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牧内直哉≧仁楽斎の「フリートークは人生の切り売り」

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2013年05月28日
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カテゴリ:映画
『くちづけ』
(5/25~:TOHOシネマズファボーレ富山)
公式サイト:http://www.kuchizuke-movie.com/

かつて『長万部くん』というヒット作を飛ばした漫画家の愛情いっぽんが、
30歳になる知的障害のある娘マコを連れて、埼玉県北にある「ひまわり荘」にやってきた。
「ひまわり荘」は知的障害者が集団で暮らすグループホーム。
マコはそこで出会った男性うーやんに結婚を申し込まれ、マコもそれを承諾したが・・・。

***********************************************************************

うーやんを演じる宅間孝行さんが主宰していた劇団「東京セレソンデラックス」の舞台を、
堤幸彦監督が映画化しました。映画ですが、演劇的な部分がたくさんありました。
まず、物語は「ひまわり荘」の中だけで展開していきます。
あと、ハッキリとは分かりませんが、ワンカットを長く撮っていたのではないでしょうか。

宅間さんは舞台と同じ役を演じているので、当然といえば当然ですが、
愛情いっぽん先生役の竹中直人さんや、マコ役の貫地谷しほりさん、
その他のキャストの皆さんも、どこか演技が演劇的で、特に導入部はそうでした。
そして、カメラアングルも演劇的であることを多分に意識していたように思います。

この撮り方は必然的に俳優の技量が問われるはずですが、皆さん素晴らしかったです。
そうですね、話題先行的なキャスティングをされた人がいませんものね。
特に貫地谷さん演じるマコの優しい雰囲気の出し方は素敵でした。

ただ、映画らしさを感じるシーンもあったのですが、
全体的に少し「演劇的」に拘りすぎていたかな・・・という印象も受けました。
映画と演劇って、台詞や動きやテンションや演出におけるリアリズムが違うんですよね。
でも、それでも僕は、こういうタイプの映画、好きですよ。

さて、物語はおおまかに言ってしまうと「とても悲しい話」でした。
でも、余韻はそんなに悲劇じゃない。そこがこの映画の魅力です。
ホノボノとしたおかしさも随所に散りばめられています。
個性的な入居者たちの行動や言葉に素直に笑いました。

物事を表面的に捉えている人は「知的障害者の行動で笑うなんて不謹慎だ」
と、不快に思われるかもしれませんが、僕はそうじゃないと思うんです。
障害のある人とない人が一緒に暮らすというのは、こういうことなんじゃないですかね。

とはいえ、現実は厳しいし、実際には簡単には理解されない世界です。
僕だって、分かったようなこと言ってますが、実は何も分かってません。
無理解による偏見を全く持っていないといえば嘘になります。

その点で一番共感したのは、大酒飲みで口の悪いスタッフの袴田さんの台詞でした。
最初は「この人、ちょっと感じ悪いな・・・」とも思ったのですが・・・。
これは観る人の置かれている環境によって違ってくるのかもしれません。

一方、愛情いっぽんの最後の行動は、理解できるけど納得はできないわけで・・・。
だんだんと自分の身体が弱っていく中で、知的障害のある娘を抱えた父親の不安と苦悩。
それは当事者でなければ分からないことなのかもしれませんが、
それでも、他にも方法があったんじゃないかな・・・と思ったりもするわけです。

なんだかんだで、僕が感情移入していたのはいっぽん先生でした。
共感したのは袴田さん、感情移入したのはいっぽん先生ということです。







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最終更新日  2013年05月28日 17時37分45秒
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