カテゴリ:音楽と音楽ビジネスに関するニュース、雑感
80年代から90年代初めにかけて濫発されたCD~夏の掃除にて
今日は多くあるCDを整理しました。きっかけは埃の掃除です。 毎年夏になるとこうして少しずつ身の回りを整頓し、わずかでもスペースを広げること、いらないものは思い切って寄付するなどして、使いたい人、必要な人の手に渡すことを考えてここ数年プロジェクトのようにしてやってきました。 日ごろ多くのわだかまりを抱えていても、こうして整頓をしていると、頭の仲間ですっきり掃除されたような気になれるので、いわゆるセラピー的効果があります。 それにしても今日手にとって見たCDの数々にはその時代の価値観、経済状況、音楽界の政治状況が反映しており昔に戻った錯覚を覚え懐かしい思いがしました。 1999年ごろだったかと思いますが、UKの音楽業界の方が「CD業界は80年代から90年代初めにかけて将来を考えずに、とにかくなんでもディスクにしてしまおう、という商売のやり方で、結局業界全体が自滅状態になってしまった。安易に制作されたCDが値崩れや供給過剰を招いて業界に不況が訪れた。」とおっしゃっていました。 その80年代に乱発されたCDの数々の中には、確かに専門家のおっしゃるように目的意識ゼロで制作されたものが沢山ある事が今日改めて分かりました。 私自身、当時クラシック専門のタワーレコードに行き、毎週出版されたCDや宣伝用のポスターを見ては「こんなに沢山の種類のCDがある」と思いつつも「それにしても一体買う人がいるのだろうか?」といつも疑問に思っていました。 当然のことながら、タワーレコードのクラシック専門店は閉鎖、移転先の1階の隅のコーナーで細々とディスクが売られる状態になりました。 その次にタワーレコード自体の倒産。現在ではオンラインショップのみとなっています。 昔のお店はFYEに取って代わられ、クラシックコーナーは更に縮小されています。 フィラデルフィア管の夏の演奏会は屋外のマンセンターで昔は8回ありました。 午前中に息子を連れてリハーサルを聞きにいき、屋外の鳥達の声と共に聞いたジョシュア・ベル氏のサンサーンスの協奏曲やさっそうとバイクに革ジャンで現れたナージャ・サレルノ=ソネンバーグさんのブルッフの協奏曲が懐かしく思い出されます。 しかし現在は3回ほどになり、しかもポップス系の歌手を招いてそのバックを名門オーケストラが演奏するというかたちでなんとか聴衆を募ろうとしているようです。 クラシック音楽の衰退はアメリカの教育の崩壊と共に起こっています。 教育システムに資金がなくなってきたために音楽や美術の時間が削られ、全くクラシック音楽を知らずに育った子供達が現在既に大人になって家庭を持つ年齢になっています。もしも親が音楽を知っている場合には大変幸運ですが、そうでないケースが多く、「ピアノ」や「ヴィオラ」を「パイアノ」「ヴァイオラ」と何度も発音する父兄に出会ったことが何度かありました。 教育を立て直すのには崩壊した期間を上回る回復期を要します。アメリカ人の友人によると1975年生まれ意向の世代は、教育の変化によって全く違った価値観で育った人々だそうで、教育内容もかなり薄められ、とにかく毎日が楽しくなければならない、という環境で育ったのだそうです。 75年から現在まで37年間も経っているということは、今後昔のようなインテリジェンスが戻ってくるのには今から始めて40年はかかるということでしょうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
August 13, 2012 12:13:51 AM
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