2007/03/23(金)23:50
さよなら鴨ちゃん
3月20日、鴨ちゃんが死んだ。
最後の本となった、「酔いがさめたら、うちに帰ろう」の表紙イラストは驚く程痩せていたし、最後の最後で癌が発見されたと書いていた。あれはフィクションか?と思ったけど、やっぱり本当だったんだな。
アルコールによる肝臓癌かと思ったら腎臓癌だった。あれほど入退院を繰り返していたのに。
医者も、肝臓や食道静脈瘤やアルコール依存を診るのに精一杯で腎臓まで目が届かなかったんだろうなあ。
でも、癌にならなくても近いうちに肝臓で帰らぬ人になるのではないかと思っていた。
鴨ちゃんの肝臓は、それぐらいもう不可逆な地点へ行っていたと思う。
僕は鴨ちゃんが好きだった。
文章も好きだったし、その不器用な生き様も好きだった。
西原の漫画に助けられているとか、文章のヘタウマと言われたりしていたけど、西原の絵の無い本も面白かったし、鴨ちゃん独特の味わいがあった。
僕にはちょっと人には言えない性癖がある。
いや、別に不健康だとか不道徳だとかそういうのではない。
人に言うと恥ずかしかったり、驚かれたり、感心されたりするそういう性癖だ。
鴨ちゃんの本を読んでいて、おやこの人も同じ性癖を持ってると分かったとき、何故かとても嬉しかった。ああ、自分だけじゃないんだと。
鴨ちゃんは心の弱い人だった。
若くて純粋だったろう時に戦場を経験して、そのフラッシュバックから逃れる為に酒を飲み
絶えず何かを忘れるため、何かから逃れるためにアルコールに逃げたのだろう。
その弱さを自分で冷静に見てる視線を感じていた。
僕も心の弱い人間である。
優柔不断で、意気地がなくて、それなのにずる賢かったりする。
どっか、弱い方、悪い方へ流れていこうとする自分を感じている。
そんな事ないやん、あんたは医者だし、家庭がちゃんとあって子供も配偶者も居て
何を気取って言うてんねんと言われるかも知れない。
でも、自分だけにしかそれは分からないことだ。
僕はたまたまボロを出さずに上手く行ってるだけだと思う。
そして僕には鴨ちゃんのように自分の弱さを隠さず、それをじっと見つめるような強さはない。
アルコール依存を克服しようとした矢先の運命のいたずら。
人生ってそんなもんなのかな。
上手くやろうとしたときに、上手く行かない。
そう言えば、橋田さんが先に行ったんだったね。向こうで戦争取材はせんでもええから、好きなメコンウイスキーでも浴びる程飲んで
西原が行くのを待ってたらいいよ。
さよなら、鴨ちゃん。