テーマ:政治について(19955)
カテゴリ:NHK朝ドラ
朝ドラ「虎に翼」第18週。
星航一(岡田将生)は「総力戦研究所」のメンバーでした。 ◇ 猪瀬直樹の『昭和16年夏の敗戦』のことは、 おおよその内容くらいしか知らず、 朝ドラのモデルになった三淵嘉子の夫が、 それに関係する人物だとも知らなかった。 日本の近代のドラマとしては、 三淵嘉子の人生を描くこと以上に、 その夫の三淵乾太郎を描く意味のほうが大きい。 今回の朝ドラの主眼も、じつはそちらにあるのかも。 ◇ これは、 戦争の被害者の物語ではなく、 国策にかかわった加害者の物語になるわけだし、 その意味でいえば、 今年のオスカーを総なめにした、 映画『オッペンハイマー』に通じる部分もある。 三淵嘉子は戦争で家族を亡くしてるわけだから、 夫が「加害者」で妻が「被害者」みたいな関係でもある。 … 去年の朝ドラ「らんまん」でも、 後半は主人公の妻のほうに焦点が当たってました。 今回もやはり、ドラマの後半部分は、 主人公の夫のほうに焦点が当てられて、 それを支える妻と娘の物語に変わるのかしら? ◇ ところで… 戦前の総力戦研究所が、 「日本必敗」を予測したにもかかわらず、 なぜ政府は開戦へと突き進んだのか? この問題って、じつはとてもシンプルです。 1.政治に左右されない科学的なシミュレーション 2.そのシミュレーションを意思決定に反映する仕組み 上の2つがちゃんと両立してれば、 判断を間違うことはほとんどないのよね。 ◇ 太平洋戦争の場合は、 「1」のシミュレーションはきっちり出来てたのに、 それを意思決定へ反映させることが出来なかった。 逆に、戦後の原発行政では、 御用学者たちがデータを捏造し、 出鱈目なシミュレーションにもとづいて、 安全神話をばらまいてしまったために失策を招いた。 バブル崩壊後の企業経営においても、 正確な予測を立てた人たちはいたはずだけど、 あらゆる現場において、その声を無視したり抑圧したりして、 組織全体が「バブル的な仕草」を改めないまま、 失われた30年を長引かせてしまってる。 ◇ 戦争にかんしても、コロナにかんしても、 原発にかんしても、企業経営にかんしても、 あるいはスポーツの指導や采配についてでさえ、 科学的なシミュレーションにもとづいて、 かなり正確な予測を立てることは可能なのだけど、 それを意思決定に反映させる仕組みがなければ、 なんの意味もありません。 日本の社会には、それが決定的に欠けている。 ◇ 正確なシミュレーションの出来る科学者は限られており、 その精緻な分析内容を理解できる人も限られてます。 一般の日本人は、非常に読解力が乏しいので、 物事の是非を判断するときには、 「何を言ってるか」ではなく「誰が言ってるか」に左右される。 その結果、科学的なシミュレーションは無視される。 科学者の神経質な主張よりも、 権力者の発言のほうになびいてしまうからです。 長いものに巻かれるとは、そういうことですね。 そのような日本人の特質は戦前から変わってません。 ◇ シミュレーションの妥当性を判定し、 それを権威づけるための仕組みが欠けている。 だから、 日本は同じ失敗を何度も繰り返すことになります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.08.10 06:45:21
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