田宮虎彦さんという作家。
読書の秋。食べ物がおいしい季節になりました。トランペット奏者の田宮堅二さんのお父様と言った方がなじみがあるかもしれませんが、田宮虎彦さんという昭和の著名な作家さんがいます。「足摺岬」という代表作がある方。彼が書いた「幼女の声」という作品は、戦後の引き上げの話なんですが、私が食べ物を書きたい、と思った原点です。おにぎりやまくわうり、コーリャンの入ったおかゆ、おから、たぶんちぢみだと思われるお焼き、木から落ちた1円のリンゴ。苦しい引き上げの毎日に、やっと手に入った食べ物たちは、美しくみずみずしく、食べ物の力を感じました。こんな作品がたくさん埋もれています。もう手に入ることはない、読まれることのない作品たち。私たちの年代は、まだまだ図書館に親しかったと思います。自分しかもう知らないかもしれない作品は、ぜひ紹介していってほしいです。