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カテゴリ:オーストラリア
昨日に引き続き、また嫌なことが起こってしまいました。赤道の向こう、オーストラリアはシドニーから舞い込んできた、大規模な人種暴動のニュースです。
コスモポリタンな移民都市・シドニーでは、人口の多数を占めるアングロ・サクソン系白人住民と、目下人口急増中の中近東系住民(特にレバノン人が多い)との間で、言語、宗教、生活習慣の違いにより緊張関係が続いており、すでに一触即発の状態にありました。それが爆発したのが、つい先日。シドニー南部のクロヌラ・ビーチにて、レバノン人青年が海水浴場監視員2人を襲撃した事件をきっかけに、アングロ・サクソン系を中心とする青年5000名が当ビーチに繰り出して、「われわれのビーチを汚すな」、「レバノン人は出て行け」などと反レバノンの人種差別的スローガンを掲げて集まり、その一部が暴徒化して、中東系とみられる人々を襲ったり、警察官に投石するなどの事件が起こりました。 やはり、起こるべくして起こってしまった・・・というのが、率直な感想です。確かに、シドニーの中近東系住民の社会では、派手な発砲事件が起こったり、テロの容疑者が逮捕されたりと、キナ臭い事件が次々と起こっているし、ギャングや麻薬の問題も多く、かなり以前から白人社会の反感を買ってきました。それが、海の向こうのニューヨークやバリ島、ロンドンなどで起きた無差別テロ事件に触発された、「イスラム教に対する嫌悪感」と相まって、大きな緊張状態をつくってきました。そのフラストレーションが暴発するのは、時間の問題だったといえましょう(拙文:シドニーの中の異文化)。 その気持ちは、本当によくわかるのですが、私の非常に勝手な感想を言わせてもらうと、やっぱり気に食わないんだよなあ。何というか、数の力をたのんで少数をいたぶるという構図が・・・。 もし、中近東系住民やイスラム教徒に対して抗議する、という政治的な意図が少しでもあれば、そもそも白人住民が圧倒的に多いクロヌラビーチみたいな場所を選ばずに、彼らの総本山的存在である、ウェスタンサバーブのラケンバ(Lakemba)に繰り出して堂々と抗議すべきではないか?・・・ラケンバには、アラビア語書店もあれば、シドニーのイスラム教社会で権威のあるモスクもある。その隣り町・ベルモアには、中近東系住民をオーストラリア社会に統合する上で巨大な役割を果たしている、ラグビーリーグの人気チーム「カンタベリー・ブルドックス」のホームグランドまであるのだ! もし、クロヌラに終結した5000人が、そのままラケンバに繰り出してたら、たぶん、すごいことになってただろうな。5000人の暴徒が、地元の1万人以上の中近東系住民に囲まれてフクロにされたりね・・・。そんなこと起こったらまじでやばいから、結果的にはクロヌラで暴れてよかったのかもしれない。 でも、おそらくそれ以前の問題だと思う。ビーチに集まった5000人の青年たちは、そもそも、ラケンバが中近東系住民の聖地のような場所である、という事実さえ、あまり知らないんだろうな。たぶん、そういう奴らに限って、ウェスタンサバーブを十把一絡げにして、「あそこは危ないから近寄るな!」みたいなことを言うんだろうな。だって、中近東系はレバノン人だけじゃなくて、イラン人もトルコ人も、エジプト人もシリア人もいるのに、彼らはみんな十把一絡げにして、「レバノン人!」って呼んでるんだもん。要は、その程度の認識しかないってこと。 レバノン人に限っても、イスラム教徒ばっかりじゃなくて、キリスト教徒もたくさんいるし、また、中にはビジネスで成功して、一般オージーの想像を絶するような巨万の富を築いたレバノン人だってたくさんいる。実際、私がつい最近まで住んでいたパラマタの住宅街では、近所のレバノン人はほぼ全員が敬虔なクリスチャンで、お金持ちで、すごい豪邸に住んでた。パラマタ産業界を代表する人物の一人だってレバノン人・・・。 (私は、別にお金持ちが偉いと言ってるわけじゃなくて、レバノン人のなかにも、「ギャング」、「泥棒」、「イスラム教徒」みたいな一般的なイメージとはかけ離れた、いろんな人がいる、ということを言いたかったのです。) そういうことを含めて・・・生まれたときからずっとシドニーに住んでる大人で、仮に、ウェスタンサバーブやその移民社会に関してほとんど知識がなかったら恥だと思いますよ。自分の生まれ育った町を知らないという意味で・・・。 今や、ウェスタンサバーブの人口はシドニー全体の6割を占めます(※インナーウェストを含む)。そして、私の手元のデータによると、ウェスタンサバーブは人口学的に、シドニーの未来を握っています。以下、いくつか驚愕の数字が! ・レバノン人は、シドニーに移住してきたグループのなかで、女性の未婚率が最も低く、かつ出生率が一番高い。 ・中近東系住民の多いAuburn地域の合計特殊出生率は、アングロ系住民が多いビーチエリアの約2倍もある。 ・オーストラリアに移住した中近東系住民の過半数が、シドニーとその周辺に住み着いている。 ・今後20年間における、シドニー都市圏の人口増加の6割以上が、ウェスタンサバーブで占められる。 今後、シドニーはますます、非白人の移民やその子孫と、その多くが住むウェスタンサバーブを抜きには語れなくなってくるのは明白。だとしたら・・・シドニーを愛するのなら、ウェスタンサバーブをもっと深く知らなくてはいけない。そこに住む、レバノン人やイラク人、ベトナム人や中国人たちと付き合い、彼らのライフスタイルをよく知り、もっと、彼らを愛さなければいけない。彼らも、(白人と)肌の色は違っても、21世紀のシドニーを舞台に、共に歩んでいく隣人なのだから。 だから、ラケンバに繰り出そう・・・。暴動起こしては困るけどね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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