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趣味の漢詩と日本文学

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June 24, 2006
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カテゴリ:漢詩・漢文
孫權故城下懷古兼送友人歸建業 劉長卿
雄圖爭割據、神器終不守。
上下武昌城、長江竟何有。
古來壯臺■(「木」のみぎに「射」。シャ)、事往悲陵阜。
寥落幾家人、猶依數株柳。
威靈絶想像、蕪沒空林藪。
野徑春草中、郊扉夕陽後。
逢君從此去、背楚方東走。
煙際指金陵、潮時過▲(サンズイに「盆」。ボン)口。
行人已何在、臨水徒揮手。
惆悵不能歸、孤帆沒雲久。
【韻字】守・有・阜・柳・藪・後・走・口・手・久(上声、有韻)。
【訓読文】
孫権が故城の下にて古を懐ひ兼ねて友人の建業に帰るを送る。
雄図割拠を争ひ、神器終に守られず。
上下武昌の城、長江竟に何をか有せん。
古来台■(シャ)壮んにして、事往陵阜を悲しむ。
寥落たり幾家の人ぞ、猶依る数株の柳。
威霊想像を絶し、蕪沒林薮空し。
野径春草の中、郊扉夕陽の後。
君に逢へば此より去り、楚を背むきて方に東に走ると。
煙際金陵を指し、潮時▲(ボン)口を過ぐ。
行人已に何にか在る、水に臨んで徒らに手を揮ふ。
惆悵す帰る能はざるを、孤帆雲に没して久し。
【注】
○孫権城 夏口城。湖北省武漢市の黄鶴山上にあり。三国時代呉の創建。
○建業 江蘇省南京市。
○雄図 規模が大きくて立派な計画。
○割拠 国にまとまりがなく、英雄が各地方を占領して分立する。
○神器 玉璽などの、帝位継承にともなう宝物。
○台■(シャ) たかどの。物見台。
○寥落 おちぶれたようす。
○威霊 威力ある神霊。
○蕪沒 雑草が覆い隠す。
○林薮 草木の生い茂ったところ。
○金陵 江蘇省南京市。
○▲(ボン)口 江西省九江市の西をながれる▲(ボン)水が長江に流入するあたり。
○行人 旅人。
○揮手 別れを惜しんで手を振る。
○惆悵 悲しみ嘆く。がっかりする。
○孤帆 ぽつんと一艘みえる帆掛け船。
【訳】
かつて呉王孫権が治めた故城の下で昔を懐しみ、同時に友人が建業に帰るのを見送ったときの詩。
大きな計画胸に秘め群雄割拠を争って、帝位を示す器ものついには守られずじまい。
上に見ゆるは武昌城、下に見ゆるも武昌城、長江城を映せども竟に何をも有せざり。
古来たかどの多かれど、陵阜ばかりもとのまま。
おちぶれたるはどこの家、数株の柳のこりおり。
孫権の霊彷彿と、草木にうもれいと空し。
春草覆う野のこみち、扉に差すは夕陽かげ。
君はここより更に去り、楚をあとにして東へと。
もやの向こうの金陵へ、▲(ボン)口過ぎてくだりゆく。
旅人すでにどこらへん、川のへりにて手をふるう。
友との別れいと悲し、君のせた船雲がくれ。





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Last updated  June 24, 2006 09:07:14 PM
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