松本清張 黒革の手帖(2004) 最終話 感想3
橋田は長谷川の勧めでロダンを買う羽目になったが、買い手が見つかり喜ぶ。彼の事務所で、売買の手続きが行われる。現金 2億2千万円・・・普通、振り込むだろう!新しいオーナーとして、颯爽と現れた元子。これまでの試練を感じさせない、凛とした佇まいだ。(着物も、それを着こなす米倉も美しい)彼女は会社を興し、その名でロダンを買う手法を用いた。まさかの展開に、顔が引きつる橋田。「契約はなかったことにしてくれ」捺印したから無理。「お前…借金はどうした?」「そんなもの とっくよぉ」いいね。どうにか片付けたという、裏事情はなかったかのように振る舞う。「そんなにロダンを渡したくなかったら、私からお買いになる?4億でいかが?」嫌味たっぷり。元子は波子に、店の所有者が自分に変わったと告げる。「私も血を流してるのよ」ここまで来るのに、身も心も傷ついた。「私、ほんまにあんたが大っ嫌いや。初めておうた時から、大っ嫌いやった」初対面の時から!懐いた振りしていたのか。「私だけやない。あんたは誰からも好かれへんわ」元子の心にグサッと刺さる言葉ね。「あんた借金 どないなったん?会長と寝て、チャラにしてもろうたんか?」「あなたも、それだけで世の中を渡っていこうとしてるんだったら、自分を擦り減らすだけよ」「どんなに私がこの店を、どんな思いをしてこの店を手に入れたか!」橋田に騙され、長谷川に追い詰められ、安島と別れ、流産も・・・と辛酸をなめてきたからね。<この店が、昔のように私を満たしてくれることはもうないかもしれない。でも、私はここで生きていくしかない>紆余曲折を経て、若いのに老成してしまった感。ロダンのママに復帰した元子を、従業員たちが歓迎する。あれ?!`ママを信じられなくなった´と怒って店を辞めたホステスが、笑顔で花束を渡す。どうなっているの?!波子が警察へ行き、元子を調べてほしいと訴える。実は彼女、元子と出会い泊めてもらった時に、こっそり黒革の手帖を見ていたのだ。(勝手に人のものを…悪習、下劣)元子が東林銀行で不正を働き、入手した情報で恐喝をしたに違いない! と熱弁。夜の銀座を歩く元子に、パトカーが近づいてくる。とっさに逃げ出す。最終的には、波子の勝ちってことか・・・。* * * *安島は元子に言われたとおり、手切れ金2億円を払ったということ!今度こそ本当に踏ん切りをつける…といっても、額がとてつもない。手切れ金という言葉を使うのに、違和感が。領収証といい2億円といい、ここぞという時に安島に助けられた。「誰の力も借りない」と言っても。国家議員になり、結婚もする・・・もう戻れない、徹するしかないのに、100%切り替えができない安島の脆さ。あれもこれも手にすることはできない。元子は、ロダンで生きることだけを考える。自分の軸は、そこにしかない。全てはロダンを手に入れるためだった と帰結している。仲村 トオルも米倉 涼子も長身だから、とても絵になった。元子を信頼してついてきた、ホステスやボーイたちが気の毒だわ。平成ドラマの名作。元子、波子、市子 女の生き方もいろいろ。テンポがいいのもこの作品の良さ。全く飽きなかった。米倉涼子がはまり役。着物も洋服も着こなしが実にすばらしく、見惚れた。脇を固める出演者たちも、適役だった。特に、柳葉 敏郎のいやらしさが強烈だった。小林 稔侍、室井 滋、津川 雅彦も非常に巧かった。音楽も文句なし。