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テーマ:辛口映画批評(354)
カテゴリ:試写会
試写会の主催はBIGLOBEさんだ。客層はお子さんから年配の方まで幅広い客層で、客入りは7~8割ほどだ。
映画の話 高校時代に天才ランナーと呼ばれながらも、事件を起こして陸上から遠ざかっていたカケル(林遣都)。ひざの故障で陸上の道をあきらめた元エリートランナーにして、寛政大学陸上競技部のリーダーでもあるハイジ(小出恵介)は、そんなカケルを陸上競技部にスカウトし、ひそかに抱き続けていた箱根駅伝出場の夢を実現させようとする。 映画の感想 とても真面目で実直な作品だ。脚本家の大森寿美男の初監督作品という事だが良く出来ている。脚本家上がりの監督というと三谷幸喜のような逸材もいるが、私の持論で「脚本家上がりは、監督として駄目だ」と思っており、本作も大して期待はしていなかった。脚本化上がり監督は頭でっかちで変に細かい所を徹底して描くが、俯瞰の目を持っていないと言うか、大きなビジョンで映画を撮れない方が多かった。しかし本作の大森監督はちゃんと全体像を踏まえて演出をしている所に好感を持った。 映画はスポーツ物の王道と言った所だ。物語としては変なひねりも無く一直線に到達点を目指す作風だ。物語は訳ありの負け犬陸上部員たちが、部長の壮大な構想により箱根駅伝を目指すストーリーで、夢と挫折を経て理想を現実にする過程が描かれる。部長・灰二を演じるのは小出恵介だ。駄目部員を自分の理想の形に持って行こうとするストイックな人物像を小出恵介が好演している、きっと本作は彼の代表作になるだろう。そして、陸上部のキーパーソンとなる天才ランナー・走を「バッテリー」「ダイブ」「ラブファイト」の林遣都が演じている。それにしても彼はスポーツ選手役が多い。「ダイブ」は未見なので不明であるが、「バッテリー」の天才ピッチャー、「ラブファイト」のヘタれボクサー、そして本作の天才ランナーである。 以下ネタばれ注意 本作の幕開けは灰二と走の出会いから描かれるのだが、その出会いがバッサリと割愛されている。いきなり灰二がスカウトした走に食堂で食事をご馳走する描写からだ。個人的には台詞で語られる、灰二が「走がキャンパス内でテント生活を送っていた所をスカウトした」と言うシーンは必要に感じる。まぁ、映画と言うものはテンポが大事なので先の台詞のシーンは割愛されたのかもしれない。食堂のシーンは後に意外な展開になり、走と灰二の美しいランニングフォームを観客に見せつけ、観客を映画に引き込む大森監督のつかみ演出が上手い。 個性的な10人の陸上部員たちの描き方も一人一人が埋没しない様に上手く描かれ、台詞の端々からキャラクターのバックボーンも読み取る事が出来る大森監督が書いた脚本も実に丁寧だ。それから他校の選手とのしがらみなんかも上手く描かれている。本作の良い点は下手に女子との恋愛話を持ち込まず、ひたすら駅伝に情熱を燃やす部員たちの姿に絞ったのも良い選択であった。 物語の展開も直球勝負なのでブレは無いが、和久井映見を除いた特別出演の俳優たちの使い方がこれ見よがしだった事が難点だ。特に鈴木京香が演じた医者と灰二の会話を走が目撃するシーンは不自然そのものだ。走が帰ってきたのを察知したように会話が始まるのは何とかならなかったのか?テレビの2時間ドラマを見るようなチャチな演出が残念であった。そして先にも書いた神童と彼の母役・和久井映見の電話越しの会話も映像での前フリが無いので感動に繋がらないのも惜しい。 駅伝のシーンに関しては大勢のエキストラと空撮を多用した絵作りで、かなり上手く出来ている。特に空撮で捉える沿道一杯の観客は、実際の駅伝のストック映像を使ったのか映画にリアリティをかもし出している。監督役の津川雅彦が伴走車から選手に掛ける応援なんだかヤジなんだか判らない声援が可笑しい。映画は他校の選手との駆け引きや「やっぱり」的な灰二のトラブルなど、スポーツ物の王道を突き進み幕を閉じる。 映画全体は「とっても優等生的な仕上がりで面白味が欠ける」と言えばそれまでであるが、逆に考えると万人が安心して楽しめる作品と言う事になる。しかし、この“万人が楽しめる作品”と言うのは意外と難しく、ベテラン監督でも難しい演出を監督デビュー作で無難に仕上げてしまった大森寿美男は監督として凄いのかも知れない。 映画「強い風が吹いている」関連商品 風が強く吹いている 風が強く吹いている(1) 風が強く吹いている(2) 風が強く吹いている(3) 風が強く吹いている(4) 風が強く吹いている(5) 【20%OFF!】舞台 風が強く吹いている(DVD) (2009年10月28日発売/発売日以降お届け) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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いい作品なんですけど、あまりにも予想がつきすぎちゃったり、逆にツッコミどころもあったりして。
本当はこういうテーマは好きですし、林くんの走りもなかなか健闘していたので、★4つくらいあげたいところなんですけどね・・・。 (2009.10.10 21:52:02) |
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