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テーマ:辛口映画批評(354)
カテゴリ:試写会2011
客入りは7割くらい。試写会の主権はラジオ日本「イエスタデイポップス・ウィズ・シネマダイヤリー」さんだ。映画上映前に横山明日香さんのMCでスポンサー様からの商品案内と抽選会が行われた。
★クリント・イーストウッドの新作★■両面印刷Ver■ [映画ポスター] ヒア アフター (HEREAFTER) [DS] 映画の話 霊能力者としての才能にふたをして生きているアメリカ人のジョージ(マット・デイモン)、津波での臨死体験で不思議な光景を見たフランス人のマリー(セシル・ドゥ・フランス)、亡くなった双子の兄と再会したいイギリスの少年マーカス。ある日のロンドンで、死に取りつかれた3人の人生が交錯する。 映画の感想 私の中でここ数年“イーストウッド監督作品にハズレなし”と自負していたが、ついに御大もやっちまった!と言うか製作総指揮を務めたスピルバーグが監督のチョイスを間違ってしまったのだろう。現在81歳のクリント・イーストウッドは08年の「グラントリノ」で自身の死生観をドラマに盛り込み大傑作を生み出したが、09年の「インビクタス/負けざる者たち」では主演のモーガン・フリーマンに監督依頼され、作家性を打ち消した雇われ監督のようなそつない仕事をこなした辺りで、私の中でイーストウッド監督作品への不安を感じていたのだが、本作は監督のジャンル外のスピリチャルドラマに初挑戦した訳で、吉と出るか凶と出るかとなると完全に凶である。 以下ネタばれ注意 本作は「グラントリノ」で描かれた監督の死生観から一歩踏み込んだ、現世と来世を描いた物語である。バリ島の津波で生死を彷徨ったパリで活躍するジャーナリスのマリーと、サンフランシスコで霊媒師として活躍したジョージと、事故で双子の兄を亡くしたロンドンのマーカスという、3人の主人公の物語が並行して描かれる訳だが、本作は構成に難がある。まず、物語冒頭にマリーが巻き込まれるバリ島の津波襲来が凄まじいド迫力映像でダイナミックに描かれる。 このパターンはスピルバーグが大好きな掴みのシークエンスパターンで、スピルバーグ監督「JAWS」や「インディ・ジョーンズ」シリーズ、彼がプロデュースした「ツイスター」など、冒頭にド派手なシークエンスを用意して観客の心を鷲づかみにする。本作は正にこのパターンで幕を開けるのだが、物語冒頭が本作の最大のピークとなり、その後は淡々としたドラマが続き面白味が無くなってしまう。 観客と言うものは現金な者で、オープニングに凄まじい映像を見せられると、それ以上の物 を求めてしまうものだ。先に書いたスピルバーグ監督一連の作品は見事に観客の望む映像を打出し満足させてくれた。しかし、本作はオープニングでハードルを思いっきり揚げたのはいいが、後が続かない。近年のイーストウッド映画の特徴とも言える、淡々とした贅肉をそぎ落とした枯れた音楽が流れる中、物語は3人の主人公を交互に映し出すが、どれも先の展開が読め観客が思ったとおりに物語が進行してまう。特にマーカスの兄ジェイソンの事故死のシーンや、地下鉄のシーンはありふれた展開であり、マーカスの被っていた帽子が彼の運命を左右するギミックは、まるで「ファイナル・ディスティネーション」シリーズにソックリな演出で脱力してしまった。 似ていると言えば、元霊媒師ジョージが相手の手を触ると死者と対話できる仕組みも、デヴィッド・クローネンバーグ監督「デッドゾーン」の中で、主人公が相手の手に触るとその人物の未来が見えるギミックと似ていたり、来世の映像表現が「パッセンジャーズ」と似ているようだったし、なんか手垢の付いた演出が多く、改めて監督のビジョンの古さとセンスの悪さを痛感してしまった。 クライマックスのブックフェアもあまりにも都合良く、パリやサンフランシスコに住む主人公がロンドンに集まるのも不自然であり、ラストの幕引きもイメージ先行で漠然と終わってしまうのもイマイチだ。まぁ、このラストの解釈も頑なに誰とも握手をしなかったジョージが進んでマリーと握手したのを見ると、一度死の淵を彷徨った者同士心が繋がったと解釈すればいいのだろうか?もっとスピリチュアル物や、ファンタジー物に精通している監督が演出すればもう少しマシなドラマが描けたはずだ。なんかイーストウッド監督作品という事で、期待し過ぎた自分が駄目だったのか拍子抜けしてしまった作品であった。 映画「ヒア アフター」関連商品 【送料無料】グラン・トリノ/クリント・イーストウッド[Blu-ray]【返品種別A】【smtb-k】【w2】 【62%OFF!】インビクタス 負けざる者たち ブルーレイ&DVDセット 【初回限定生産】 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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たぶん、ダメな人には全然ダメなんだと思います。
確かに先が読めるしねえ。 昨年の『ラブリーボーン』に似たものがあるんだけど、 こっちの方が少し単純だったかも。 (2011.02.13 12:37:03)
私はダメな人の方でした。
これは完全に監督の選択ミスで、それこそスピルバーグ自身が監督すれば良かったと思います。 もしくは「ラブリーボーン」のピーター・ジャクソン位に映像イメージがある監督であれば、もっと面白い作品になったはずです。 なんか作品全体もシャマランっぽいのも難点かな? (2011.02.13 13:29:54)
>改めて監督のビジョンの古さとセンスの悪さを痛感してしまった。
イーストウッド作品はこれまで好きだったけど(インビクタスもイマイチ)どうにもこういうジャンルって合わないなと思う。 ラストなんて えー、でしたよね。 思わずラジー候補です 笑 (2011.02.13 13:34:07)
いゃ~、まったくmigさんと同意見です。
私も「インビクタス」はイマイチで、イーストウッドに不安を感じた所で、本作もこんな出来でガックリでした。 ラストは「何でこんなになっちゃったのだろうか?」と思う安直な演出でダメダメでした。 私もワ-○ト作品候補にします。 (2011.02.13 13:40:46)
あの津波のシーンだって現実にニュース映像を見ているので、何の新鮮味もなかったし、臨死体験シーンも平凡でした。結局、全部駄目でした。
(2011.02.20 09:37:42)
私はオープニングの津波襲来シーンは好き、とても良く出来ていた。
短いシーンでも昨年公開「TSUNAMI」の数倍良かった。 ただ、このシーンの演出をイーストウッドがどこまでタッチしたかが怪しいです。 やりたがりプロデューサーのスピルバーグが結構自分で演出しちゃう場合もあるから、メイキングを見るまでグレーな感じです。 (2011.02.20 12:00:03) |
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