カテゴリ:映画
本日5本目、最後の日記。
『おとうと』 (1/30~:TOHOシネマズファボーレ富山、TOHOシネマズ高岡) 公式サイト:http://www.ototo-movie.jp/ オープニング。小春役の蒼井優さんのナレーションで時代背景や設定が説明されます。 小百合さん演じる吟子と鶴瓶師匠演じる鉄郎がなぜ姉弟なのかが分かります。 1970年を「寅さんという変なスターが生まれた頃」なんて言いながら懐かしい映像が。 別のカットでは『柴又慕情』のワンシーンが使われていました。 その時のマドンナは小百合さんなんです。山田洋次監督作品ならではの粋な計らいです。 エンドロールの最後に「市川崑監督『おとうと』に捧ぐ」とありました。 その『おとうと』へのオマージュとなっているシーンは確かにありました。 終盤、「あ~、ここでその手を使うか~」と思うシーン連発。 僕は市川監督の『おとうと』は観ていないのですが、 『寅次郎純情詩集』の同時上映でリメイクされた『おとうと』は観たんです。 姉役が浅茅陽子さんで、弟役は郷ひろみさんでした。 小学生の頃に観たきりでしたが、意外と大事なシーンは覚えていました。 最近は観たそばからタイトルから中身から忘れてしまうことも多いのですが、 子供の頃の記憶力の方が優れているということなのか、 今は次から次へと観すぎ(今年も既に18本)だからなのか…。 でも、こういうことがあると、何でも観ておくもんだと思います。 市川監督作品へのオマージュもありましたが、それだけではなく、 山田監督の“セルフオマージュ”とでも言うべき演出が散りばめられていました。 映画の入り口を『男はつらいよ』だと思っている僕が満足しないはずがないです。 僕が思うところの、「とことんまで日本映画らしい」日本映画でした。 東京都大田区は石川台。 早くに夫を亡くした後、小さな薬局を営み、一人娘の小春を育ててきた吟子。 小春はエリート医師と結婚することになり、高野家は幸せな雰囲気に包まれる。 が、音信不通だった鉄郎が突然、小春の結婚式に現れた。鉄郎は小春の名付け親なのだ。 以前も吟子の夫の十三回忌で、酔っ払い大暴れした鉄郎。 今日は一滴も飲まないと約束するが…。(※これ、ほんの導入部ですよ) 寅さんは突然帰ってきて、妹のさくらのお見合いを台無しにした。 鉄郎は酔っ払って、姪の小春の結婚式を台無しにした。 寅さんは揉め事を起こしては旅に出たが、鉄郎は大阪に帰っていった。 寅さんは兄さんだから、迷惑をかけたことを自覚して少し格好をつけて出て行くが、 鉄郎は弟なので姉に甘えまくっている…。 本当は比較する必要もないのでしょうが、そういうことを考えずに観ることは出来ません。 薬局の奥に和室の居間があって、テーブルを映すカメラの位置が低い。 その居間から奥の庭で洗濯物を取り込んでいる吟子。 これは山田監督というよりは、古き良き日本映画の構図の作り方ですよね。 こういう生活感の描き方は、今どきの日本映画にはないように思います。 が、この雰囲気が良いんです。日本人なら感じ続けていたい空気が流れています。 田舎じゃなくて東京でも…というところが大事です。 キャストの豪華さは言うまでもないですね。 小百合さんと鶴瓶師匠の他は、笹野高史さんら山田洋次作品ではお馴染みの顔に加え、 蒼井優さん、加瀬亮さん、そして、なんと中居正広さんが 大阪の施設をやり繰りしている夫婦を演じているのが小日向文世さんと石田ゆり子さん。 『サヨナライツカ』のゆり子さんも“婚前交渉を許さない”という点で彼女らしい役でしたが、 今回の爽やかで優しい女性も彼女にピッタリです。 今回はそういう役じゃないんですけど、 家に帰ったときに白いエプロン姿で「おかえり」って言われたい女優No.1です。 (スイマセン、アホで) 他にも配役の面白さはいろいろとあるのですが、 もちろん、本当に描いているのはそんなことではありません。 山田洋次監督が描き続けてきた「日本人の情」がここにもありました。 「情け」ではなく「情」です。 いや、僕も深いところまで分かっている訳ではないのですが…。 鉄郎は何故に、あんなにも非常識なのか? それに関してはここでは書きません 大多数の人たちが味わうような「普通の幸せ」とは程遠い人たちが、いつの時代にもいる。 そして、山田監督はその世界にも光を当てていきます。 いわゆる「普通(難しく考えないでね)の幸せ」じゃないかもしれないけど、 どんな生活環境の中にも、いろんな形で幸せや悲しみがあることを教えてくれます。 本当はもっともっと書きたいことがあるけど、あとは映画館でご覧下さい。 恐らく映画館には年配の方が多くいらっしゃるでしょうが、若い方にもご覧頂きたいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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