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カテゴリ:BOOKS
いよいよ「レビュー」ですが、肩の力を抜くのに、思いのほか時間がかかりました。

小説版『CRIMSON ROOM』パイロット版 TAKAGIZM モニター当選
クリムゾン・ルーム/高木敏光著

サンマーク出版より 4月202日発刊(予定)
   『クリムゾン・ルーム』 高木敏光著


 抒情的な小説でもなければ、かつてあって今なお脈々と受け継がれた手法での「私小説」でもなく、と、これはもちろん大抵の方が予測できるでしょうが、かといって「私」が全くないわけでもないらしい、といったもので、ここは少し意外でした。

つまり、そこはそれ、フィクションですから、「創り物=作り物」として読もうとしても、「実在」のクリエイターである著者の「私(ワタクシ)」との重なりを否応なしに想像させる部分も若干あって、その境界やらつづれ織り部分が読者の興味をそそる創りなので、それを安易に披露するレビューになってはいけないだろうし、思いがけない展開などは、もちろん、レビューとして書くべきではないだろうし・・・と考えると、気を持たせてこそ成功の、推理小説のレビューの数倍も難しく感じました。

この小説を読み終えて、ゲーム音痴の私が何の構えもなく、ごく自然にゲーム「クリムゾン・ルーム」という密室へ入ってみる気になったという意味では、「解く」推理小説の面白さも十分兼ね備えているので、これまた、安易に内容には触れられません。


印象・・・神林長平に良く似た世界と。

それがどんなに良い意味でも「誰それに似ている」と、敢えて言われたい創り手はいないと思いますが、それを承知のうえでの失礼を許して頂けるなら、
小説「クリムゾン・ルーム」、一番最初に数ページをパラパラと拾い読みして「案外アタリ」と感じたのは、「神林長平」の書いたものにどことなく似ているように感じたからです。

超粘着質な京極夏彦は、私のダイダイ大好きな作家ですが、その京極夏彦とは対極にありそうな「神林長平」---
負うた子に教えられの言葉通り、私の前に息子の手でドンと積まれた神林長平のその世界に、私はいつしか夢中になりました。
でも、神林を良く知ると、彼:神林長平はフィリップ・K・ディックの影響を受けていると臆面もなく言ってのけて、私はそのディックが大好きで、息子は私の本箱を覗いて
「結局、母の影響もありか・・・まぁ、いいけど」
とちょっとだけ心外そうにし、私は密かにほくそ笑んで---

そのような「我が家事情」からすると、「神林長平の世界にちょっと似ているかも」と言えば、大いなる讃辞です。
なので、最初の印象に「神林」を持ち出したことは許していただきたいのですが、読み終えてみると、やはり誰かと比べたのは失礼だったと素直に思える「高木敏光」の世界が、「赤い本」の中には、ありました。

おおらかさと遊び心で、まずは周囲をいったん丸ごと受け入れて安心させ、その上で「あなたとも君とも違う私」を、相手の興味を引き出す程度の「違和感」という形で提示してゆく、そのような[やり方]が、とことん身についた、あるいは生まれ持ってその素養のある人だけが書ける、描ける世界があります。
これは成功するクリエイターに欠かせぬ素養かもしれません。
そして、高木敏光氏、前述のような[やり方]が、どうやらとてもうまい作家のようです。
これは先入観だけではなく、確かに「北海道」に生まれ育った人が書いた本だと思えました。
しかも、多分、「優しくあること」に、とても生真面目な男性。


リムゾン・ルーム、抒情的ではないと最初に書いたとおり、確かに、多分男性諸氏がお好きなハードボイルド小説や都会的なクールさを意識して、抒情的な部分を排除しようとした意図を感じます。
が、読み進めるうちに、これは良い意味で裏切られていきます。
甘く抒情的に、しかも中途半端にゆるゆると盛り上がってダラリと消化不良に終わるという類ではなく、あくまでも、現実離れした成功譚を一方的に聞かされているのかと思ったのに、いつしか情緒的な部分での心地よい甘さに浸らせてくれているという、そのような「裏切り」です。
実際、舞台となっている札幌は、この小説の雰囲気を伝えるにふさわしい、冷たすぎはしないけれど適度に都会的な「こじゃれた」街です。
読み手を苦しくさせない適度な懊悩を、洒脱さを忘れずにサラリと書いたかと思えば、ふと漏れ聞こえるBGMはJAZZやブルースではなく、意外なことに「艶歌」であったりという、例えるとそんなイメイジ。
全編を通して、いくつもの気付かない程の小さな「ズレ」の配置によるコラージュ。

几帳面に方眼状に割り振られた中心街のアドレスの中、そこだけモザイクを無理やりはめ込んだような小さな袋小路になった一角や、こじゃれた札幌の中にあってどことなく「色」が違って見える、ある「区」などの、舞台への嵌め方は、地元札幌を知る者には特に「絶妙」と感じる部分でした。

お洒落なのに浮つかず、脂身を上手に剥ぎとったような生活感もあって小市民的、かと思えば独特の「業界」バナシや裏社会も、境界線にギリギリのフォーカスをかけてチラリと見せて。
なので、ページを繰る手を止めさせない、でもハラハラドキドキとは大いに異なり、それでいて、読み終えた時に、読者は大きな安堵と達成感。
決してページ数が少なくない小説ですが、久し振りに一気に最後まで読まされてしまいました。

もちろん、読み終えてすぐにPC画面へ向かい、私も深紅の部屋に自らを閉じ込めて、いまだ、私は赤い壁に囲まれた密室の中。
ここで見つけた小さな赤い箱に、あなたは一体、私の何を隠したのか。
と、もう少し・・・もう少しマゾヒズムに酔ってみて、どうしても喉の乾きに我慢がならなくなったら、攻略サイトを一人ふらふらと彷徨ってみます(笑)

まだまだ引出しがたくさんありそうな高木敏光氏、筆も遅くなさそうだし、たいへん楽しみな作家の登場です。


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あはは、気合い、入りすぎ!?

PS. 校正者への業務連絡:2ページ10行目、×そこには・・・填まって

初回更新日時 2008/03/19 7:03:07AM





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最終更新日  2008/03/23 02:56:10 AM
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