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土曜ドラマ「地震のあとで」第2話を見ました。
◇ わたしは、いままで、 村上春樹がノーベル賞を獲ると思ったことも、 獲ってほしいと望んだこともなかったけど、 今回のドラマ第2話を見てはじめて、 《もしかしたらもしかするかも…?!》 って気持ちになりましたね(笑)。 それだけの力を感じさせる要素はあった。 ちなみに、 総合「土曜ドラマ」とEテレ「100分de名著」が、 同時に村上春樹を取り上げてるのは、 たぶん新作の発表に合わせてのことだろうけど、 案外、NHKも、 本気で《獲らせに行ってる》のかもしれません。 ◇ 一応、あらすじを書くと、 阪神大震災で家族を失ったらしき男と、 父親に性的な不信を抱いた家出少女が、 海岸で焚き火をしながら魂を通わせて、 ともに死ぬ方法を考えるのだけど、 それがたまたま2011年3月11日だった。 …という話。 ◇ その後2人が死ぬのかは分かりませんが、 どちらにせよハッキリしてるのは、 東日本で膨大な数の死がある…ということ。 とはいえ、 それを情報としては知っていても、 物語のなかで直接描かれることはない。 そもそもそれを描くのは不可能だし、 想像することすら出来ないからです。 ◇ せいぜい想像できるのは、 《この2人は死ぬのか死なないのか》 《死ぬとしたらどんな方法で死ぬのか》 …ってことぐらいなのですね。 これは、 第1話「UFOが釧路に降りる」にも共通する。 《妻が失踪した理由》についてなら、 それをあれこれ想像することは出来るけど、 震災での膨大な数の死がどんなものかは想像できない。 これはいわば「語り得ぬものを語る」みたいな手法ですが、 想像できないものを想像させようとする怖さにおいて、 あるいは深さにおいて、 世界文学としての迫力を感じさせるところはあります。 ◇ 実際のところ、 そういう面に村上作品の真価を見なければ、 ノーベル賞なんてありえないわけだし、 そのために必要なのは、むしろ国内の評価なのでしょう。 いくら熱狂的なハルキストが、 「ノルウェーの森」みたいなポップ小説を称賛しても、 一般の国民にしてみたら、 あんな本でノーベル賞が穫れるとは思えないわけで(笑)。 だから、 「ノルウェーの森」みたいなクソ小説のことは横において、 震災を描いた短編にこそ村上文学の真価があると考えたとき、 はじめて国内の評価と海外の評価が一致するのだと思います。 やはり村上春樹がノーベル賞を獲るとしたら、 《震災文学の世界性》ってことが受賞理由になるはずだし、 そう考えるなら、むしろ川端や大江以上に、 世界文学として評価するだけの納得感もあるわけですよね。 ◇ 濱口竜介の映画「ドライブマイカー」を見ても、 村上春樹がノーベル賞を穫れる気は全然しなかったけど、 今回のようなドラマが後押しになる可能性はあるかも。 結局、ノーベル賞といっても、 推薦するのも人だし、審査するのも人だしね。 もしノーベル賞を獲れたら、 NHKや、大江崇允&山本晃久は、 ナイスアシスト!ってことになるかもしれません。 ◇ ついでながら… 村上春樹は、 東京を舞台にしたキザな小説よりも、 関西を舞台にした小説のほうが力があるのでは? 今回のドラマでも、 兵庫出身の鳴海唯と堤真一を起用したのが良かったです。 追記: 堤真一が関西弁を喋るので、わたしはドラマの途中までは関西が舞台だと誤解してたのですが、後半に「大阪の人でしょ」「神戸や」「俺らからしたら同じ。関西弁出過ぎ」などのセリフが出てくるので、むしろ舞台が関西でないことを理解しました。調べてみると、原作は[1995年2月の茨城県鹿島灘]を舞台にしていて、NHKのHPによると、今回のドラマではそれを[2011年の茨城]に移したらしい。海岸の巨大な風車施設や北浦橋梁の映像が出てくるのを見ると、撮影も茨城でおこなわれたのでしょう。 ただし、海岸の風車や北浦橋梁の映像だけでは、そこが茨城だと認識させる記号としては弱いし、原作の設定を《東日本大震災の予言》と捉えて、登場人物の死への願望を《津波被災》に直結させたのなら、そのイメージはかえって短絡的すぎると思います。兵庫出身の鳴海唯を起用した必然性もちょっと薄れてしまう。 ![]() ![]() ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2025.04.14 09:01:24
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