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カテゴリ:詩小説
ある所に杉や松に混じって 翌檜の木が一本有った そこへ一人の旅人が来て みごとな木々にしばし見とれていたが ふと傍らの翌檜の木に気付いた 旅人は少し考えてから 「翌檜よ なぜお前は翌檜だ」 そう問いかけた しかし翌檜は答えない 「なぜ 杉にならなかった」 そう問いた やはり答えない 「なぜ 松にならなかった」 それでも答えない 旅人は笑った 木が話す訳が無いのにと それでも旅人は面白がって 「なぜ お前は自分自身にならなかった」 翌檜の木がさわさわと揺れた 旅人はその場を静かに立ち去った その旅人を翌檜が見送った その姿が見えなくなっても 翌檜は見詰ていた 何時までも何時までも 翌檜は見詰つづけた 旅人が忘れてからも この地からその旅人が居なくなってからも 翌檜は翌檜のままそこに立っていた お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
December 19, 2005 07:19:22 PM
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