|
テーマ:伝統芸能(29)
カテゴリ:文楽
全くいつまで引っ張るのか、本当にごめんなさい。
夏祭浪花鑑は、有名な定番の狂言なので上演される機会の多い演目です。わたしも鑑賞は何度目かです。 今回は釣船三婦内の段と長町裏の段の2段だけの上演でした。 釣船三婦内の段では、お辰という侠客の女房が三婦(サブ、老侠客)に、恩のある人の息子を預けたいが間違いがあっては恩人に申し訳ないのでやめる(この息子が絵に描いたようなアホボン、片やお辰さんは極めつけの美人なのです)と言われ、それでは夫の顔を潰すことになるし、自分の気もすまないと、焼けた鉄弓(魚を焼く道具)を自ら顔に押し当て美しい顔を傷つけて、これなら心配ないでしょう!と意地を見せる場面がひとつのクライマックスになっています。 そして長町裏の段では、一途で正義感の強い団七九郎兵衛が、腹黒く強欲な舅の義平次に連れ去られた娘を助けに駆けつけ、金で義平次を釣って娘を取り返したものの、実は金など持っていないとばれて、ネチネチといたぶられ、殴られて、とうとう義平次を殺してしまいます。義平次は団七の女房お梶の父親ですが、この時代、たとえ義理であろうと親殺しは重罪(死罪)です。そのため義平次は、団七がやり返せないのを良いことに、言いたい放題、やりたい放題するのです。 ところが揉み合ううち、団七の刀の鞘が外れて義平次を傷つけてしまいます。大騒ぎする義平次に辟易し、もはやこれまでと団七は義平次を殺して池に投げ込みます。団七が井戸の水で体を洗い身なりを整えていると、「ちょうさ ようさ ちょうさ ようさ」と賑やかな掛け声が聞こえ、お神輿を担いだ若者達がやってきて、ジリジリと追いたてるようなだんじり囃子も聞こえてきます。その賑わいに紛れて団七は逃げ出します。 太夫さんの絞り出すような「悪い人でも舅は親。南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏」の義太夫に胸がギュッとなります。 二つの段を通じて、舞台に流れるのが地車(だんじり)囃子です。 遠くから微かに聞こえるのんびりしたお囃子、掛け声と共に近づいてくるお囃子、舅殺しに慄く団七の胸中を表すかのようにテンポも音量も高まってくるお囃子など、いろいろな場面をさまざまな表情のだんじり囃子が盛り上げます。 今回の公演は、若手や中堅の演者さん達を中心に配役がされていて、人形遣い、太夫、三味線方それぞれの部門で、あら、この方こんな役をつけていただけるようになられたのねって思う方がたくさんいらっしゃいました。中堅の方でも、女役が多かった人形遣いさんが伊達男を遣っていらしたりして、成長された事や成長していこうとされている事をひしひしと感じた公演で、皆さんよく頑張って来られたわねえと思ったり、でも、頑張るところがまだまだたくさんあるわねえと思ったり、忙しい事でした。 気分はお母さんになったり、おばあちゃんになったり、これまた忙しい事でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[文楽] カテゴリの最新記事
|