診療所の女官から「呼び出しをくらってしまった」猫猫。薬を作っているのがバレたが、そのことは問題にされず。
「わざわざお目付け役まで」
玉葉妃は、侍女・桜花(インファ)を同行させる。(猫猫を心配してのことだろう。優しいし、賢いと思うのだが)
昨日とは打って変わり、恭しく猫猫に接する女官。
「貴妃のところの方とは、露知らずに」
「お呼びだてしたのは、頼みたいことがあるからでして」
「水晶宮の下女に、薬を作っていただきたいのです」
「それがどういうことか、わかってるの?!医官以外が薬を作っていると、もし表沙汰になったら」
大問題。ただでは済まない。なので激怒する桜花。
「重々承知しております」
ひとまず、どんな事情があるのか尋ねる猫猫。
顔なじみの下女が体調不良になり
「妙な咳まで出るようになって」
休みを取るよう言ったが、彼女はもう半月、姿を現していない。
<水晶宮の悪いところだ。(侍女頭に休みがほしいと)
願い出たところで、無視された可能性が高い>
<妙な咳か…もし感染するものなら、放っておけない。
水晶宮だけで終わらない問題だ>
「こういうの、気になる性格なのはわかるけど、ちゃんとお伺いは立てなさいね。突っ走るのは、良くない癖よ」
猫猫を思いやるインファ。仲間意識。
トカゲの尻尾だけ・・・やめて!
結核じゃないの?!
水晶宮。
物置に病の侍女が隔離されているか。
気弱な(気弱すぎる)医者に付き添う女性は・・・
「今日は香をつけていらっしゃるんですね、杏(シン)様」
水晶宮の侍女頭・杏(シン)が驚く。
「あなた、あの時の!」
二人が話している隙に、医者が物置に急ぐ!
「待ちなさい!」しかし、猫猫が腕を掴んで阻止。
医者が物置を開けると、中に女性が横たわっている。
やはり。
「どうしてこんな扱いを?」
「確かに、感染力は低いですが、これは移る病です。
でも、このような処置を続けていたら、死に至ります」
「もちろん、下女一人の死など、些細な問題でしょうが」
ゴザに寝かせるなんて・・・酷すぎる。
「梨花妃が病に伏せていた時のことです。病人の臭いを
ごまかすように、香が焚かれていました」
話がだいぶ前のことに戻る!伏線だった。
「今度はまるで逆だと感じたのです。香の匂いをごまかすために、病人が置かれているようだと」
行李の中に香油の瓶がいくつも。
「先日禁止となった、キャラバンの交易品がこんなに」
「一つ一つは小さな毒でも、それが混ざればどうなることか。杏様、堕胎剤を作ろうだなんて、どういうおつもりですか」
悪巧みがバレた。
猫猫、ぽっくり下駄みたいなものを履いていたから、
いつもより身長があったのだな。
高順が猫猫に着替えをもってきてくれた。
「病人を看護した服で歩いて、病が広がってはいけませんから」
さすが、衛生意識がちゃんとある。
<黙秘ですか・・・壬氏様に問われてもこの態度とは>
相当、気が強いね。
杏は梨花妃の従姉妹。
「実にお優しい。わざわざ端女(はしため)の容体を見に来てくださるなんて。それなら体に香油の匂いが残っていても、おかしくありませんね。以前は、香油の匂いなどしなかった杏様でも」
しらを切る杏だったが、途端に表情が変わる。
<これ以上、出過ぎてはいけない。わかっているが…腹の立つことはあるものだ>
もう一歩、踏み込まずにいられない。
「今日の杏様は、この香油と同じ匂いがします」
さらに、もう一歩。もう止まらない。
「念のため、確かめさせてもらえませんか」
杏に接近する猫猫だが「触るな!」抵抗され、顔を引っ掛かれる。血が出る!
黙って見ていた梨花妃が、口を開く。
やはりご懐妊。
<どうりでろくな侍女がいないはずだ>
侍女頭・杏によって、質の悪い侍女ばかり集められていた!
「あなたは一度も私のことを、妃扱いしてくれなったわよね 国母として相応しくない、そう思っていたんでしょう。あなたと私、どちらが妃になるか、最後までわからなかったものね」
杏に対して、ずっと不快感を抱いていた妃。心に留めていた気持ちを、これを機に吐露。
「勉強も作法も、私の方ができた!他にもいっぱい、あなたよりも私の方が優れてるのに!」
美人だしね。でも
<胸の大きさが、いや、妃としての器が違いすぎる>
<梨と杏(あんず)、揃えられたような名で、生まれも
教養もある。それでも、感情に支配され間違いを犯す愚かな人間は、ごまんといる>
精神性がどうなのか である。
「私はただ、国母という立場を愛しているように見えましたので。梨花様と違って」
「そんなふうに思っていたのね。杏」
平手打ち!
「この侍女頭は、主に暴言を吐きました。私が手を出してしまうほどに。よって、この者を解雇します」
困惑の壬氏に「平手では足りませんか?ならこちらで」
拳を握る。
<やるなぁ、もう昔の梨花様じゃない>
「今後一切、後宮への立ち入りを禁じてください」
<厚情ある甘い処理だが、この女には十分な屈辱だろう>
本来なら、重罪のはず・・・妃が情けをかけた。
壬氏が猫猫に、ハンカチーフを「使え」
優しいね。
<こんな上等な絹に血を付けるのはなぁ>
ティッシュのない時代だからなぁ。こういう時、不便ね。
「杏様はなぜ、香油が堕胎剤になることを知っていたのでしょう?それも、キャラバンが持ち込んだ交易品が」
「問い質したところで、口を割るかどうかはわからんが」
厳しく問い詰めないのか?
<薬屋、ひとつ訊いてもいいか。この後宮の中に、香油が堕胎剤となることを吹き込んだ人物がいると?>
<わかりません。ですが、用心するのに越したことはないかと>
謎は残ったまま・・・まだまだ引っ張る!
帝は、猫猫に対して何か思うことがある・・・?
毅然とした態度の梨花妃が、カッコよかった。
人として扱われない、下女の悲しさよ・・・。理不尽なことを、冷静に捉えている猫猫。
彼女は、下女をモノ扱いする・わざと低レベルの侍女を
集める そんな杏の下劣さが許せなかった。