葛葉姫鬼譚外伝★夢紡僕は海に…大陸にいく…待っていてくれる? ああ…よかった… 必ず帰ってくるからね・まっていおくれ… 本当は嫌だった… ずっと一緒にいたかった… あの人は自分の夢を取った… 私といるより夢といる方を… その夢を知らない頃の貴方にあって あなたを遠くの国に行かせたくない… わだつみの神よ…時を司る月読神よ… まだ夢を抱かないあの人のもとへ…つれってって… 都を離れてまだ半年… 海の塩の甘ったるいにおいには大分慣れ都にない未知なるモノが転がっているものに目を輝かせ子供達と海ではしゃいでいる青年がいる。 「きれいな貝殻だなーこのきれいな貝の中に絵を書いくのかー描かなくてもいいのにな…」 貝殻を拾いながら、裸足で砂浜を歩く。 「光栄様…お幾つですがあなたは…」 光栄の従者の亜鷹は海の浜辺ではしゃぐ主人に呆れていう。 「今年で16だが?」 あくびれもなく皮肉な問いに素直に解答する。 「こっちの貝は海の音がするんだぜ!」 近所の海女の息子たちが、光栄の周りを囲んで一緒に遊んでいる。 都からきた何も知らない年上の男に自慢げに播磨の風習を教えたりしているのだ。 その、教えられたことを素直にうけとり、子分状態な光栄の態度が信じられない…従者としては見たくはない光景だ。 光栄と遊んでいる子供とは別の子供が何やら叫びながら海の方からかけてきた。 砂浜なのでなかな早く走れない。 光栄のそばまできた時に息切れをしていた。 大きく息をして大分落ち着いてから、 「光栄様!手伝って!女のひとが岩に引っ掛かっているんだ!」 「死人か?」 「そうじゃないんだ。波が岩を打つと、その女の人が岩にしがみついていて…死人かなとかおもったけど、生きてるみたいなんだ、子供のおれじゃ助けられないから光栄ならって…」 「わかった、すぐにいこう!亜鷹も来い!」 「はい!」 今までのほほんと遊んでいた光栄はどこにいったのか、きりりとして、仕切っている。 こういう光栄が亜鷹は好きだ。 いざってときには先頭にたってみんなに指示する。 光栄のそばに急いでそばにより、一緒にその女のもとにいく。 激しい波うつ岩場にその女はいた。ひっかかっているというか、けだる気に力なく突き出た岩にしがみついて寝ている。 激しい波が彼女の体力を奪っているのだ。 光栄は激しい波をやわらげる術を使って、彼女を引き上げる。 「わお!」 「真っ白!」 「こ!こどもがみちゃいかん!」 亜鷹は顔をまっかにして光栄が引き上げた力強さより女の肌を見ているのを遮る。 光栄のほうは、もときた場所をその女の人をかかえ、砂浜にかえってくる。 自分のきている狩衣をきさせ、女の頬をたたく。 女は海女というわけではないのは一目瞭然だった。 海女は肌が日に焼けて黒いだが、彼女は真白肌なのだ。 水を多く含んでいるらしく、つい最近おそわった、人工呼吸法を施す。 すると、女は水を吐き出し、息を吹き返した。 女は光栄の顔を見ると何ごとか口にしたが、声がでない、くちばくだった。 だが、彼女の意識はまた闇の中に落ちてゆく。 「おい!君!…亜鷹、いそいで邸に連れていこう」 「はい!」 亜鷹はむねから人形の紙をとりだし、光栄に渡す。 素早く、呪をとなえると、牛車にかわった。 「すっげーおまえやっぱり陰陽師だったんだなー」 「まぁね。じゃ、また」 牛車に亜鷹が最後に乗ると、牛のいない牛車は浜辺を難無く走り去っていった。 邸につき、急ぎ裸の彼女を侍女に着替えをさせ寝かせる。 「光栄お前が女子をつれてくるとは…葛葉殿にしれたらたいへんだぞ」 意地悪な微笑をし光栄をからかう。 「そんなんじゃありませんよ!」 ついムキになって答えた。 父、賀茂保憲は播磨の国守で希代の陰陽師と京で有名な安倍晴明の兄弟子であり師匠であった。 そして、晴明の娘、葛葉と光栄は許嫁どうしだ。 葛葉はまだ7才であるが… 「ふ~ん…それにしてもお前は女子の肌をみても赤くもならないとは…よほどの幼女趣味だな…」 困ったというふうな仕種をする。 「幼女趣味は認めますが、危機に直面している人を助けるのにいちいち赤面してたら助けられぬでしょう」 「それもそうだが…」 幼女趣味といったのは父に反抗せず肯定して黙らせるために言ったのだが、あながち嘘でもない。 そんな、会話をしていたとき、ピクリと彼女の白い頬が動いた。 そして、ゆっくりと瞬く。 「気付がついたようだな」 保憲も光栄の隣に座り彼女の様子を見守る。 彼女は首を親子にむける。 ーーここは… と言いたいのだろうか?口ぱくだけで、声がでていない。 そのことに自分でも気付き驚いたように大きな瞳をさらに見開き、咽を押さえて声を出すように口を動かす。 「声が出なくなってしまったのか?」 「わかったから、落ち着こう」 と父の保憲の方が彼女の背を優しく撫で落ち着かせる。 何もせずに訝しむ光栄を睨む。 「お前、父にこういうことさせてお前は何も慰めの行為をしないのか?」 「あ、そうですね。新たな母上ができてもこまりますしね」 「そう言う問題じゃないだろう!」 と光栄の頭をごつく。 その様子を呆気にとられて見ていた彼女はクスっとわらった。 とても綺麗な微笑で少々親子揃って見とれてしまった。 「光栄顔が赤いぞ」 「父上こそ…」 ひそひそ話す。 だか、どこかでその微笑む方が同じなのをみたことがある。 独特に綺麗な笑みをするだれかににている。 光栄はふぅと無謀な会話と、笑われたことのはずかしさを息を吐きして気を取り直すと、胸から府をとりだす。 「声がでないなら、呪をつかて喋られるようにすればいいですよね」 「……彼女の口に紙を入れるのか?」 「仕方ないでしょう?」 躊躇なく言う。 そんな光栄に女性への態度をおしえさせねばならぬなとおもった。 その呪法はかなり間抜けな格好になる。 口から府が出るのだから… さらさらと、喋られるための呪を書き口をあけるように、ジェスチャーすると口をおろるおそる彼女は開けた。 舌に府を貼ろうとしたとき、府はが弾いた。 「なっ!?」 弾いた府は光栄の手にビシリと音をたてる。 叩かれたように手に府の形がくっついた。 「式返しなようなモノか……?父上?」 保憲の困惑の眼差しを向ける。 鋭い目をして、光栄の手にくっついた呪府を剥がす。 剥がしたところの手は、真っ赤に痕がついた。 「うむ……呪詛返しというよりは…何か神との契約で声を奪われた感じだ」 「神の契約?」 彼女方をみる。 彼女は目を伏せて合わせない。彼女も分かっていることなのだが、声が奪われるとはおもってもいなかったのだろう。 「神との契約?それはいったい……」 光栄は赤く痕のついた手をジッと見つめる。 呪詛かえしをされる様なことはしていない。 ただ、口が聞けるように呪を施そうとしただけだ。 「神との契約はその目標を成し遂げない限り解けないし、粗の契約に他人が関わることはいけないことだ。だから、バチがお前にあたったのだ。」 と保憲はいった。 「ば、バチ……?」 バチ…罰とは神の怒りに触れて痛い目にあうこと。 「ま、女性に対して無情にもあの呪をやろうとするのだからとうぜんでもあるな」 クッと笑う。 「しゃべれないんだから仕方ないではないですか。何も虐めるわけでもないし」 虐めるんだったらもっとバレないようにやりますよ、とは心の中で呟いた。 「それにしても貴女はどのような望みを噛みに誓ったのですか…といっても言えないんだよな」 こくんと、彼女は頷いた。 「それに、それは他人に言えるようなものではないしな。たすけたのも、なにかの縁だ。その契約が成し遂げられるまでここのおられよ。」 ありがとうと言う様に保憲の手を取って頭を下げる。 それから、ジッと光栄の方を見る。 あんまり、女の人に対して親切な態度はとっていないので遠慮しているのだろうか? 気を使わなかった自分に対して少し罪悪感を感じたが、彼女に微笑んでこちらから手をとってやった。 「僕もそれは賛成ですよ。なにか、困ったことがあったらいって下さい」 彼女はジッと光栄の顔をしばらく見ていたのがなんだか、不自然で 「僕の顔になにかついてます?」 「上辺だけの微笑み」 ボソっと保憲が突っ込みを入れる。 それにムッとする。 彼女の手をはなそうとしたとき、彼女から手を握りかえされて父にしたように頭を下げ、また顔をあげると綺麗な笑み。 つい見とれてしまう。 その笑みは確かに誰かに似ているからだ。 「いつまで手を握っているつもりだ?光栄」 「あ、すいません。」 パッと手をはなす。 保憲はニヤっとわらった。 光栄が年頃の女性に顔を赤くしているのが珍しいからだ。 確かにこの時代女を見ることはない。 見たとしても光栄が顔を赤くすることはなかった。 悪霊に憑かれた女性を祓った時、美しき姫ぎみの時だって、仕事の後は冷たくあしらった。 「なんですか?父上?」 父が考えていることが何となく分かったが反論しない。 「いや…そうえいば、あなたの名前がないと不便だな」 「文字はかけるのかな?」 彼女はコクンと頷く。 光栄の手のひらを撮って指で描く。 彼女は手のひらに月海と書いた。 「つきうみ?と読むのか?」 いきなり漢字を書くなんて教養のあるどこぞの姫ぎみかも知れないと思ったが口に出さなかった。 光栄は首をかしげてきくと、月海は少々なぜだか間をおき、こくりと頷いた。 「月読とわだつみ(海神)の力を頂いた名だから助かったのかな?」 その言葉をふと思い光栄は言ってみた、すると彼女は音のでない咳をする。 「ああ喋りすぎたね、安静にした方がいいな、いくぞ光栄」 「ええ、ではゆっくりしてくださいね」 親子二人が出ていった後で、月海はふぅっと息を吐く。 そして、視線を斜上に向けるとこの体の持ち主の女が月海を見下ろす。 声にはでないが、こういう目に見えないのは心の声ではなせるのだ。 『ごめんなさい、体を借りて…』 と誤る。 すると無表情の幽体は首をふる。 『どうせ私は死ぬ気でしたから…その体には用はないのだけど…』 『でもあなたの名は神の力が宿り守られているから死ねなかったというより私と同じ思いの持ち主なのよね…だから、思いと魂が繋がっていてあなたは黄泉へも行けないの。』 『同じ思い?思いが繋がっている?』 『愛しい人と離れたくなかった、わだつみとつくよみに願わなかった?』 『………』 彼女は黙る。 『私はこの時の時代の人じゃないの。もっと未来…から願ってきた。月読みさまの力と私の本来持つ力でね』 『本来持つ力……?』 『私の名は葛葉。さっきの人の許嫁』 続き ジャンル別一覧
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