2008/02/11(月)08:19
海街diary 1~蝉時雨のやむ頃
吉田秋生はその美しい絵と、ストリーテラーとしての秀逸さから、とてもお気に入りの漫画家の1人だ。あまり作品数が多くないのもファンと言おうかコレクターとしては嬉しい。
最近の彼女の作品は、超美形で特殊な能力を持って生まれついた主人公が、その能力故に様々な事件に巻き込まれて、自分のその運命を変えるべく戦うと言うハードアクションサスペンス路線が多かった。「BANANA FISH」や「夜叉(YASHA)」がその代表と言おうか金字塔だろうと思う。
もう一つ彼女の路線としては「河よりも長くゆるやかに」や「夢見る頃を過ぎても」のように、平凡な主人公達がそう大きな事件も無いけれど、その毎日の中での微妙の心の機微を丹念に描いている作品群がある。
彼女の作品は別冊少女コミックで・・と思っていたのだが、この雑誌がいつしか廃刊になったのか見かけなくなって連載の場がどこに移ったのか、彼女の作品に出会えないで居た。
それが新聞の書評欄かどっかで去年の春に既に新作が出ているのを知った。
海街diary 1~蝉時雨のやむ頃
これは後者の系列にあたる作品だと思う。
舞台は鎌倉。大きな古い家に住む3人姉妹が居る。
父親は子供達が小さいときに女を作って家を出た。
その後、母親も男を作って家を出て行き、彼女たちは祖母に育てられたけど、その祖母も既に亡く、彼女たちは祖母の大きな家で住んでいる。
そこに届いた父の訃報。
父は、一緒に家を出た女性とは死別し、今はまた別の女性と暮らしていた。
前の女性との間に出来た連れ子が1人。
父親には何の感情も持たなかった娘達ではあるが、実際に葬儀に行ってみると父の住んでいた街は鎌倉と似た地形の街で、父のお気に入りの場所はその街が一目で見渡せる山の上だった。
少しずつ父との思い出が湧き出てくる娘達(このあたりの描写が上手いんだよな)。
電車のドアが閉まろうとするときに、見送りに来ていた異母兄弟の「すず」に長女が突然声をかける。「あんたも私たちの所へ来ない?」。
「行きます」と即答するすず。
こうやって、新たな4人の共同生活が始まった。
と、まあ後は読んでのお楽しみである。
吉田作品は、他の作品と少しずつリンクしているのは有名な話だが、この作品には名作短編の「ラバーズ・キス」の主人公だった藤井朋章君が出てくる。ラバーズ・キスよりも1年若い設定だ。
この辺りもファンにとっては嬉しい設定ではないだろうか?
1巻が出たのが2007年の4月だからもうじき2巻が出るかな。
楽しみだ。