欲張り?!4足のわらじを履く私の日々の事

2012/11/11(日)19:09

23回目

風邪治りませ~ん困ったにゃん頑張っていきま~す  今日から毎日ストレッチを行ってください。やり方はディスクに入れて有ります。  後で渡しますから…。」 「ありがとうございます」石田も忙しいだろうのに、わざわざ作ってくれたらしい。  暫くして練習を再開し、絃冶の合図で今日の鍛錬は終了した。  石田が退出していよいよ永田の出番だ。  由紀が呼びに行き、永田が入ってきた。統源の表情が引き締まる。  皆が固唾を呑んで2人を見守る。  「よし、先ずは昨日と同じ位置に着いて。」絃冶から指示に従い2人は向かい合う。  「じゃぁ、キヨそのまま回れ右をして」昨日と同じ事を要求する。静也が1歩前に出た。  清水は暫く永田の目を真っ直ぐ見つめていたが、  ふと目を伏せるとクルッと後ろを向いた。  実に呆気無い位に。  周りが皆驚いた。誰より永田自身が驚いてた。  昨日まであんなに自分に怯えていたのに。  永田は実はこれまでの清水の反応にショックを受けていた。  自分では、もう立派にこの社の人間として務めを果たしているし、  社長に対する忠誠心も誰にも負けない自負がある。  人間としても、洗脳から解放されもう2度と私怨に惑わされたりはしない自信があった。  だが、社長の娘である清水に恐れられる事で、  自分の中にまだ不浄なものが沈殿していると言われているかのように感じていた。  それは永田にとって恐怖であった。  しかし今日、清水は自分に背中を見せた。  言葉では言い表せない感情が押し寄せてきた。  「父さん、今日はここまでで、良いですか?」  清水がそのままの姿勢で絃冶に声を掛けた。  その声で皆が我に帰り、絃冶は  「あぁ…そうだな。今日は大分ハードだったし。ねぇお父さん」と統源に同意を求めた。  「うむ、ここまでにしよう」と答えたので  そのまま清水は誰の手も借りずに目の前の  手近なドアから出て行った。  皆が呆気に取られている中で統源だけが  目を細めて歩いていく清水の姿を観察していた。  そして静也にだけ聞こえるように「静也、行け。」と声を掛けた。  「はい。」清水とは違う自分の直ぐ後ろのドアから静かにするりと出た静也は、  ドアが閉まった途端、清水の姿を探して全速力で走り出した。  清水はさっき出てきたドアにもたれ掛ったままうずくまっていた。  走り寄って肩に手を掛けるとまたもやシールドが清水をベールのように  覆っていた事が感じられた。  清水に触れると同時に震えているのに気付いた。  本当は今日も永田の事を怖がっていたのか。  それを必死に封じ込めて、誰にも気取られないように何気なさを装って  背中を向けたのだろう。永田を慮(おもんばか)ってだろうか。  「大丈夫、ありがとう…この事は誰にも言わんといて」  振り向く事なく清水は言った。  「分かった」静也が答えると、清水は立ち上がろうとした。  が、ピタッと動きが止まり  「ごめんなさい。控え室まで腕を貸してもらえる?」と静也に頼んだ。  「大丈夫なのか?」もう一度確認する静也に「少しふらついているだけ。」  「でもそんなところ他の人に見られたくないねん。  気付かれないように他人が来るまでで良いから」  静也は清水の背中から手を回して反対側の腕を取り、  自分の腕で支えると歩き出した。  触れている所から清水の身体が震えているのが伝わってくる。  「そんな無理する事ないだろ」思わず、手に力が入る。  「痛っ。」  「あ、ごめん。」つい力が入ってしまった。  自分は何でこんなにも歯がゆい思いをしているのだろう。  この娘と関わるようになってから分からないことだらけだ。  遂には自分の事すら分からない時がある  清水は今日も、自分の手を離れて、平気な顔をして家へと帰っていくのだろう。  「ありがとう」控え室のドアの前で礼を言うと一人で入っていった。  今なら分かる。平気な顔の下で、必死で耐えて、理性を繋ぎ止めて、  逃げ出したいのを必死で我慢している事。  何故、そうしているのかは分からない。  でも今日も自分は昨日までの自分と同じように清水に背を向けて家路に着く。  当然の事なのにどうしてこんなに、辛くなってしまったのだろう。  さっきまで清水を支えていた手をグッと握り締めた。  複雑な思いを抱えながらその場を離れる。   静也君も複雑な思いを抱えてしまったようです 清水ちゃんや静也君に応援メッセージ頂けると嬉しいです にほんブログ村

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