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見たまま、感じたまま、思ったまま

(1)インフルエンザワクチン(2003年)

インフルエンザワクチンについて

(注)ここに書いてあるのは、新たにこのサイト用に書いたのではなく、自分がケーブルテレビで喋る時に作った台本をそのままコピペしたものです。
ですから、対話形式になっています。
BがアナウンサーでTが僕です。話の内容は、出来るだけ学術用語を使わずわかりやすく書いたつもりです。
その辺を念頭に置いてお読み下さい。

B 今日はインフルエンザワクチンについてのお話を伺うわけですが、まずその前にインフルエンザという病気について、お話を伺いたいと思います。

T ハイ。確か、去年の今頃にこの番組でインフルエンザについての話をしましたと思いますが、覚えていらっしゃいますか?ちょっとまとめて見てください。

B え?私がですか?

T ハイそうです。お願いします。

B 確か、インフルエンザと言うのは、突然の高熱や、頭痛、筋肉痛、関節痛などの全身症状を主症状とした、ウイルス性の病気でしたよね。

T そうですね。もちろん、咳や喉の痛みもあるのですが、普通の風邪と違うのは、突然に高い熱で発病して全身症状の方が目立つと言うことです。
ただ、子供さんの場合は、鼻水や咳も目立つし、B型インフルエンザの場合は、下痢、腹痛などのお腹の症状も目立ちます。

B 確かインフルエンザにはA型とB型がありましたね。

T C型と言うのもあるのですが、実際に人で流行を起こすのはAとBです。一般に、まずAが大きな流行をきたして、その後でBが小さく流行する事が多いです。

B 風邪に比べて肺炎などの合併症も起こしやすかったですよね。

T そうです。肺炎や、筋肉の炎症などの合併が高いです。
子供さんでは、熱性痙攣も起こりやすいですね。あと、子供さんには頻度はあまり高くないですが、インフルエンザ脳症と言う重い合併症を起こすこともあります。

B その脳症と言うのについて、最近はよく聞く機会が多いですので、もうちょっとお話を伺わせてください。
これは、どんな症状でいつ頃起こりやすいんですか?

T 脳症というのは、インフルエンザの発病初期に、意識障害や嘔吐、痙攣などの中枢神経症状で発症します。頻度は10万人あたりに2・5人ぐらいと少ないのですが、発症すれば死亡率が高い合併症です。好発年齢は1才から5才くらいまでと言われています。この好発年齢と発病初期に起こりやすいという特徴は、熱性痙攣と似ており、両者の区別が難しい場合もあるので注意が必要です。

B インフルエンザには確か診断キットがありましたよね。

T そうです。鼻や喉の中を綿棒で擦って、付着した分泌液にウイルスが居るかどうかを調べます。大体15分前後で結果が出ます。最近はA型とB型の区別が出来るキットが多いです。

B この検査はインフルエンザの患者では全て陽性にでるんですか?

T この検査で陽性と出た場合、まずインフルエンザと考えて間違いないですが、陰性と出てもインフルエンザを完全に否定できる訳ではありません。この検査は種々の条件に左右されます。例えば検査の時期にもよるようで、あまり時期が早すぎたり、遅すぎても陽性に出ないことがあるようです。
ですから、検査結果だけでなく、症状や周りの流行状況など、全体から判断しなきゃいけないですね。

B で、治療ですが、これは確か早くに始めないといけなかったんですよね。

T そうです。最近、インフルエンザに効くお薬が出てきました。飲み薬と吸入するお薬がありますが、どちらもこれらの薬は、発病して早く飲むほどよく効果が出ます。大体48時間以内に始めるのが目安です。

B お薬は何日飲めばよろしいのだったでしょうか?

T 基本的に5日間の服用ですね。

B 高い熱が出た時、解熱剤の使用について、注意がありますか?

T 子供さんの場合は、アセトアミノフェンという薬を試用してください。
アスピリンや、大人が使う解熱剤を使ってはいけません。

B 学校は出席停止でしたよね。どのくらい休めばよかったのでしょうか?

T インフルエンザは学校伝染病なので出席停止になります。
いつまでかと言うと、熱が下がって経過するまでです。これは何故かと言うと、インフルエンザの場合、3日目くらいで一旦熱が1日くらいさがり、またもう一度熱が出てそれから解熱するという2峰性の熱の出方をすることがあるからです。
ですから、1日熱がないからと言って治ったとは油断が出来ない訳ですね。

B 分かりました。では、先生ここで、インフルエンザと言う病気についてまず一旦まとめてください。

T はい

1インフルエンザは、呼吸器症状に加えて、突然の高熱や頭痛、筋肉痛、関節痛などの全身症状が強い、ウイルス性の病気である。
2また肺炎や筋炎を合併することが多く、小児では熱性痙攣も多い。
3脳症は頻度的には少ないが、死亡率の高い合併症である。
4診断は、症状や周囲の発生状況に加えて、診断キットが有用である。
5抗インフルエンザ薬は、発病48時間以内に開始するのが望ましい。
6学校は熱が下がってから2日を過ぎるまで休むべきである。

B では、先生、今度はワクチンについての話を伺います。

T はい。インフルエンザの予防には、うがいや手洗いをして、流行時期に人混みに行かないなどの一般的対処も有効ですが、何よりもワクチンが有効だと思います。

B このワクチンはいつ頃打てば良いのですか?

T ワクチンを打って効果が出てくるまでに最低2週間くらいは必要とされています。ですから流行の始まる2週間以上前に打ち終わっている事が望ましいですね。具体的には12月中旬頃には終わっておきたいです。

B 打つのは1回で良かったのでしょうか?

T 大人は1回ですが、13才未満の子供さんは2回接種するべきだと言われています。

B それはどうしてですか?

T 大人は過去にインフルエンザにかかったり、ワクチンを打ったりしていて免疫の記憶があり、1回の接種によってその記憶が呼び起こされ、増幅効果によって免疫効果があがるのですが、子供さんは過去の記憶が全くない、もしくは少ないので1回の接種では効果が弱い事が多く、2回の接種で強く免疫をつける必要があります。

B わかりました。では、1回目と2回目の接種はどのくらいあけたら良いのでしょうか?

T 1週間から4週間とされていますが、3~4週が理想的だと思います。
ただ、実際には打つ時期が遅くてせっぱつまっていたりすると、1~2週で打つ場合も仕方ないですね。

B このワクチンは何歳からでも接種できるのですか?

T 年齢による制限はありません。しかし、6か月以内の小さい赤ちゃんに対する効果は疑問視されています。

B ワクチンの効果と言うのはどのくらいあるのでしょうか?ワクチンを打ったけど、インフルエンザにかかったと言う話もよく聞くのですが。

T ワクチンはインフルエンザの発病を、万一かかっても、重い合併症を、そして死亡を確実に減らすと言われています。発病の危険に関して言うと、40%前後減らせると言われています。一般に過去に感染した事がある人、過去にワクチンを打っている人の方が効果が高いと思われます。ですから、ワクチン接種は毎年続けてする方が良いと思います。またその年に接種したワクチンの効果は約半年続くと言われています。

B よくワクチンと流行している型が違えば効かないと言いますが。

T 型には大きな型と小さな型があります。大きな型が違うと言うのは、全く新しいウイルスが出現したと言うことで、それならワクチンは効かず世界的代流行が起こります。ただ、大きな型の変化と言うのはここ数十年見られておりません。小さな型の変化は毎年のように起こっていますが、小さな型の場合は、多少違っても共通の性質があるのでワクチンの効果は期待できます。毎年のように流行するA香港型、Aソ連型、B型は全てワクチンに含まれています。

B わかりました。では、このワクチンを是非接種して置いた方が良いのはどんな人でしょう?

T 高齢者の方はもちろんですが、子供さんでは先天性の心臓病や、喘息などの呼吸器病などの基礎疾患を持つお子さんですね。妊娠中期以降の女性も受けて置いた方が良いと思います。

B 妊婦も接種できるのですね。お乳をやっているお母さんはどうでしょう?

T お乳をやっていても問題ありません。赤ちゃんへの感染防御と言う面からも受けた方が良いと思います。特に、1才以内の赤ちゃんは、ワクチンの効果があまりよくないので、本人だけでなく、周囲の人がきちんと接種を受けておくべきだと思います。

B 逆に接種してはいけない人と言うのはいるのでしょうか?

T 高い熱があったり、明らかに別の感染症にかかっている人は不適当ですね。
他に、副腎皮質ホルモンや免疫抑制剤の投与を受けている方も効果が悪いのでよく主治医との相談が必要になりますね。

B 卵にアレルギーがあると駄目と聞きますが。

T インフルエンザワクチンは鶏卵で培養したウイルスを使っています。ですから問題になるのは卵アレルギーですが、ワクチンに含まれる卵の成分はわずかなので、全ての人が駄目という訳ではありません。
卵の摂取によって激しいアレルギーを呈した事のある人や、アレルギー検査のスコアが高い人は要注意でしょう。逆に卵そのものを除去していても卵の2次製品を食べても大丈夫な方は、接種しても大丈夫だと思います。
実際には個人により様々ですので、主治医と相談の上様々な事態に対処できるようにして接種するべきだと思います。

B わかりました。では、ワクチンの副作用にはどんな物がありますか?

T 副作用の多くは注射をした場所が、腫れて赤くなったり堅くなったりする事です。大人に多く、半数近くの人に見られますが、数日で改善するので心配は要りません。発熱や全身倦怠感などはまれです。

B ありがとうございました。では、最後にまとめをお願いします。

1ワクチン接種はインフルエンザの予防に有用です。
2大人は1回の接種、13才未満の子供は2回の接種が必要です。
3接種は流行時期の2週間前には終わるようにしましょう。
4卵のアレルギーのある方は、主治医とよく相談しましょう。




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