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2009/01/31(土)21:55

サイボーグ009 特別編集版 (少年サンデーコミックススペシャル)

この漫画が好きだ!(25)

最近、往年のマンガの名作がコミック数冊分を一冊にまとめた分厚い廉価版のコミック(コンビニコミックと言うらしい)で、色々発売されていて、僕も「柔道部物語」とか「のたり松太郎」とかを買い集めている。そう言えば「おーい、龍馬」も買ったなあ。安価なので、ちょいと気軽に復習と言うのに最適なのよ。 今日本屋で見つけたのがこれ。 サイボーグ009 特別編集版 (少年サンデーコミックススペシャル) 石森章太郎(晩年石ノ森章太郎に改名したが、敢えて昔の名前にさせていただく)の名作「サイボーグ009」の中から厳選されたエピソード6編を収録したものだ。 この中に僕が一番好きだった「地下帝国ヨミ編」が含まれていたのよ。 サイボーグ009は1964年に初めて連載が開始され、石森のライフワークとして何度も掲載紙を変えながら連載、石森の死によってラストは未完にのままとなっている。このあたり手塚治虫の「火の鳥」に似ているね。 僕が最初に見たのは多分テレビアニメだったと思う。主人公の髪型とあのマフラーが風になびくのにすごく憧れた記憶がある。 この本の解説によると、地下帝国ヨミ編が終了したのは1967年、僕が7歳の時なので、恐らく僕は後に単行本化されたのを、小学校高学年か中学校あたりに読んで感動したのだと思う。 そう、そのヨミ編のラストは未だにはっきりと覚えているし、僕が今まで読んだマンガのラストの中でも最も美しく感動的なラストの1つだ。 文章で上手く紹介できるかどうか・・。 世界に戦争を起こそうとたくらんでいる武器商人ブラックゴーストに作られたプロタイプのサイボーグ達(001から009まで)は、ブラックゴーストと対立し彼らと戦うことで世界の平和を守ろうとしていた。 地下深くにヨミと言う帝国があり、そこには地底人、超音波怪獣を操るは虫類ザッタンがおり、ブラックゴーストは超音波怪獣に兵器として目をつけ、ヨミに製造基地を作る。 サイボーグ達はヨミに潜入、ザッタンに支配される地底人、ザッタンと対立するブラックゴースト、そしてサイボーグ達の三つどもえの戦いがあり、最終的にサイボーグ達はブラックゴーストの基地の破壊に成功。 しかし、ブラックゴーストの中枢部は魔神像となり宇宙へ脱出、その際にヨミにしかけた水爆を爆発させサイボーグ達を壊滅させようとする。しかし001の機転でサイボーグ達はテレボートにより安全なところへ脱出。ところが009だけは魔神像の中へテレボートされる。 001が自分をテレポートしたのは、ブラックゴーストと戦って死ねと言うことだと悟った009は最後の戦いを開始。魔神像を破壊するが場所はすでに宇宙。009は宇宙空間へ投げ出される。 そこへ地上から009を助けに来た002が来る。(002の得意はジェットエンジンを使って空を飛ぶこと) しかしもう飛ぶだけのエネルギーが残っていない。 自分一人なら助かるから自分を離せと言う009に「何を言ってるんだ、死ぬときは一緒さ」と答える002。二人は抱き合ったまま燃えながら成層圏に突入していく。 場面が反転。 日本の平和な街、普通の家の物干し台から姉と弟が夜空を見上げている。満天の星の中へ一条の流れ星が・・(それは燃えながら落ちていく009と002であったはず) 「流れ星」 「きれい」 「うん」 「カズちゃん、何を祈ったの?」 「えへへ。おもちゃのライフル銃が欲しいって・・」 「まあ、あきれた」 「じゃあ、お姉ちゃんは?」 「あたし、あたしはね、世界に戦争がなくなりますように・・  世界中の人がなかよく暮らせますように・・って祈ったの」 ここで物語は終わる。 このラスト、このヨミ編で実はこの作品は終了するはずだったらしい。 ところが、この衝撃のラストにショックを受けた読者から抗議や脅迫まがいの手紙が殺到。 あまりの反響に驚いた石森が二人は001の機転で助けられたと言う設定でまた新たに物語が再開されたと言う経緯を持つらしい(今回このコミックを読んで初めて知った)。 その後、色々なシリーズで作品は継続されるが、結局このヨミ編のラストを越えるものが描けず、その結果作品が未完のままに終わったと言う経緯を持つ作品である。 ファンに迷走さされた名作と言うところか。 あのラストは最高だったんだけどね。 ラストだけでなく、このヨミ編はこれまでのブラックゴースト対サイボーグと言うだけでなく、地底人やザッタンが絡み、人間で無いサイボーグの悲しみ、ザッタンに支配される地底人達の悲しみも交錯し、場所も地底から宇宙へと・・壮大な作品となっている。009シリーズを今まで知らなかった人たちにも、これだけでも是非読んで欲しいなと思う。

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