ウンとかスンとか mamatamの日記

2022/02/10(木)17:24

川瀬七緒著「フォークロアの鍵」を読みました

読書(44)

川瀬七緒さん、最近気に入っている作家さんなのですが、この方、肩書きが作家、デザイナーとなっていて、文化服装学院出身、子供服メーカーのデザイナーを経てフリーとなり、今もデザインを手がけているという異色の作家です。 この「フォークロアの鍵」は最新作ではなくて読みそびれていた作品で、ようやく読めました。 と言っても読んだのも最近ではなく、ほんの少しですが、前のこと。 ミステリーです。 探偵役の1人は、民俗学を研究する大学院生、千夏です。 雑駁で図太そうに振る舞うけれど心の中は繊細で柔らかくやさしい女性です。 口伝で伝わる口頭伝承の研究のためグループホーム風紋の里に通い始めます。 ここでは揃いも揃って問題行動ばかりする認知症の老人ばかりが暮らしています。 千夏は、その老人たちと日常的に触れ合うなかで、理性や記憶が失われても消えない記憶を調査したいと思っています。 老人たちは皆こだわりが強く、彼らの問題行動のおおもともそこにあるのですが、中でも「くのいち」というあだ名をつけられているルリ子さんは、晴れた日の夕方になるとホームから脱走しようとする、一番油断のならない入居者です。 彼女とはほぼ全くコミュニケーションが取れず会話が成立しないと言われていますが、千夏は彼女の発する切れ切れの言葉の中の「おろんくち」という言葉に引っ掛かりを感じて調査を始めます。 調査を進める中でもう1人の探偵役の少年、大地に出逢います。 大地は、母親主導の家庭で育ち、全て母の決めた通りに歩んできた高校2年生。大学附属の難関私立高に補欠で滑り込んだものの、あまりにアクの強い自己中心的な母親に心身を病み、高校をドロップアウトする瀬戸際にいる少年です。 大地が大好きだった祖母から「おろんくち」という言葉の出てくる怖い話を聞いたという記憶を頼りに、千夏と大地は調査を始めます。 千夏はその一方で風紋の里の老人たちからも聞き取りを行っており、その中で問題行動を引き起こしてばかりいた老人たちが、少しずつ変わっていきます。 自分の世界にこだわり、妄想にとらわれて、それ以外の物事には一切関心を持たず、問題行動を引き起こしてばかりいるので、コミュニケーションを取るのも困難と思われていた老人たちが、自発的に千夏の調査に協力するようになったのです。 老人たちの協力もあって、ルリ子さんが発する「おろんくち」、「がらんど」の言葉の意味が解き明かされ、彼女がなぜ晴れた日の夕方になると外へ逃げ出そうとするのか、その理由もわかってきました。それは民話とは関係のない、今現在起こっているおぞましい事件の解決につながることでした。 ルリ子さんも、自分の世界にしか興味のない人ではなかったということがわかります。 この作品の結末の意外さには本当に驚かされました。 それまであちこちに散りばめられ、何となく違和感のあった伏線が全て回収され、最後は「いや〜〜すっきりした!」の一言でありました。

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