Manachan's World-東京下町日記

2011/01/25(火)13:22

海の千葉、陸の千葉

エッセイ集(520)

私の生まれ育った千葉県は、関東のなかで、一番長い海岸線を持ち、気候も温暖、海と太陽のイメージに恵まれた県です。 但し、私の地元は、千葉県とはいえ海から遠い、東葛(とうかつ)地域と呼ばれるところ。この地域のライフスタイルも、海とは無縁。むしろ埼玉のような、内陸県と似た文化を持っています。 人口600万以上いる千葉県には、数百万人単位の大きな都市圏が二つあります。一つは、「湾岸地域」(千葉市、船橋、市川など)、こちらは一番人口が多く、実質的に千葉県の中心で、かつ「海の千葉」を象徴する存在です。 第二の都市圏が、我が「東葛地域」で、柏、松戸を中心とする内陸エリア。こちらは、「陸の千葉」を象徴する存在です。 千葉県には、「湾岸地域」、「東葛地域」以外に、みるべき都市圏がありません。この両地域の中間に、千葉第三の都市圏といえる「北総地域」(成田、佐倉、印西など)が存在しますが、その人口規模は小さく、南北の両大国に挟まれた小国・緩衝地域、といった趣です。 「湾岸=海の千葉」と「東葛=陸の千葉」は、同じ県内にありながら、お互いの交流は乏しい。その最大の理由は、両地域を結ぶ交通網が貧弱で、行き来が不便なことです。鉄道はせいぜい、私鉄の東武野田線、新京成線くらいしかなく、最短でも30~40分、東京に出るより時間がかかります。かつ、道路網も国道16号線と県道8号線が慢性渋滞で、片道1時間以上かかる、これでは誰も行く気になりませんね。 両地域はあまりも縁遠くて、人々の意識にほとんど上りません。「船橋vs柏」、「市川vs松戸」といった、似たタイプの都市があるにも関わらず、お互いに「関係ねえ」と思っているので、ライバルでさえありません。まさに同床異夢、行政区分として、同じ千葉県に存在してきただけなのです。 断絶した二つの地域を結びつける数少ない存在として、湾岸地域にある「船橋のららぽーと、イケア」と、「海浜幕張のコストコ、カルフール」があります。これらの商業施設は、東葛にはないため、東葛民の一部は、船橋市若松交差点や千葉北インター周辺の慢性渋滞に悩まされながら、車で湾岸を目指したものです。 しかし、それも過去の話になりました。今では「ららぽーと」が柏の葉にできて、「コストコ」や「イケア」も、川を渡った埼玉県の新三郷にできてしまいました。湾岸エリアのどのショッピングセンターよりすごい「越谷レイクタウン」もあり、東葛の人々は、遠い湾岸エリアに、ますます足を運ばなくなりました。 かつ、ここ数年は、つくばエクスプレス(Tx)開通により、埼玉内陸、千葉内陸(=東葛)、茨城内陸の行き来がしやすくなり、商業施設も増えたため、県境を越えた人口移動も、かつて例をみないほど盛んになりました。 ・千葉県東葛エリアは、「柏の葉ららぽーと」、「流山おおたかの森ショッピングセンター」を武器に、茨城県、埼玉県の新住民の囲い込みに成功 ・埼玉県東部エリアは、「新三郷ららシティ」、「越谷レイクタウン」を武器に、千葉県、茨城県の囲い込みに成功。 ・茨城県南エリアは、「阿見アウトレットモール」を武器に、千葉県、埼玉県から客を呼び込みつつある。 これが今のトレンドです。要するに内陸の民(東葛民)は、同じ千葉県の湾岸地域よりも、茨城・埼玉の内陸都市との交流を選んだのです。(千葉県内各地域間ではなく)東京を中心とした放射状・環状の交通網整備と、商業施設の充実の結果、自然そうなったわけですね。 これで、「海の千葉」と、「陸の千葉」。両者の断絶は、決定的なものになりました。 そろそろ結論、 ・東葛地域が、なぜ千葉県に属さなくちゃならないのか、理由が分からない。 ・それ以前に、千葉県の存在意義さえ分からない。この21世紀に、千葉県という行政区域がなぜ存在しなくちゃならないのか? ・東京、埼玉、千葉、茨城県南を全部ひっくるめて、経済社会の実態が、もはや「首都圏(Greater Tokyo)」なんだから、行政区画をそれに合わせて、「首都圏で一つの州」にすれば良いのにと思う。

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