」って季語自体が大袈裟すぎて好きじゃない。
字面がクリスマスっぽく見えるし、
五月の季節感に不釣り合いな気がします。
▽過去の記事はこちら
https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/ctgylist/?ctgy=12