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迷鴎亭 ★BAKERY FESTE★

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クロアゲハ2007

クロアゲハ2007

クロアゲハの成虫はたびたび見かけるが、うちに卵を産みには来ないものだと思っていた。ところが、今年は来たのだ。数日にわたってかなりの数を産卵していった。

7月17日
707-17-104.jpg.産み付けられた卵。

707-17-106.jpg.これは食草ではないし、その上枯れている。間違った場所に産卵することは、それほど珍しいことではないという。
しかし、これはひどい!
707-19-100.jpg.アゲハの観察記にも載せたが、アオムシの背中に卵。間違えるにもほどがある。

7月22日
次々と幼虫が孵化している。
707-22-002.jpg
食草でないところに産み付けられた卵からも、幼虫が孵った。卵の殻を食べているところ。

707-22-104.jpg .これも卵の殻を食べている。
707-22-103.jpg.2~3mmの体だが、拡大して見るとトゲトゲでなかなか手強そうである。

7月31日
この時期、アゲハ、キアゲハ、アオスジアゲハの世話で忙しく、クロアゲハは放置していた。ナガサキアゲハなんか「ヘンな色のクロアゲハがいる」ぐらいに思っていた(ナガサキアゲハではないかと疑ってはいたのだが)。
自然に任せて、みんな立派に育っていた。
707-31-005.jpg .クロアゲハの4齢幼虫。

8月5日
708-5-006.jpg
室内に取り込まれたクロアゲハ5齢幼虫たち。

8月8日
708-8-004.jpg
ナガサキ君がサナギになって、クロちゃんたちの天下になった。

8月9日
708-9-002.jpg

8月10日
708-10-002.jpg
かなり太った。長さは6cmぐらい。

8月12日
708-12-001.jpg ・・・これは何でしょう?
708-12-002.jpg
見たとおり、紙を漏斗状に巻いたものである。中にサナギが立ててある。

どうしてこんなことをしたかというと、このサナギたちは普通に箱の天井にくっついていたのだが、アリにたかられたのだ。
アリは、サナギを食糧として持って行こうとしたのではないらしい。ただサナギ箱の中を行列して通っていたため、無数のアリに踏み越えられているサナギが大暴れしていたのだ(サナギは触られると暴れる)。
アリを取り除いているとき、サナギの糸が切れてしまった。アリを駆除してもまたこの箱を使うのもどうかと思ったので、サナギたちははがして別の箱に入れることにした。

708-19-001.jpg .このように、箱の中に貼り付けた。

もう1匹、別の理由でこの処置をしたサナギがいた。当日の日記を参考のため載せておく。

8月12日「虫屋敷~失敗もある」
昨日、飼っている最後のクロアゲハが蛹化体勢になった。最後までよく食べてとても大きくなっていた。
エサの枝をもくもく登って、先まで来たら身を乗り出して周りにつかまるところがないか探っていた。と思ったら、ぼとっと落ちた。足場にしていた茎が細すぎたらしい。豪快、いや、どんくさいヤツだw

その枝でサナギになってくれれば楽なんだけど、そうしたくないようなので、箱に入れた。大きいアオムシ用に天井部分に網を張って歩きやすくした箱である。それで、天井を歩いても落ちなかったのはよかったのだが・・・いつまでもぐるぐる歩いている。同じところを回っているとは認識していないのだろうか。
いつかは止まって糸で体を固定するものだから、放っておいた。

ところが!
朝になって見たら、なんと箱の床面に横たわっているではないか!ついにどこにもくっつくことができなかったのか?!
とりあえず生きている。おしりの先だけ軽く固定していて、体は前蛹の形になっている。でも、こんなヤツ初めてだよ。先日すごくおかしいことをしたヤツがいたが、その上を行ってしまった・・・。だからクロアゲハはイヤなんだよ。ちゃんと育ったと思っても、サナギになるときに問題が起きるから。

前蛹になってから落下したものは、正常に脱皮して蛹になると聞いたことがある。こいつが落下したのかそもそもどこにもくっつけなかったのかわからないが、このままで蛹になる可能性もあるということだ。しかし動かない(動けない)から、力尽きて死にかけているのかどうかもわからない。

どうも死んじゃいそうだなあと思っていたが、夜になって脱皮した!
こういうわけのわからんことするヤツを助けていいものかどうかわからないが、見た目はふつうの蛹になっているので、助けてみることにした。紙を漏斗型に巻いて、細いほうを下にして、サナギを縦にして入れる。脱皮したばかりのふにゃふにゃのサナギをつまんだ・・・気持ち悪かった(爆)
漏斗の外側に両面テープを貼って、箱の内側の壁に貼り付けておく。べつに箱の中でなくても、どこに貼ってもいいんだけどね(笑)、箱に入っててもらったほうが扱いやすいから。
実は今日はほかにも同じ措置をとったサナギがあと2匹いた。そいつらは自力でちゃんと箱の中で位置を決めて蛹化していたのだが、恐ろしい災難に見舞われて・・・あとで虫日記に書きます。

ヒメが次々にサナギを漏斗に挿し込んでいるのを見てDさんが「飼育係はたいへんだね~」と言った。そう、たいへんなんだよ。ていうか、クロアゲハがやっかいなのだ。わずかな違いだとは思うが、やっぱりナミアゲハが育てやすくておすすめ(だから誰にすすめてるんだよ)。


先に結論(このサナギたちがどうなったかということ)を言うと、アリにたかられた2匹は、その前に正常なサナギになっていたので、問題なく完全な蝶になった。変な脱皮(蛹化)をしたやつは、サナギの形に異常があり、蝶の翅が奇形だった。

8月19日
このころはサナギでいっぱいだった。クロアゲハ、キアゲハ、ナガサキアゲハのサナギたちがいて、しょっちゅう羽化を見ていた。
クロアゲハ1号は、朝見たら羽化していた。
708-19-002.jpg 無事にきれいな蝶になってくれて一安心。

8月22日
ところで、上の日記の文中に、「すごくおかしいことをしたヤツ」と書かれているのは、このサナギである。
708-22-001.jpg.羽化直前で体の色が外から見えるので黒っぽい。

こいつが何をしたかというと、写真の左奥にヒントがある。このサナギ箱は使い回しなので、古いサナギの殻が残っているのだが・・・横になっている。
実は、横になっているのは古い殻ではなく、このクロのほうなのだ。正確には、横になって「いた」のである。この個体は、サナギ箱に入れておいたらどういうわけか壁に水平方向にくっついて前蛹になってしまったのだ。
サナギになるときは、垂直の壁、斜めの壁、水平の天井のどれでも利用しうる。もちろん箱だから壁や天井なのであって、自然の中なら木の枝などを利用するわけだ。とにかく、サナギは頭を上にして立っているにせよ、背中を下にして斜めにぶら下がっているにせよ、右や左に傾いていることはない。横向きになっていると、体の中身が偏って、正常なサナギになれない、と思う。例の蛹化に失敗したやつも、横向きに寝ていたのがいけなかったのだと思う。前蛹のうちに漏斗に入れてやれば、良い結果になっただろうか。今となってはわからないが。

とにかく、横向きになっているのは気になりすぎて放っておけなかったので、頭が上になるように箱を90度回しておいた。そうしたら普通にサナギになって、無事に羽化したのだ。

708-22-002.jpg.羽化直後。

708-22-003.jpg
開いた箱は止まりにくそうで、こっちのほうが観察もしやすかったので、枝に止まらせた。

708-22-004.jpg
変な行動をしたヤツでも、立派な蝶になる確率のほうが高い。

708-22-005.jpg.背中側から見るとまっ黒。

708-22-006.jpg.光に透かすと黒い部分も線模様になっているのがわかる。

8月23日
漏斗に立てられていたサナギたちがどうなったかというと、2匹とも無事に羽化した。

708-23-001.jpg.1匹目。

8月24日
708-24-001.jpg.2匹目。

8月25日
いろいろ妙なことをしたり惨事にみまわれたりしてハラハラさせてくれたクロアゲハたちだったが、ほとんどの個体は無事に蝶になって飛び立った。
最後の1匹、蛹化に失敗してサナギの形がちょっと変になったやつは、完全な蝶になれなかった。翅の一部が奇形で飛べなかったのだ。

708-25-001.jpg
翅が少し曲がっているだけなのだが、まったく飛べなかった。

708-25-002.jpg

飛べない蝶は、上手に飼うと長生きするという。飛べないから体力の消耗が少なく、物にぶつかったりもしないからだ。でも、私は何度か飛べない蝶を飼ったが、餌付けが下手なせいか数日で死なれてしまった。
今回は、どうせすぐ死んでしまうなら、箱に閉じ込めるより外の草や花の中に置いてやろうと思った。

かわいそう、と思うのは人間の勝手である。蝶は何も考えない。仲間といっしょに飛びまわれなくて残念だとも悲しいとも思わないだろう。自然界で生まれたならすぐ死んで、他の生物の栄養となる運命を、だまって受け入れるだけだ。私は人間的な感傷で、外の空気や植物を味あわせてやりたかったので、そうしたのだ。

前にDさんが、ヒメが死んで天国に行ったら、たくさんの蝶たちが出迎えてくれるだろうと言ったことがある。そうだといいと思うが、おそらくそういうことはないだろう。蝶たちは、私に飼われていたことなど知らない。私のことを生物として認識することさえないだろう。
ただ、こう思うことはある。子孫を残して天寿を全うした蝶が天に召されたときには、志半ばで(?)命を落とした数百の兄弟姉妹たちに出迎えられるだろうと。これも人間的感傷であるが、人間はそういうことを考えたがる生物なのだ。

クロアゲハ2007・おわり。



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