凡声庵閑話:南正邦の覚え書き Minami Masakuni

2021/06/02(水)22:04

朝倉文夫『彫塑について』

彫刻について(120)

明治の日本の具象彫刻家の巨匠。 朝倉文夫が日本人のプロポーションについて書いていました。 『​彫塑について​』(近代デジタルライブラリーより) 家庭大学講座テキスト ; 昭和5年新春. 美術鑑賞 日本放送協会関東支部 『六 日本人の人体美 日本人は、足が短い、体格が悪いと言って悲観するために最近の面白い研究を発表してみよう。 丸裸の、すなわち裸体美なるものは、銅が長いから足が短いから美でないとは断定出来るものではない。 足の長い、手の長いのが美の第一条件であるとしたら、特種な手長、足長の奇形児はおそらく人体美の極致でなければならない。 ところが決して手足の長いことのみが人体美を決定するものではない。 そこに人体の調和的方面、もしくは、権衝的方面からある基準をもって、はかり出した時、初めて、その美を見出だし得るのである。 その決定の標準率については、埃及(エジプト)の蒙昧時代から、いろいろ研究された。 東洋においても釈迦の像造経と称するものがあるくらいで、世界の到る所の哲学者、芸術家、解剖学者、天文学者というような、あらゆる学者専門家によって研究され、発見されたのである。 そうした研究を一々例証すれば枚挙にいとまがないが、その中、最近叫ばれている幾何学的に人体の標準を求めたもので、脊柱の長さの四分の一を標準として、身長は十倍半であるという説がある。 この割合が解剖学上の七頭長半説と略符号するというので、これまでの統計的結論や、解剖学的立証が一致したのである。 すなわち解剖学的な見地から頭の長さを標準として、成熟せる男女ともに七頭長半(七倍半)という割合が一般的に誤認されたのである。 ところが、幾何学的標準の十倍半(※七倍半の誤植かと思われる)は、西洋人の身長であって、日本人の標準率はこんな複雑した奇数的な標準率を用いなくとも、 いきなり身長を十分して、その一を標準とすればいいのである。 この標準にのっとって仔細に観察するに、 頭の幅の距離、鼻の柱から頭の頂上、等はいずれも一標準率を示し、 肩幅は標準率の二倍になる。 また胸骨の長さが、一標準率に等しく、 上腕は一倍半、 前腕と手との長さが二倍半、 すなわち上肢の長さが四標準率に等しく、 ヘソと恥骨は一標準率、 左右大腿骨頭が、一標準率、大腿骨の長さが二倍半、 下腿骨が二倍半という風に、 身長さえ解れば、すべての部分を暗算で算出することができる。 西洋人の体躯を、この標準率で清算してみると、まったくこうした偶数的な組織を示すことなく、乱雑な組織をなしていることが解る。 すなわち日本人の人体の構造が、極めて整然とした建築的な構成をなしている。 そこに調和があり、調和的権衝美見出される。 そうした構造的方面から見ても、日本人の体躯は、欧米人に比してはるかに進化的であり、文化的であり、理想的均斉美をもっている。 それだけではない。 美の表現上、快適な美点が沢山ある。 これまで足が短いとか、曲がっているとかいうことが、かえって直立の安定を保っているものである。 また彫刻芸術、絵画芸術に利用される坐せるポーズ、寝たポーズ等に到っては、そのポーズの後世において描写表現上特色とする範囲を多分に持っている。 西洋人は足が長い。が、しかし、長いという事は誇るべきことではない。 それ等の条件に大きな力となって働きかける。生理的から見ても日本人の足は、その与えられた役割を完全に演じているのである。』 これを分解すると次のようになります。 日本人の標準体形 人体の中心線 足裏線 頭上線と身長 身長の半分 いきなり身長を十分して、その一を標準とすればいいのである。 身長の十等分 頭の幅の距離、一標準率 鼻から頭の頂上、一標準率 一標準率を横に頭幅 頭部の基準ひし形 一標準率の正方形 頭頂点 頭の幅の点 鼻柱の下端の点 肩幅は標準率の二倍 肩幅、二標準率 こめかみ、鼻下、肩幅を結ぶライン 肩関節の点 胸骨の長さが、一標準率 胸骨下端の標準率 胸骨下端の点 上腕の長さ、一標準率半 上腕は一倍半、 肘の点 前腕と手との長さが二倍半、 前腕と手の長さ、一標準率半 すなわち上肢の長さが四標準率に等しく、 手の端点 手の長さ、四標準率 ヘソ、一標準率 ヘソの点 ヘソと恥骨は一標準率、 恥骨結合、大腿骨頭の一標準率正方形 恥骨結合の点 肩関節、ヘソ、大腿骨頭を結ぶ直線 左右大腿骨頭が、一標準率、大腿骨頭の点 乳頭の点 腰幅、二標準率 大腿骨の長さが二倍半、大腿長、二標準率半 大腿骨の軸線 下腿骨が二倍半という風に、下腿と足、二標準率半 膝の点 下腿と足の軸線 足裏の点。幾何学的標準線の完成 身長さえ解れば、すべての部分を暗算で算出することができる。   アニメーションで再現しました。

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