ボブ・ディラン×ジョン・レノン「ノルウェーの森」のパクリ問題。
先日、ピーター・バラカンがラジオで、ボブ・ディランとジョン・レノンの会話がネットで見れる…みたいなことを言ってたので、さっそく見てみました。リムジンの後部座席の会話。このやりとりで注目すべきなのは、ディランの以下の言葉です。I played you those tapes?(俺はあのテープをおまえに聞かせただろ?)Remember, you said to me, I played you a song?(曲を聞かせたとき、おまえが何と言ったか覚えてるか?)You said "This ought to be in Northern Songs".(おまえは「ノーザンソングスに載せなきゃいけない」と言った)I said "What’s Northern Songs?"(俺は「ノーザンソングスって何だ?」と訊いた)pic.twitter.com/7TyAN3Y3HV— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) April 25, 2026 これはどうやら、ビートルズの「Norwegian Wood」と、ディランの「Fourth Time Around」にまつわる話なのですね。◇ディランの「Fourth Time Around」は、ビートルズの「Norwegian Wood」にそっくりなのだけど、これは、ディランがレノンの曲をパクったからではなく、もとはといえば、レノンのほうがディランの曲をパクった…ってことらしい。そしてレノンは、ディランが書いた歌詞の最後にある、I never took much, I never asked for your crutch(俺は多くを奪ったりしないし、おまえの杖を求めたりもしない)Now don’t ask for mine(だから、おまえも俺の杖を求めるなよ)…の部分を、自分への当てつけと受け止めたようです。◇これについての詳しい解説記事が、ニューヨークタイムズに載ってます↓https://www.nytimes.com/2026/04/05/style/bob-dylan-john-lennon-limo-ride.html以下はその抜粋と、わたしのテキトーな和訳。Al Kooper, a musician who took part in the session, noticed the likeness right away. “I said, ‘It sounds so much like “Norwegian Wood,”’” he recalled in a 1987 interview. “And he said, ‘Well, actually, “Norwegian Wood” sounds a lot like this. I’m afraid they took it from me, and I feel that I have to, you know, record it.’” With that koan-like statement, Dylan was arguing that the Beatles song was so much like one of his own that he had to reclaim it.セッションに参加したアル・クーパーはすぐに似てることに気づいた。彼は1987年のインタビューで《僕は「Norwegian Woodによく似てるね」と言ったよ。すると彼は「実際にNorwegian Woodはこれにすごく似てる。おそらく奴らは俺から盗んだんだろう。だから俺はこれを録音しなきゃならないと思ってる」と言ってた》と回想した。 そんな禅問答のなかで、ディランはビートルズの曲が彼自身の曲にとても似ているので取り戻さねばならないと述べたのだ。It seems that Dylan meant “Fourth Time Around” to signal that “Norwegian Wood” was the fourth instance of Lennon’s having borrowed too much from his own style.ディランは「Fourth Time Around」の曲名によって「Norwegian Wood」はレノンが自分のスタイルを拝借しすぎた第4の事例だと暗示させたようだ。George Harrison addressed this musical back-and-forth in a 1992 interview: “There’s a funny thing that I don’t think anybody else has noticed, and that is when John wrote ‘Norwegian Wood,’ it was obviously a very Bob Dylan song; and right after that, Bob’s album came out, and it had a song called ‘Fourth Time Around.”ジョージ・ハリスンは1992年のインタビューで、この音楽の相互作用について《誰も気づいてない奇妙なことがあるんだけど、ジョンが「Norwegian Wood」を書いたとき、それは明らかにボブ・ディランの曲だった。その直後にボブのアルバムが出ると「Fourth Time Around」という曲が入っていた》と話した。“Blonde on Blonde,” the album Dylan had been working on in Nashville, wasn’t in stores by the time he arrived in London that May. But he had brought along tapes of its tracks, and he wanted the Beatles to hear them. On the night he unveiled “Fourth Time Around” at the May Fair suite, Lennon felt uneasy to hear his own melody coming back at him.ディランがナッシュビルで制作したアルバム『Blonde on Blonde』は、その5月に彼がロンドンに着いた時点ではまだ店頭になかった。だが、彼はそのトラックのテープをもってきてビートルズに聴かせようとしていた。メイフェアホテルのスイートで「Fourth Time Around」を披露した夜、レノンは彼自身のメロディーが戻ってきたのを聴いて不安を感じた。“This ought to be in Northern Songs,” he said to McCartney.彼は「これはノーザンソングスに載せるべきだ」とマッカートニーに言った。“What’s Northern Songs?” Dylan asked.ディランは「ノーザンソングスって何だ?」と訊いた。Lennon didn’t bother to explain that it was the publishing company that housed Lennon-McCartney compositions.レノンはそれがレノン=マッカートニーの楽曲を管理する出版社だと説明しようとはしなかった。As “Fourth Time Around” came to an end, the Beatles heard Dylan break away from the narrative:ビートルズの面々は「Fourth Time Around」の最後のところで、ディランの歌が物語から逸脱するのを聞いた。And I, I never took much, I never asked for your crutch.Now don’t ask for mine.俺は多くを奪ったりしないし、おまえの杖を求めたりもしない。だから、おまえも俺の杖を求めるなよ。なお、リムジンの車内の会話は、映画『Eat the Document』のために撮影されたものの、お蔵入りになってしまった映像ですが、ローリングストーン誌の記事によれば、「本映像が撮影されたこの日以降、両者の関係はぎこちないものになったと言われている」…とのこと。https://rollingstonejapan.com/articles/detail/26190/ピーター・バラカンは、「ディランは他人の音楽は平気で模倣するのに、自分が模倣されると意地悪になる」…みたいに言ってましたね。◇ちなみに、邦題の「ノルウェーの森」は、日本のレコード会社による誤訳なのだけど…だからといって英語の"wood"を、たんに「木材」や「家具」と訳せばいいわけでもなく、サブタイトルには、"This Bird Has Flown"(この鳥は飛び去った)…との比喩があるのだから、原題の"wood"に「森」の含意を汲み取るのが、絶対的な間違いとも言い切れないところはある。※念のためにいうと、ノルウェーの森の英訳は「Norwegian forest」ノルウェーの樹木の英訳は「Norwegian trees」が一般的だろうとは思います。さらに村上春樹によれば、"Norwegian Wood"は、"knowing she would"(彼女がそうするだろうと予想してた)の言葉遊びだとの説もあるようです。実際、この曲の歌詞は、「彼女がエッチさせてくれると思ったのに、させてくれなかった」…みたいな内容ですからね。◇ともかくも、ビートルズの『Rubber Soul』は、ボブ・ディランの影響を受けたことによって、前期ビートルズから後期ビートルズへの転換点になった。とりわけ「Norwegian Wood」は、それを象徴する楽曲だったってことですね。ラバー・ソウル [ ザ・ビートルズ ] 楽天で購入