2006/05/03(水)20:54
初めての病院と、迷子・・・
かえでは、3歳になって少しした頃から、
近くの総合病院から、大きな病院の精神科を紹介されて、そちらへ通うようになった。
行ったことのない病院だったので、初診の時はかえでを連れて、
電車とバスで行ってみた。
精神科・・・すごく抵抗があった。
待合室には、明らかに見て解るような患者さんが数名待っていた。
それでいて、私達の方をよく見ていたりするので、逃げ出したい気分だった。 肝心な診察は、とても良い感じの温かな先生で、その先生の問診と、
心理リハビリの先生が毎回1時間ほど、遊びながら様子を見てくださることになった。かえでは本当に自閉症なのか?
今日ははっきり解るはず。私が
「この子は自閉症なんでしょうか?
ほかでは、違うかもしれないと言われていたので、どうなのか不安だったんですけど」
と言うと、「お母さんが心配するような、変な病気じゃないですよ。
間違いなく、正真正銘の自閉症です」と先生は言った。私の思いが通じなかったもどかしさと、やっぱり自閉症だったんだという妙な安心感とで
なんだか複雑な気分だったけど、逆に開き直ることも出来たような気がする。先生は「医療機関とは縁を切らずに、長くお付き合いしていきましょう」と言ってくださった。病院とは縁が切れないのか・・・仕方がない。
かえでの面倒を看ることを、私の仕事にすればいいんだ。
かえでがいる限り、私が他の事を両立することはできないんだ。
私は一生かえでの面倒を看ていくんだ。診察のあと、そんなふうに思いながら、
自販機でかえでが飲めそうなお茶と、私のコーヒーを買う。 ふと目を離した隙に、かえでが行方不明になった!
その頃は、すぐ何処かに行ってしまうけど、
それでも私の見える範囲で遊んでいることが多かったので、油断していた。大病院のロビーは、ごった返している。
小さなかえでは、どこにも見えない。
おまけに、来たことのない迷路のような病院の中を探すのは、容易ではなかった。
付け加えれば、私はひどい方向音痴
あっちこっちしていたら、元の位置さえ分からなくなっていた 受付で館内放送をしてもらう。
もちろん本人が聞いて戻ってくるわけではない。「恐竜の絵のついた白いTシャツに、グリーンの半ズボンの、
目の大きい短髪の3歳の『かえでくん』という男の子が、迷子になっています。
お心当たりの方は、○○までご連絡をお願いします」 私も必死で探した。涙が出てきた。
どうしよう、見つからなかったら・・・
いったいどこに行っちゃったんだよ!かえで~~
おうちに帰れなくなっちゃうじゃ~ん!『となりのトトロ』で、迷子になった妹のメイを、姉のさつきが探すシーンを思い出す。
「メイのバカ!すぐ迷子になるくせに」っていうの。
ああ、こんな時になんでそんなシーンを思い浮かべてるんだ!
私ってバカだ~~っ涙をこらえ、その辺にいる看護師さんにも聞いて回った。すると、メンテナンスのおばちゃんが、
「もしかして、目がクリクリっとした、こーであーでこういう子?」「そう!その子です!どっかで見ました??」
「人間ドックの予防健診センターの待合室の椅子の間をウロウロしてたけど、
『ボク、一人なの?』って聞いても知らん顔だったの」
間違いない!
その健診センターというのが、道を挟んだ反対側にあって、
どうやって行ったんだよ!と腹立ちながら、慌てて駆け込んだ。
いた~~っ! 泣きながら抱きしめた当のかえでは、母親から離れても不安になるわけでもなく、まったく知らん顔のんきなヤツだな・・・
でも、無事でよかったよ。ほんとに
同じ養護学校へ通っている自閉症の子で、
迷子になって警察のお世話になった子が何人もいる。幸いにも、これまでかえでは一度も警察のお世話になったことはないけど、
いつも紙一重のところにいる。危険を察知する力がついてくれたら、もう少し行動範囲が広がるのだけど、
これに関しては、今も大きな課題になっている。