青山潤『アフリカにょろり旅』講談社文庫、2009
職場の隣の席の方が、「聞いたことのある国のことが、書いてありましたよ」と、標題の本を貸してくれました。東京大学で、うなぎの研究をされている方の書かれたエッセイです。 文庫本の解説によれば、 東大海洋研によるニホンウナギの産卵場の特定は、 第二次世界大戦以降、シーラカンスの発見に次ぐ 海洋生物学上の大発見なのだとか。現在地球上に生息するウナギ全十八種類を採集すべく、最後の1種、アフリカに生息するラビアータというウナギを「安全かつ確実に採集し、帰国する」まで、「冒険を求めていないのに、どんどん冒険に陥っている」過程が描かれています。読みながら寝てしまった昨日、今日は、不自然な体勢で寝てしまったための首痛や頭痛だけでなく、夢の中で、私まで、目標が明確ではない何かを探して求めてしまい、もやもやした目覚めでしたエッセイの中に出てくるドマシに2年間暮らし、ゾンバは私のたんぱく質供給源でした。モンキーベイへの道のり、うなぎを採集したリウォンデなど馴染みの深い地名、描かれている景色、温度、風、肌にまとわりつくような湿っぽさ、そしてマラウイアンたちの笑顔を、体で思い出すことができたため、引き込まれ、私も夢の中で何かを探してしまったのかもしれません協力隊を終えて、大学院に進学した筆者は、「何も作りだせない生態学研究」への苛立ちを感じていたと言います。 ウナギの進化がわかったからといって何の役に立つというのだ。もっと人の役に立つこと、他にやるべきことがあるのではないか、と自問自答していた。【指導教官の講演を聞いた】子どもが目をキラキラ輝かせ、「面白かったね。ウナギはすごい所まで泳いで行くんだね。不思議だね」と話すのを聞き、その時私は、初めて生態学研究が何も作りださないのではなく、自分自身が作り出したものを料理できないだけだったことに気がついた。(そうか、俺が未熟なだけだったんだ) 一見なんの役にも立たないようだが、研究活動は立派に人々の心の糧を作り出していたのである。 思えば、アンデスの友人たちも夜空を見上げて、星の不思議について語り合っていた。たとえ貧しくとも、人が人である限り、知的好奇心は心の栄養になっていることを知った。そして私は、博士課程への進学を決意したのだった。(102~104頁)「誰がなんと言おうと、いつの時代にも、どんな世界にも、やっぱり冒険は必要だよ。それもわくわくするようなスケールの大きな冒険が必要だと思うよ」 この航海も冒険なんだ。何ら成果を得られなくても、人間の根元的な部分を魅了する何かがあるんだ。だからこそ、沢山の人たちが興味を持ってくれる。グダグダ言われたっていいじゃないか。「冒険」ができるからこそ、おれはここにいるんだ。この仕事をしているんだった(320頁)作者たちの、目的をもって世界をはいずりまわれるお仕事が、かなりうらやましいですけれど実際には、彼らの地道な作業は、軟弱な私には耐えられないでしょう協力隊、研究者、アフリカ、旅・・・いろんな魅力のつまったエッセイでした。今日もぽちっと応援ありがとうございます