父親の十三回忌
先日、親父の十三回忌を行った。久々に会う親戚のおじさん、おばさん達。親父の若かった頃の話、私の幼い時の話など・・・・・、懐かしい話に会話が弾んだ。 私の隣に座っていたおじさんが、私の披露宴の時の話を始めた。(私の父親は、私の披露宴を待っていたかのように、披露宴から一年後、突然、旅立ってしまった。) 親父は、私の披露宴のあと、親戚一同を実家に呼び、料理やお酒を、たくさん振る舞っていたそうだ。その時の親父の様子は、とても上機嫌だったようだ。このとき私は、会社の同僚が主催した二次会に出席していた為、そのな父親の行動は、全く知らなかった。まぁ、酒好きの父親の事だから、いつもの勢いでやっていたのだろう・・・・、その時は、安易にそう考えていた。 無事、父親の法事も終わり数日後、ふと、披露宴のことを思い出し、披露宴を撮影したビデオテープを一人で見ようと思った。実は、このビデオテープ、まだ一度も見たことがない。披露宴の時、友人・知人から注がれた酒を断れずに飲み過ぎて、後半は殆ど記憶が無いため、醜態をさらしているのでは?と思い、怖くて見ることが出来ずにいた。 物置から、ビデオテープと再生デッキを出してセッティングした。 懐かしい顔ぶれ、当り前であるが、みんな若かった。そして、傍目で見ていて注意したくなるくらい酒を飲んでいる自分がいた。なんとか無事に、披露宴も終盤に差し掛かり、新郎(私)からの挨拶の場面となった。 披露宴に来て下さった皆様への感謝の言葉、これから新婦を大切にしていくと言う誓いの言葉、前日から練習していた内容を、ほぼ完璧に話していた。そして、最後の言葉を言おうとした時、突然、私の言葉が詰まり、涙を流し始めた。その様子を見て、心配そうに私を見る新婦の嫁。 ここから、前日の練習には無かった内容を、私は話し始めていた。 私が小中学校の頃、仕事が忙しかった親父は、私と一度もキャッチボールすらしてくれず、とても寂しい思いをしていたこと。それが切欠で、父親と距離を置くようになったこと。私が高校一年の夏、母親が病気で倒れ、それ以来、寝たきりの状態になってしまったこと。その時、親父は仕事と母親の介護を両立して行っていたこと。家計が大変な中、私と妹を高校まで行かせてくれたこと。今まで話せなかった父親と過ごした率直な思いを、会場の隅にいるだろうと思われる父親に向かってぶつけていた。そして、最後に「親父、今まで本当にありがとう。」と言い、私は深々と頭を下げていた。 場面は、会場の隅にいる父親のアップに変わる。父親は泣いていた。生まれて初めて見る親父の涙。親父は、私の話しを聞き、どう思っていたのだろうか?親父が生きていたら聞きたかったことが・・・・・・沢山、涙と一緒に溢れてきて止まらなかった。 今、私には、小学校2年の息子がいる。この子が、私と同じく親父に感謝の気持ちを抱けるよう、私の親父に負けないくらい立派な父親になろうと、仏壇の父親に手を合わせ誓った。