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中高年の生涯学習

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2017.09.17
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​自分の「声(こえ)」に注目することはあまりない。「話し方教室」や「朗読入門」のような講座はあるが、「声学(こえがく)入門」のような講座はほとんどない。日本人は「声」について、ほとんど学ぶ機会をもってない。

​​1910年代、ジョージ・バーナード・ショーという作家が「ピグマリオン」という戯曲を書いた。この戯曲が有名になったのは1964年に、オードリー・ヘプバーン主演の「マイ・フェア・レディー」​というミュージカル映画が大ヒットしたからだ。始まりの舞台はイギリス・ロンドンのコヴェント・ガーデン。この映画のためか、ここは観光客でいつも混雑している。主人公のイライザは、劇場から出てきた観客に大声で花を押し売りしている。彼女の後ろには熱心にメモを取っている言語・音声学者のヒギンズ教授がいた。教授はイライザの声を聞いて、出身地、そこでの育ち方、性格まで言い当て、「こんな下品な子でも訓練すれば淑女になれるのに」と言って、その場を立ち去る。翌日、イライザは教授宅に押し掛け「自分の店を持ちたいんだ。淑女にしておくれよ」とわめきたてる。すったもんだの上、教授宅に住み込みで訓練を受けることになる。失敗して泣いたり、あきらめたりしながら、イライザは別人のように変貌する。つつましやかで上品な品性が身に付き社交界デビューするという物語である。ヘップバーンの美貌と演技に釘付けになってしまうが、ここで注目すべきはヒギンズの学問である「言語・音声学」である。この学問の理論では「声」は、その人物の性格・品性を表現し、それは訓練によって変えることができる、ということである。

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​​​ヒギンズの学問を引き継いだような人物が日本にも現れた。山崎広子さん。
山崎さんは中学の時、失声症という障害になった。文字通り、声を失う、声が出なくなった。失語症とは違う。精神的なストレスで生じるようだ。1週間ほどで会話ができるようになったが、声が出ないという症状は大学に入るときまで残った。こうしたことから「声とは何か」という追及を猛然と始めた。いくつかの大学で「音声学」「心理学」の授業を重ねて受講、音楽ジャーナリストとして関係者に取材、「音・人・心研究所」を設立、本の執筆、講演、ラジオ講座出演と多忙を極めている。

​​​
​​山崎さんの趣味は、なんとテレビの国会中継を見ることだ。そこでの発言者の声の観察、山崎さんにとって、これは趣味であるか、仕事なのかは、どうでもいい。声を解剖すること、議員などは単なる標本にすぎない。声から、嘘をついていることなどすぐわかる。性格から家庭の事情まで覗けてしまう。病気までわかってしまう。ある時、責任感の強い議員であったか、背筋を伸ばして誠実に答弁している人物が出てきた。山崎さんは、その人の声に違和感を感じた。翌日の新聞には答弁の内容が簡単に紹介されていたが、その他のことは何も書かれていなかった。3か月後、その議員はガンにかかって入院したというニュースが流れた。声には、その時の体の状態のすべてが現れている。自分で、これを察知できればいいのだが、普通の人はちょっと変と思っても、「風邪」だろうくらいで過ぎてしまう。

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​​​自分の「本当の声」とはなにか。これを見つけるにはどうすればいいのだろうか。山崎さんは、それをオーセンティックボイスと名づけ、録音して聞いてみることを勧める。びっくりするほど「これは自分の声ではない」と違和感を感じるであろう。普段聞いている声は耳の奥の骨伝導で脳に届くために、客観的ではない音になっている。録音された声が第三者の聞いている自分の声である。録音された声を何度も聞いていると、「いいな」と思える声もあるはずである。その「いいな」と思える状態を少しずつ伸ばしていくことが、自分のオーセンティックボイスを作っていく訓練になる。これはボイストレーニングとは違う。ボイストレーニングは、リハビリ場面や歌手、アナウンサーの職業的に声を使う人のための訓練で第三者のトレーナーがつく。オーセンティックボイス探求は、自分がいい声と思う状態を探り出すことで、他人まかせではできない事なのだ。ちなみにオーセンティックとは、英語のAuthenticで「本物の、真正の」という意味である。

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ある女性が電話に出ると、声が急に変わってしまう場面に遭遇することがある。高い声になったり、猫なで声になったり、よそ行きの声になる。これを作り声という。女性に多い。社会的な状況が反映しているのだろう。オーセンティックボイスではないことが、はっきりわかる。声は、人格が現れていることがわかれば、作り声は別の人格の人生を歩んでしまうことになる。第三者からみれば、どちらが本当に人格かわからなくなる。


日本では「声」についての意識は薄く、まともに学んでいる人はほとんどいないという指摘は重要だ。小学校や中学校の国語の先生でも、いきなり音読や朗読を指導するが、声の出し方には無頓着だ。英語の先生の中にはABCの発声を徹底的に訓練する人もいるが、西洋ではこれが常識で、発音、発声指導をまず第一に行うようだ。


オーセンティックボイスが、その人の人生を作るということがわかれば、最重要な課題だと認識するだろう。


参考文献
山崎広子「8割の人は自分の声が嫌い」角川新書
山崎広子「人生を変える「声」の力」NHK出版(ラジオテキスト)





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最終更新日  2017.09.17 11:24:52
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