2007/08/31(金)06:48
クラブ“M” 第1話
「クラブ"M"」 第1話会社帰りの雑踏、にぎわう駅前。
しかし、一本筋を外れると、驚くほど人の往来は少ない。
そんなメイン通りから外れた冴えないビル、そこにクラブ"M"はあった。外からは、そこにクラブがあるとは判りにくい。
木製の重厚な扉と、CLUB"M"と書かれている銀の小さなプレートから、それと判る。扉を開けると、粗末な外観のビルからはちょっと想像できない、なかなか落ち着いた雰囲気の室内が伺える。少し押さえ気味の照明、適度な音量で流れるjazz。調度品はアンティーク調で、ソファは全て革製。「いらっしゃいませ。いつもご利用ありがとうございます。会員カードをお渡し願えますか?」出迎えてくれた店員にステンレス製の会員カードを手渡す。そう、クラブ"M"は会員制なのだ。「小田様(仮称)、いつもご来店ありがとうございます。お荷物と上着をお預かりします。こちらへどうぞ。」スタッフに案内されて店に入る。
店内は思いの外広い。
高級木でつくられているであろう丸テーブルがいくつかあり、奥にはカウンター席。
カウンター席の向こうで、数名のバーテンダーがお酒をつくっている。天井まであるガラスケースには、世界各国のお酒が陳列している。
店内の照明は抑え気味だけれど、それぞれのテーブルにはスポットライトが照らされていて、手元は明るい。それだけであれば、どこにでもあるクラブだ。
しかし、クラブ"M"が他とは違う。
何故なら、テーブルに付いている客がお酒を飲みながら模型を作っているからだ。
そう、クラブ"M"は、お酒を飲みながら模型を作ることの出来る会員制クラブなのだ。(つづく)text by とよ