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テーマ:辛口映画批評(354)
カテゴリ:試写会
客入りは7割ほど。
【トキメキ特価!】 パイレーツ・ロック(DVD) ◆27%OFF! 映画の話 素行不良で高校を退学になったカール(トム・スターリッジ)は、更正を望む母の提案で、母の旧友クエンティン(ビル・ナイ)のいる船に乗船。その船は、アメリカ出身のザ・カウント(フィリップ・シーモア・ホフマン)ら、クールなDJたちがロックの取締りをもくろむ政府の目を盗み、24時間ロックを流し続ける海賊ラジオ局だった。 映画の感想 題材は悪くないがサジ加減が悪い。映画は「ポップ音楽は1日45分」と制限されたBBCラジオ放送に対抗する為に、イギリス政府の規制のかからない沖合いまで船で飛び出し、停泊する船上から海賊放送が24時間ぶっ通しのポップス&ロックを流し続けるDJたちと、それを阻止する為の政府の姿が描かれる。 以下ネタばれ注意 本作のポイントは66年のイギリスと言う時代設定であろう。ビートルズを中心にブリテッシュロック旋風が吹き荒れた時代だ。それなのに映画は「不自然なほどにビートルズに触れないのは何故だ!」ライセンス問題など大人の事情があったにせよ、避けては通れないビートルズを無視するのは不自然極まりない。ビートルズが使えないのであれば台詞でビートルズ・ネタを盛り込むなどが必要だ。しかし、エンディングには彼らの67年に発売された 「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のジャケットが大写しになっている。ビートルズ・ファンから見ると監督の心理はさっぱりわからない。監督はビートルズが嫌いなのか?あえて使わない理由を聞きたい位だ。ビートルズがいない映画はロックの外堀だけが描かれ、中心が空洞のような状態である。 映画は海賊放送を撲滅しようと目論む政府と、リスナーにロック音楽を送り続けようとするDJたちの姿が権力と反体制の様な形で展開する。その背景には海賊放送を支持するリスナーたちの姿がイメージカットの様にインサートされる構成である。その物語に観客の目線となる人物に更生の為にと船に送り込まれるのが一般人青年カールだ。映画は彼の甘酸っぱい青春物語の形態をもとっている。しかし、映画は物語前半こそスポットが当てられるが、物語が進むごとに彼の存在が薄くなってしまうのも難点であろう。 映画のキャラクターは66年と言う時代に飲まれた60年代ファッション&ヒッピースタイルのDJ達と相反して、政府の役人たちは長髪を禁ずる黒のスーツ姿だ。役人のトップを演じるのはケネス・ブラナーなのだが、タイトルに名前が出なかったら多分判らない位に嫌味なキャラクターを好演している。イギリス訛りの強い台詞回しはイギリスのコメディ集団“モンティ・パイソン”に出てくるキャラクターを見るようであり、保身主義な大人の代表の様なキャラクターでもある。 映画は政府と海賊局とのイタチゴッコの末、海賊局が取締りを逃れる為に停泊していた船を動かす事になるのだが、何故か本作は船を操舵する船長や機関手が登場しない。これも映画として激しく駄目である。仕舞いには突然船を動かしたものだからエンジンが爆発して船が沈没してしまう。これは多分、海賊局の衰退をシンボルとなっていた船を沈没させる事で、ビジュアル面で表現したのであろうが表現が突飛過ぎるのは否めない。 まるで映画「タイタニック」の様に沈没して行く舟は救難信号を発信するが政府から見放され、「あわや」となる訳だが、その後の展開が良くない。顔も知らないDJたちの為にリスナーたちが、各DJに対してメッセージ付きのプラカード持参で数え切れない船が救出に来る、と言うありえない展開には閉口してしまう。リスナーとDJはこれと言った交流も無かった“送り手と受け手”の関係なのに映画はやり過ぎである。ここは完全にサジ加減を見誤っている。 最後に音楽について書きたい。映画は66年当時のヒット曲(いくつか時代より後の曲も含まれている)が満載であるのだが、その曲の使い方の難しさも痛感する。40年以上も親しまれた楽曲には人それぞれのイメージがあり、ピタリとイメージが合えば良いのだが、全然違う使われ方がされてしまうとテンションが下がってしまう。そんな中、元々あった歌詞に合わせたエピソードを作り出したのは良いと思う。 映画は海賊放送局に60年代ポップカルチャーを交えた良い題材なのに、何故か監督の自己満足的な趣味を押し売りされた様で同じ音楽ファンとして共感出来なかった。本作は意外と観客を選ぶ作品なのかもしれない。 映画はエンドロールの後にも少し映像があるので慌てて帰らないように。 映画「パイレーツ・ロック」関連商品 『パイレーツ・ロック』 オリジナル・サウンドトラック/サントラ[CD] <プレミアム・ベスト・コレクション>[DVDソフト] ラブ・アクチュアリー お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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うーん、面白い題材なのに「何故?」って感じです。
まぁ、私の見方はかなり偏りがありますので、こんなレビューになりましたが、多くの方は満足度が高かったのでは? (2009.10.16 22:44:34)
イマイチでしたか~。
私は単純に楽しんで(俳優がカッコイイとかそんな理由で 笑)きたのですが、 確かにイギリスといえばビートルズですね~! 何か理由があって曲を使えないのかなぁと思いながら観ていました。 (2009.10.17 10:23:30)
『ラブ・アクチュアリー』大好きです。
みんなが幸せで終わる映画で心が温かく、元気になれました。 好き嫌いはだいぶありそーですけれどもね。(^^) (2009.10.17 12:13:11)
ブログに書くのを忘れちゃいましたが「ラブ・アクチュアリー」の監督リチャード・カーティスの最新作なので、「ラブ・アクチュアリー」がお好きならお勧めです。
今回はかなり曲者揃いの群像劇になっています。 (2009.10.17 18:34:04)
ビートルズの曲はライセンス問題で使えなかったとか。
私は全く疑問を持たずに純粋に楽しんだけれど、 欧米でも意見はいろいろみたいですね。 しかし、とにかくビル・ナイーが格好いい! フィリップ・シーモア・ホフマンがしぶい。 リス・エヴァンスが今までになくセクシー。 ケネス・ブラナーの嫌みっぽさも、 ジャック・ダベンポートの顔に似合わない間抜けっぽさも、 本当に可笑しい。 お勧めです! (2009.11.01 16:02:17)
私はこの時代の音楽とビートルズが好きなだけに納得できない作品でした。
作り手がやりたい事が判ると、観ている側も斜に構えてしまいシラケテしまいます。 本作はそんな作品だっただけに、自分は合いませんでした。 (2009.11.02 00:15:21)
DVDの特典映像に、カットされたシーンがあります。
アビーロードスタジオに行って、DJ一同が敬礼するシーンです。 なぜこのシーンを入れなかったのか、興味深かったです。 (2010.05.04 12:36:15)
情報ありがとうございます。
それは大事なシーンですねぇ。 やっぱり劇中でビートルズを排除してしまったので、アビーロードスタジオのシーンを入れると、映画の流れが不自然になると判断して削除されてしまったのでしょう。 (2010.05.04 23:33:18) |
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