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2020.06.02
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昼の仕事から帰ると観たいドラマの再放送が始まっていた。
我が家には録画機器がない。歌舞伎町に向かう準備をする。梅おにぎりを作りながら今日も出掛けるギリギリまで観る。
携帯が鳴った。母からである。
「あんた免許持っとらんよね?人轢いたけぇお金振り込んでって電話で言ってきたんじゃけど?あんた家におるん?やっぱり間違いじゃったね。標準語じゃったから詰めが甘いわ」
「うん、人轢いとったら電話せんて逃亡中や」「そっか!」
電話を切った。巷でよく聞くオレオレ詐欺がついに実家に掛かってきた。

半グレと言われる人達か、また暴力団が新しいビジネスを始めたか。上納金集めですか…とテレビを消した。
今までは危ない道に自ら行かなければ避けれていた犯罪もあちらから近づいてくる。
街を浄化すればする程、ターゲットを一般市民に広げそれは比例しているかのように思えた。
そういう人種は一箇所にまとまった方が市民の為だ、繁華街から出ない方が良い。と歌舞伎町に向かう自分を正当化する為に独り言を吐き捨て家を出た。


出勤すると事務所に藤皮さんとスキンヘッドの強面の男性が店長と何やら話をしていた。
口元だけで笑う藤皮さんの笑顔は相変わらず不気味だ。横で周りを警戒しながら浅く座っている舎弟らしきスキンヘッドの男性を見て、この時初めて藤皮さんがいつも浅く座っていた意味がわかった。
やはりこの人達の住む世界は怖い。

藤皮さんが身に付けている物は素人の私が見ても分かりやすいぐらいに更に高級な物に変わっていった。一体どんな仕事をしているのかなんて考えるだけで体に悪い。
一見控えめで大人しくは見える高級時計の存在感がなんとも下品だ。
このお店のケツ持ちはあのスキンヘッドに変わるのだろう。なんとなくそんな気がした。


その後歌舞伎町の街の様子は次々に変わっていった。
喫茶店パリジェンヌ事件をきっかけにかはわからないが、中国人は日本の暴力団を恐れ約100店舗が営業を自粛し警戒し取締りが厳しくなった。
不法滞在をしていた外国人は次々と強制帰国となり、見せしめの為かパリジェンヌ事件の犯人ではない中国人が暴力団により数ヶ所を刺され殺害された。
日本の暴力団が縄張りを占めていた歌舞伎町にとって、中国人や外国人マフィアがのさばることは許し難いものであり、その存在は脅威だったのかもしれないと私は思っていたのだが、この街に詳しいリーさんは「歌舞伎町で中国マフィアの巨大支配勢力などというのは小説のなかだけの話」と述べていた。
どうやら外国人はこの街の先住民を怒らせてしまったらしい。



パリジェンヌ事件。
約20年前に歌舞伎町にある喫茶店パリジェンヌで起きた銃殺事件。話し合いの最中に中国人マフィアが住吉会の暴力団を銃殺した事件。19時台に一般人の前で起きた事もあり衝撃的な事件だった。
日本の暴力団が本気出したり警察も取り締まり出したりてんてこまいになっていった。





この日は店で藤皮さんと過ごしていた。
数年前に中国政府が中国人への観光ビザを発行してから国内外の人で賑わっていた街も少しずつ大人しくなり、この日も歌舞伎町は生き残りを掛けてそれぞれの立場の人間が慌ただしく動いているように思えた。
差別用語とされる「シナ人」発言をしていた石原都知事がついにブチ切れたのか、1000人とも言われる警察官が不法滞在者、風俗店や暴力団の一斉取り締まりに取り掛かり少しずつネオンが姿を消していった。
今日も藤皮さんの横で窓越しに聞こえてくる警察官と外国人女性と思われる激しいやり取りが耳に入り落ち着かない。



常に変化を繰り返し姿を変えながら栄えてきた歌舞伎町というアジア最大の歓楽街。
それが可能だったのは人工的な「かく乱」を起こすことによって生息するものを部分的に破壊しそのバランスを守ってきたからだろう。

「かく乱」は一見災害とも捉えられるが自然界が成り立つ上で必要不可欠であるように、この変化の作用はこの街の先住民を守る上でも必要不可欠だ。
こんなことぐらいでは暴力団は動じないだろう。この街に元々住んでいる生命体である日本の暴力団はカワラノギクのように「かく乱」に対して抵抗力がとても強いうえにちょっとやそっとの事で絶滅することはない。
藤皮さんの態度を見ているとリーさんの言っている意味がわかったような気がした。

歌舞伎町と自然界の生態系バランスは良く似ている。
存続の危機となる存在は根を生やす前に発生する災害によって流され、在来種は生き残ることができる。歴史ある在来種が生き残る為には洪水も根を生やす生命体も排除することも必須だ…。
そうやって世の中は絶妙なバランスを保って成り立っているのだ。
診療所で仲良くなった不法滞在の女の子の事を考えながら複雑になる気持ちに言い聞かせた。
「おい。元々いた奴は住みやすくなるんだぞ」
「わかってます。私も助かっていることも」
「ワカメだって外国に行ったら脅威な邪魔者扱いされるんだから仕方ないだろ」

わかってるってば。
先に縄張りを締めた暴力団とかく乱を起こす警察と遷移を進めようとする外国人。毎日のように起こす生き残りを掛けた争いはこの土地の生態系を保つために必要なことなことはわかっている。
警察による「かく乱」は私達が生き残る為には必要なんだ。
でもかく乱を繰り返すことで強くなった在来生命体であってもその地を離れてしまえば生きていくことはできない。
この街を出たら生きていけない者は一体どれぐらいいるんだろう。新たに何をして生き延びるのか。また新たな負の連鎖を生むような気がした。

「この街の頂点捕獲者って結局警察なんですかね?」
「それは政治家だろが」

「ここでは威張って生きれても、ワカメにでもならない限り外では生きていけないのかもしれないですね」
「あぁ?」
離れて座っていた藤皮さんの殺気が体中に突き刺さる。余計なことを言ってしまった。思わず下を向いて目を閉じた。

亀之助…。

あの日逃してしまったミドリガメが頭をよぎった。 

まきまい



かく乱(撹乱)
説明が難しくて違っているかも。
火山の噴火や洪水、台風、山火事などによって植生が部分的に壊され生態系が変化すること。
破壊された後の地は一見終わっちゃった感があるけど、上記の在来植物などは自分を阻害する植物がそれにより流し消し去られた為生き残れている。
自然の摂理として再生の場となる災害(かく乱)は欠かせない。生命に多様性が出る。こうして生育環境を変えることによって次世代の生命体が移入しやすくなったりもするのでかく乱は必須。
ではなぜ絶滅したり新たに生まれなくなったりするのか。一番の要因は人間の手が加えられてしまうからである。
この「人間の手」とは歌舞伎町では風営法改正や暴対法なのかもしれない。

受け売り高校生物より。





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最終更新日  2020.06.02 22:23:14
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