メートル・ド・テル徒然草

2006/06/06(火)01:13

フランス料理「コースの罠」-その2-

フランス料理の文化と歴史(49)

、、、昨日からの続き さて、ここまででも見られるのが、フランス料理の原則とも言える、 ・同じ食材は用いない ・同じような調理法は繰り返さない という手法です。お客様、つまり「食べ手」を飽きさせないテクニックです。その為、フランス料理のコースにおいては、日本料理に見られるような、「~づくし」といったメニュー構成は行われないのが普通です。品数、量を「多く食べさせる」という目的を行うにあたっては、食べ手が次々と興味をそそられるような試行が繰り返されているわけです。  さて、メインディッシュと呼ばれるのが、「肉料理」としての位置付けです。やはり「メイン~」の名が冠せられている以上、コースのここまでの料理は、「メイン」までの導入、つまり、メインディッシュを上手く引き立てるストーリーであったからなのです。  肉料理が、主役=メインであることは、ヨーロッパの人々が古代、狩猟民族であったことにまで遡ると言えるでしょう。「ジビエ」と呼ばれる、狩猟獣においてはその際たるもので、ある意味、自らの狩猟の腕前を披露することに目的があったのでしょう。  いよいよ、次がデザートです。デザートには本来、「片付ける」の意味がありました。その為、現代でもメインディッシュの後に「辛いデザートにしますか?甘いデザートの方がお好みでしょうか?」と問われるレストランも本国フランスではあります。  ここで言う「辛いデザート」とは「チーズ」の事です。チーズは確かに高カロリー、高タンパクの食品なので確かにダイエットを志す方々には「太りそう…」との思いもあるようですが、既にメインディッシュまで食された後ではもう手後れです。(^^;)と、言うよりも、チーズはそのタンパク質から、胃の粘膜を保護する意味もありますので、メインディッシュの後にチーズを食すことは、理にかなっているとも言えます。  続いて本来の「デザート」、お菓子が提供される時間となります。  「デザートは別腹よ」と申されて、ワゴンサービスなどになると、全種類を注文されるお客様もいらっしゃいます。ところが、、、これは当然と言えば当然で、ここにもコースメニューに隠された「罠(?)」が仕掛けられているのです。  実は、案外気付かれないことなのですが、フランス料理、または多くの「西洋料理」と呼ばれる物においては、料理に「砂糖」を加えません。もちろん、ソースや付けあわせなどにフルーツを使用したり、野菜や油脂分の甘味を強調することはあります。しかし、直接、料理に調味料としての「砂糖」は使用しない事が原則でもあります。  料理の間において、「糖」を摂取しないと言うことは、すなわち体内の血糖値の低下に繋がります。そこで最後のデザートにおいては「血糖値」の向上を求める、気付かない生理的な欲求が起こるのです。  ヨーロッパに旅行に訪れられた方々から、「いやぁ~、向こうのデザートは甘い甘い、、、」というお話をよく耳にされたことは無いでしょうか?これこそ、最後に身体が欲する「糖」を求める欲求に対する答えだったのです。 さて、昨今ではダイエットに励む女性の方々も増えてまいりました。これが100年前なら「太っていることは裕福な証拠」でもあったのです。これは、絵画史を見れば一目瞭然で、昔の「女神像」「美人像」は皆ふっくらとした体型を持っています。ふっくらした体型を維持できることが「豊かさ」の象徴でもあったのです。 さて、時は変わって現代は、豊かさの象徴では無くなり、健康面の影響もあってか、やはりスリムな体型が好まれるようになりました。  フランス料理においてもヌ-ヴェル・キュイジーヌの時代を経て「軽さ」が求められるようになりました。   フランスにおけるグランシェフ、ピエール=ガニエール(だったかな?)は「美味しく食べて、太らない料理」を提唱しました。  が、ここにも西洋の料理観が見られます。目的はあくまでも、「美味しく食べる」こと。お腹一杯食べることが大前提の上で、「太らない」を提唱している姿勢が垣間見えます。

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