追いかけっこ。(邪見視点)「邪見さまーぁ」 パタパタと駆け寄ってきた少女に、邪見はげんなりと溜息をついた。 「邪見さま、殺生丸さまは?」 「知らんっ」 ぷい、とそっぽを向いた邪見の顔を、りんが覗きこむ。 「えー、邪見さま知らないの?」 ぐっ、と返答に詰まる。 「ええい、もういい、どこかであそんでいろ!!」 はぁい、と再び駆け出していったりんの姿を見ながら、邪見は大仰な溜息をついた。 なぁんで殺生丸さまは、こんな小娘を連れ歩くのかのー。 空を見ながら呟く。 ・・・でも。 「子供ができたら、こんな感じなのかのー・・・」 口に出して言った瞬間、邪見はハッとした。 一瞬後、ぼっと顔が、火のように赤くなる。同時に、真っ青にも。 いやいや待て待て。 知らんぞ、知らん。 子供なんか嫌い、そう嫌いじゃぞ!! 必死に呟く。 そうとも、子供なんか出来ても絶対に面倒なんか・・・! そんな心の声に追い討ちをかけるように、すぐそばで明るい声がした。 「邪見さま、変なカオーっ」 バッと顔を上げると、目の前にはりんの顔。 声にならない悲鳴を上げた邪見に、りんは満面の笑みを見せた。 「り、りんっ!ななな・・・っ」 「今日の邪見さまへーんっ」 きゃはは、と笑いながら走り出したりんを、邪見は思わず追いかけた。 「こりゃ、りんー!!」 「きゃー、邪見さまと追いかけっこーっ!」 「待たんか、りーんっ!!」 邪見は、いつものようにりんを追いかけながら。 ひっそりと、子供も悪くないかもしれないと思い、再びそれをかき消したのは、また別の話。 |