料理人のための「クリスマス童話」
…例年の事ではありますが、クリスマスはフランス料理店においては大忙しです。 「フランス料理」と言うのは、その料理の性格上、「ミ・ザン・プラス」つまり、仕込みが非常に重要になって来る料理形態でもあると言えます。 つまり、時間を掛けて取った「出し(フォン・ド・ヴォー)」や、切り揃えた大量の野菜などなど、素材をお客様がいざ口に運ばれる際に、一気呵成に構成するというのがフランス料理、ヌーベル・キュイジーヌ以降培われた技法であるとも言えるでしょう。 そのため、クリスマスなどの大きなイベントになると、その仕込みの量は膨大なものになります。一昔前ならクリスマスの前後の1週間で1ヶ月分の売上がある、と言われたものです。 膨大な仕込みをこなすため、仕事は早朝から深夜に及ぶことも度々です。いつもより倍の量のフォン・ド・ヴォーを用意し、ひたすら車海老の皮を剥きます。山と摘まれたジャガイモが全てココットになるのはいつの事でしょう、、、あぁ、、、こんな時にドラえもんがいたらなぁ、、、団塊ジュニア世代の我々がそう思うのも無理はありません。 そんな、ある年のクリスマス、どちらかへ外出していたシェフが古びた小汚い時計を抱えて店に戻って来ました。「シェフ!なんですかその汚い時計は?そんなん店にも飾れませんよぉ。」シェフは答えました。「何を言うとんねん!コレはなぁ、『靴屋の小人』の時計や!ワシが骨董屋で見つけてきてん。」「『靴屋の小人』ってあれですかぁ?眠っている間に小人が時計から現れて、仕事をしてくれるという昔話の?ホンマですかァ?」シェフは少々カチンときた様子です。「ホンマもんやぞ!ちゃんとその筋の人から購入してるンや。この時計さえあればなぁ、眠ってる間に、フォン・ド・ヴォーも、魚の水洗いも、鴨の掃除も仕込みの仕事は全部終わってるちゅうこっちゃ! ささ、みんなぁ、手を止めて寝るぞぉ!!!」その筋がどんな筋か不可解ですが、一同は仕事もそこそこにレストランのホールでテーブルクロスを羽織って眠ることにしました。ZZZZZZ,,,,,,,どのくらい時間が経ったでしょう。これで、フォン・ド・ヴォーも、魚の水洗いも、鴨の掃除も、その他諸々の厄介な仕込みは終わっているはずです。期待に胸を膨らませ、眼をさますと、、、そこには、、、、無数の「コック靴」が!教訓1、他力本願はいけません。2、適材は適所にてその能力を発揮するというものです。Homage to "KAWORUKO"